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灯火よ漁火のごとく  作者: 不器用な黒子
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四章  嵐のあとの報告編

照美を思う夏葵の強い気持ちが、照美を呼び戻した。

いや、多くの気持ちが重なった結果の奇跡とも言えた・・・


個室に移されていた照美。




静かにドアを開けたけいそうは気付かない。



照美の手をシッカリと握っている。






まだ話すことのできない照美が目線だけを向けた。







「な・・何だ来てんなら声かけろよ」






慌てて手を放そうとした総に。







「そのまま握っててやれよ、照美よく帰って来たな」







総の握る手に力が・・弱々しいが、それは伝わった。




「そうか・・・」




「今ので十分だ、下の車で休むわぁ」




「ああ」






「いけねぇ、あいつ等から・・任せておけってよ」





総が深々と頭を下げた。





「何も言うなよ・・明後日から忙しいんだかんな」





「夏葵のこと・・」



「わかってる、翔琉が居っからあんま出番ねえと思うけどよ」




溪が部屋を出て行った。








「バカ野郎・・・おれを置いてこうとしやがって」


照美の額に、涙が落ちた。






「切ってなかったか」


ジーンズのポケットの中で振動を感じた。


夏葵だった。








画面には、一言だけ・・お帰りなさい。




「夏葵が、お帰りだって母さん」





照美の目から涙が流れていく。





その夜、そうはこれまで誰にも言ったことのなかった

思いを眠る照美に話した。








丁度その頃軽井沢にある別荘では、広い敷地に辺りは針葉樹の森

少々の騒音はすべて闇が吸い込んでいく中、あらゆる業者が集まり

照美の帰りを祝いつつ、作業を進めていた。





駐車場の車の中で、涙の跡を付け眠るけい




手を繋いだまま眠りに着いたそう




同じく照美。




夏葵に気を使い、チエの家に世話になった健と双葉。




半ば強引にベッドを共にさせられている陸。



腕枕で眠るチエ。






千景の家で、ゲームに付き合わされている煮豆。






膝枕の上でコントローラーを操る千景。




戦績は・・千景の全敗中。






マンションの夏葵と翔琉。







「こんな感じかな・・どう?」








「あっ、面白いかもな・・でも着替えが」






「そこなんだよね・・」


「こんなのは・・?」







次のステージの演出を考えながら、ワイングラスを傾けていた。


照美に対しての祝いと、婚約の祝いを兼ねて。







演出を考えていたもう一人。





雪である。







不思議と言えば不思議だった翔琉との再会、引き合わせてくれた

会社のオーナーの回復、夢にまで見た翔琉とのステージ。


恋は叶わなかったものの、翔琉の幸せを素直に

喜べた自分が居た。








テーブルにあった小さな昆虫ケース。


夏葵に分けてもらった鈴虫。








雪は右手でマウスを操りながら、左手にあった缶ビールを

その小さなケースに優しく当てる。






雪が缶ビールを仰いだ時、ちりりと鈴虫が鳴いた。







雪はそれを聞きながら、頬を伝い流れ落ちる涙が

キーボードにぽたりと落ちた。







次の日、連絡を受けていた健の親父から、マンションに

見事な鯛が届いたのである。






嵐は無事通り過ぎた。







「真由美か、どうだ照美さん・・うん・・」






当分は、この真由美との連絡が日課となりそうだ。







明後日には、照美は総との新しい生活に入る。






なんと敷地内に専門医の住居も建つという。






外科部長の計らいで照美の身の回りの介護をその医師に付きながら

医学を学べるらしい。






一流の医師とマンツーマン指導で、照美の傍に居れることに

二つ返事でOKしたと、翔琉に告げた真由美。






漁師とモデル業界、全くかけ離れたこの二つを掛け持ち

することになった翔琉。







約束通り、・・約束まではしていなかったが、事の成り行きに

一番喜んだのは、健の親父だった。








チエのワーゲンバスが、海を見渡せる高台の霊園、

その駐車場に止まっている。








供えられていた湯呑み茶碗とコップを洗う夏葵。

コトリッ、と新しい水の入ったそれらが置かれる。







夏葵の選んだ花、翔琉は手に煙る線香を半分。







手を合わせ、瞑っていた目を開けた翔琉の横で

夏葵はまだ静かに目を閉じていた。








ゆっくりと目を開いた夏葵。






「報告出来た?」





「出来た」






足音・・・・。






「健くん・・」







「わりいな」







「自分の親、当然」



手を合わせ目を閉じていた健。









「お二人さん、メシは?」







「これから」








「なら家だ、早く連れて来いってうるせえ」




三人でもう一度手を合わせた。







三人が去った後、南西の風に煙が揺らめいた、と同時に

小さくチリリィンと風鈴の音が。








それは、シー・ラ・ダ〇スで買っておいた、健から

両親への,イルカの形の小さな風鈴だった。

















































お付き合い下さりありがとうございます、出来れば最終話までお付き合いしていただければ嬉しいのですが、なにぶん文章力が・・・それでも書き続けていきますので、またお会いしましょう。

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