第十四話 命を懸けた基地防衛戦 【前編】
などとファントムを話していたら、
ドォーン!!という爆音と共に水しぶきが盛大に飛び出た。おそらく魚雷が爆発したのだろう。
「始まるのか…」
(だね、緊張はほぐれたかい?)
「おかげ様で。」
(一応念のためにコールサインを確認しておこう。前衛で敵と接近戦をするのがΩ、これが君とシン、そして後衛での砲撃がローこっちはカナとチサト、そして遠距離からの狙撃が)
「ミッチーことΨ1だろ? これだけは記憶している」
(そうか、通信はコールサインで行われる。あと司令部は『マザー』だ。……グッドラック)
3回目の爆音と共に影が浮上する。どうやらあれがジェノサイドのようだ。着地のスキを狙うため俺は散弾銃を構える。
ジェノサイドが着地する前に俺は引き金を引いた。着地した瞬間に脳ミソに風穴を開ける為に。
だが、ジェノサイドは着地しなかった。地面に接触した瞬間スキーのように地面を滑り銃弾を回避した。
俺がジェノサイドに回避されたことを認識する前にジェノサイドは攻撃態勢に入っていた。回避行動と同時に攻撃態勢に移行していた。
「くっ!!」
ジェノサイドのマシンガンが俺を襲う。マシンガンから放たれた弾丸をエネルギーフィールドで防ぐ。反射の領域にまで感覚をパワードスーツで強化していなければ危険だっただろう。
その瞬間、ジェノサイドは驚愕したように見えた。奴にとっては大きな誤算だったのだろう。もしこんなのが相手側にあるなんて知っていれば機動性よりも火力に重点を置いた装備にしていたのかもしれない。
だが、俺はこいつに一切の油断はしない。もし奴が極太の破壊光線を放ったとしてもスキを決して見せない。見せた瞬間にヤラれるだろう。俺が慢心した瞬間、おそらくチェックではなくてチェックメイトになってしまう。
俺が次弾装填を終えてジェノサイドを狙おうとしても奴は一定の場所に居ない。常に走っているように見える。
なら俺が取るべき行動は…手榴弾で行動を支配させてもらおう!
俺がジェノサイドが通るであろうと予測した場所三ヶ所に手榴弾を投擲した。見事にそのウチの一つに奴は進んだ。
「ビンゴ!!」
内心ほくそ笑みながら散弾銃を構える。奴が手榴弾を対処したスキを狙い打つ。
俺はこいつを簡単に殺せるなんて思っていない。確実にこいつを殺すためにはスキを作りそのスキを狙うしかない。
しかし、あろうことかジェノサイドは加速度を上げて手榴弾に突っ込みやがった。
「!!!?」
予想外の行動に狼狽していた。油断したわけではない、こんな行動は対処できないからだ。
グレネードの爆発の衝撃のおかげか奴は時速四〇キロメートルを超えているように感じる。さらにジェノサイドは俺の方に向かって進んできた。
だが銃撃が防がれると分かった以上、他の行動を取ることは予想できた。予想できたということは既に対処法は考えてある。
高速で走ってくるジェノサイドにはハンドアクスで対応する。時速四〇キロメートル以上の速度で突っ込んでくるジェノサイド(重量不明)の衝撃というのはこればかりは想像ができない。もしかしたらトラック並みのモノかもしれないだろう。
…だが! たとえ全身骨折したとしても俺はこいつを仕留める!! 覚悟はできてる!
ジェノサイドは突進している最中にハンドアクスを確認したのか、右に進路を変更しようとしている。
残念だったな、その行動も既に予測出来ている! 貴様の敗因は俺に進路変更を認識させたことだ!!
奴は俺から見て右に避けようとしている。つまり俺が左に移動すれば奴との差は大きくなる。奴は俺がハンドアクスを当てようとすると読んでいるだろう。ならばその逆を狙わせてもらう!
俺は左に大きく跳び、ジェノサイドは虚空に突っ込む。
「??」
奴が俺の行動に疑問を持ったようで、こちらを見てくる。阿呆め!! お前にはポテンシャルで負けている、だとしても俺にはお前を殺すための策が、仲間が居る。
「Ψ1まかせた」
俺の一言と同時にジェノサイドの左脇腹をビームが掠める。
「!?」
ジェノサイドが突然のビームに驚いたようだが、その心のスキを俺は狙っていた。俺は持っていたハンドアクスをジェノサイドに向けて投げ捨て、散弾銃を持ち直して撃つ。
しかし、奴のスペックは俺の予想を上回っていた。俺が投げ捨てたハンドアクスの柄を手に取った。バカな!? 時速四○キロメートルで進みながら時速一三〇キロメートル以上の速度で円運動をしながら飛んできたハンドアクスを奪っただと!!
ジェノサイドは奪い取った時に発生した反動等の物理法則を無視してハンドアクスを投げ返し弾丸を防ぐ。投げ返したハンドアクスは弾丸だけでなく俺を襲う。
俺には飛んでくるハンドアクスを奪い取る技術なんて無い。エネルギーフィールドを斜めに作り出し、上空に反射させる。俺はジェノサイドからの追撃を警戒したが、ジェノサイドはシン達の攻撃から逃げていた。
「こちらΨ1。すまない、まさか君があんな方法でジェノサイドの意表をつくとは思わなかったから。」
ビームで狙撃してくれたミッチーが俺に謝る。だがミッチーは悪くない。あの状態でマトモな狙撃を期待してはいない。むしろ撃ってくれただけでも感謝する。
「こちらΩ2。奴の攻略法はどうする? 今みたいなスキをもう一度作ったとしてもジェノサイドに致命傷を与えることができるか? あういう不意打ちは何度も使えるとは思えない。しかも今のでこっちに狙撃用ビームライフルがあることをバレてしまった。」
シンがマトモなことを言う。確かに奇襲をもう一度できる自信はない。さらに言えば相手がそれを防げないとは限らない。さっきまではこちらの戦力を過小評価していたとしても今は……
「Ψ1、対象のスキが出来てから狙撃までの時間誤差はどれくらいだ?」
「最大でも2秒だ。それ以上の時間はかけない。俺にだって意地くらいある」
2秒か、短いような長いような。まぁ良い、たった2秒ならなんとかしてやるさ。俺は俺の覚悟をΨ1ことミズホに言う。
「Ω1よりΨ1へ、ジェノサイドを討てると確信した場合迷わず撃てよ。どんな状況でもあろうと」
「……了解した」
ミズホは真意を理解したようだ。すでに通信は切れている。
……それで良い。それこそが正しい。
「Ω2よりΩ1へ、お前は絶対に死なせない……絶対にだ」
シンが俺を生を祈ってくれているのか、それとも彼の覚悟なのか、どっちにしろ俺だって死ぬつもりなんて無い。
だが生き残ることすら望み薄だってことくらい俺にだって分かる。奴のポテンシャルは……間違いなく化物レベルだ。




