表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灯火よ漁火のごとく  作者: 不器用な黒子
5/5

最終章   あの日の記憶  編

ここまでお付き合いしてくれた方が居たなら、嬉しい限りです。


最終話お付き合い宜しくお願いします。

「真由美のやつ、朝っぱらからシャワーかよ」




水音に混じって聞こえた鼻歌。





「翔琉・・・早く出るように言って、時間ないんだから」







朝食を並べながらの母の声。



昨日真由美の持って帰って来たテストの結果を、マグカップ片手に

見つめる父が、首からタオルをかけた翔琉にちらりと向いた。





「真由美と二人で大丈夫か」





「毎度のことでもう慣れた」






考古学学者の父、殆ど家に居ることがなく、今こうして

テーブルを共にしていることのほうが珍しい。





助手を務めていたスタッフが、高熱病に倒れ急遽帰国、

次に向かう先が母の行きたがっていた世界遺産らしく

朝から手料理に腕を振るっているのだ。





それは有難いのだが、朝食を作るのにインディージョーンズ

に出てきそうな姿にエプロンはどうかと思いつつ、マグカップに

口をつける翔琉だった。


「その恰好で行くの」





「少しでも荷物軽くして行くの」


ごもっとも。





「荷物は送ればいいじゃないか」


それも一理。





「その分何かに使えるでしょ」


前回はなんだっけ、どっかの民族のお面だった。




こんな感じなので、翔琉の部屋は段々と占い館のように

なってしまっている。





「ああ~今日だっけ」



「早くしなさい、行くんでしょ空港」




「何だ真由美も行くのか」



「テストもういいでしょ」





「何しに?」



「見送りに決まってんでしょ」



「どうせ免税店目当てだろ」





コホンッ



下を出す真由美に中指を立てた翔琉の言い合いは

父の咳払いでレフリーストップとなった。






「ほんとにいいの?」



「後はやっておくから、それとさ・・・」


来年は社会人の仲間入り、大人っぽい土産をお願いした。



「ふふふ、考えとく」



「お~い」



「教授が真由美送ってくると思うから、冷蔵庫から」



「わかってる」






「ふう~ぅこんなもんかな」



選択・洗い物・風呂・・・・掃除。



読みかけのバイク雑誌を手に、ソファーベッドに腰を下ろす。





(最近よく健の写真せがむよな・・)





噂をすればというやつだ。


遊びに来た親友の健。





する話と言えば、決まってバイクの話し、今日は

ちょっと違い報告だった。





「もう買ったのかよ、俺は当分先だぁ」




「苦労したぜ、あの親父だかんな」





「真由美のやつ、お前に興味あんのかな」





「ふ~ん写真か、言えば二人で撮るのに」


「誰かに頼まれたって言ってたけどな」





あとでたっぷり見せびらかしてやると言って

帰っていった。





一人バイク雑誌を読んでいて、いつの間にか眠っていた。


忘れもしない、234ページ。




結局その日、真由美は帰ってこなかった。





教授の娘も真由美と年が変わらないからだろう。






前回も、一泊してから帰宅した。


そのときは連絡があったが。







次の日。



電話が鳴った。



直ぐ脇に置かれていたアンティークな置時計が

九時十六分を差していた。


行き先のイスラエルは、まだ夜中の三時位だ。



(教授だろうな・・)



「はい・・・・です」




「翔琉くん・・」





「やっぱり教授、もう着きます?真由美・・・泊まっちゃったんですね」






「それはそうなんだが・・・後二十分ほどで着く、すぐに出れるように

 いいね・・」






「おっと洗濯物、洗濯物」



テーブルの上に、分け畳まれた洗濯物。




窓の外に、教授が走って来るのが見えた。




「あれ?」




いつもならインターホンを押すはずの教授が勢いよく

ドアを開け放った。



真由美が居ない。





「真由美は?」





「向こうで待ってる、戸締りは?」





「だいじょうぶですけど、・・」





「早く、靴を・・」




「あっ・・はい」





いつもの教授らしからぬ態度に・・とにかく靴を履いた。




「さあ乗って」


半ば押し込まれるように乗り込んだ後に教授も飛び込むように

後部シートに乗り込んだ。



「君、すぐ向かってくれ」




見る見る町を離れていく。



「教授、どこへ・・・」





「急がせてすまないね、着いたらすぐに飛行機に乗る」


(確かパスポートは父さんだ)



「教授、乗れませんよ」



「これなら、預かってる持っていたまえ」




「なにかあったんですか、父さん・・それとも母さん?」






「…テロに巻き込まれたんだ」






信じられない教授の言葉に、翔琉の手から、受け取ったパスポートが

足元に落ちていった。




「どうして、あんな治安の悪い場所を通ったんだ・・・」



頭を抱える教授の隣で、早く真由美の元へ

その思いだけが広がっていった。




これ以上は、思い出したくない。





帰国した俺と真由美の腕の中には、小さな・・・

それが、現実だった。




俺は今でも思う時がある。




本当は、何とかその場を潜り抜け、今でも

二人で世界遺産を見ながら旅を続けているんじゃないかと。




後談





思春期だった二人のことを思い、教授が政府に頼んで

火葬後の両親に会わせたらしい、それほどの悲惨な状況

だったそうだ。






俺のバイクのキーにつけられたキーホルダーは

シッカリと母の手に握られていたものだった。






最後の母の土産である。







だから俺にとって照美さんの回復は、本当にうれしかった。





あのバーベキューを共にした真由美もそう思ったと思う、

その証拠が、病室のベッドにぶら下げられていたキーホルダーと

別荘での照美の介護をオーケーしたことに表れている。







もう一つ、翔琉に届いたメール。







兄貴、夏葵ちゃんとなんて・・とにかくおめでとう。

アタシにもお母さんが出来たってことになるのかな、

お母さんのことは任せてください。



                    



帰国した日の夜、俺は健に誘われて海に出たんだ。







健の親父の呼びかけでずらりと並んだ船、二人の・・・を

海に撒いた、真由美と二人で。








「翔琉、卒業したら来いお前の母さんが好きだった海だ

 明るく照らしてやれ、この漁火でな」





































本当ならもう少し皆さんにお付き合いをと思ったのですが、初めての連載でしたので、このような感じで終わらせました。

またお会いできたときはお付き合いお願いします。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ