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闇の中・・・。

ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。

まだ今夜の宿も決まっていない。

僕は途方にくれ、意地悪そうな暗い空を見上げた。

降り出した雨は、やつれた僕の体を徐々に濡らしていく。

そういえば、最後に胃に食べ物をあげたのはいつだったろうか。

一体なにを食べたのか。

どうせろくなものではないが。

いや、米粒一つでも、身のない魚でも、食べられるのならばそれは僕にとって大切な大切なご馳走であることに代わりはないのだ。

汚れで元の色さえわからない自分の身体を見下ろす。

身体も洗えていない。

食事も今日食べる分でいっぱいいっぱいの生活だから脂肪どころか筋肉もない。

骨は浮き出て数えようと思えば数えられそうだ。

何回目になるか分からないため息をついた。

とにかく今は雨を凌げるところへ移動しなければならない。

動こうとしない足を気力で持ち上げ、近くの軒下に行こうとのそのそ動き始めた。

意地悪な空はそんな僕をいじめるかのように水の量を確実に増やしていく。

あと少し、あと少し。

必死の思いで足を動かす。

もうすぐ夏とはいえやはり雨は冷たく、元々皆無に近い僕の体力を削り取っていく。

そういえば、なんで僕はこんなに頑張っているのだろう。

僕は何のために頑張っているのだろうか。

生きるため?

どうして僕はこんなに生きるために頑張っているのだろう。

僕が死んだところで誰が困る?

僕が死んだところで誰が悲しむ?

僕が死んだところで誰が・・・気づいてくれる?

一人ぼっちの僕。

僕がこの世にいても、いなくても、誰も困らないし悲しくも嬉しくもない。

僕がこの世にいることを、誰が知ってくれている?

誰も困らないなら。

誰も悲しまないなら。

誰も気づいていないなら。

ここで死んでも、いいんじゃない?

生まれたときに親から離され、身体が弱かった僕はいらない子として捨てられた。

以来一人で生きてきた。

僕の両親が、僕を探しているかもしれない。

僕を必要としてくれている人がいるかもしれない。

でも、誰も、来てくれなかった。

それでも頑張ってきた。

食べ物が無くても、寝るとこがなくても、生きてきた。

落ちている物を食べてお腹を壊しても、寒さに震える身体を丸くして耐えてきた。

もう、いいんじゃない?

生きていて、良いことなんてある?

生きてきて、良いことなんてあった?

これからもずっと頑張る意味なんてあるのかな?

もう、疲れたよ。

今まで気力で動かしてきた身体は、動く気すら無くなったよ、という風にぱたりと動かなくなった。

そして自身の身体さえ支えることができなくなった僕は、ぱしゃりと軽い音をたてて倒れた。

よく頑張ったよ、今まで。

本当に頑張ったよ。

お疲れ様、おやすみ。

薄れゆく意識の端で、誰かの足音が聞こえた気がした


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