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第十一話 決戦準備 【前編】

 翌日の朝は目覚めがよかった。寝不足だったのが嘘のようだ

「やぁ、おはよう。よく眠れたかい?」

 例のオッサンが俺に微笑む。…せっかくなら女の子に朝の挨拶をされたかったぜ。


「よぅ、おはようさん。残念ながら悪夢だったさ。どんなトンチンカンな技術者が作ったか知らないがその安眠妨害装置はよく出来ているんじゃないのか」

「褒めてくれて嬉しいよ」

「? なんでアンタが喜ぶ?」

「だって安眠妨害装置それの製作者は私だから」

「アンタって人はぁ!!」

 激怒した、あぁそりゃ激怒したわ。どんなアホが作ったのかと思ったらこんのクソヤロウか!!


「はぁ……ところでオッサン、勝てるんだろうな? 俺は」

「…言わなかったかい? 最善を尽くしていると」

 今の一言でオッサンも俺の決意を悟ったようだ。そうか…じゃあ、やらせてもらおうか。戦争を


 朝食を軽く済ませた後、シンとミッチーに連れられて訓練場にやって来た俺は先日聞いたパワードスーツの試運転をすることになった。

 パワードスーツの見た目は大型バイクに乗るためのライディングウェアみたいで、各部に銃火器をマウントしやすいように計算された位置に爆弾系を入れるためのポケットが付いている。スーツは俺の知ってる技術を軽く超えていて黒くて硬くて柔らかいという、表現だけだと何やら誤解を生みそうな感触だ。


「調子はどうだ? トオル」

「特に異常は見当たらない」

「そうか、じっくりと説明している時間も無いから馴れてもらうよ」


 オッサンの指示でパワードスーツを着用してみたが、ちょっとブカブカしているのだが一気に内部の空気が抜け、体にフィットする。調整のおかげなのかまったく違和感を感じない。調整って大事だ、楽器も調律師という調律を行うだけの仕事もあるくらいだし。

 パワードスーツはダイビングスーツのようにピッチピチであった。電源パワーを入れる前は水を吸った私服のように重たかったが、今は使い慣れた体操服のようだ。


 前方の扉から銃口のようなものが現れた。

「そのパワードスーツには君の身体機能を飛躍させるだけでなく、エネルギーフィールドを作ることも出来る」

 エネルギーフィールド? それはあれか? ロボットアニメとかでよく出てくるあの防御壁のことか?

「君の防衛本能によって作成されるから、あそこから出てくるゴム弾を防いでくれ」

「了解!」


 ~2時間後~

「島村君、成功率はどのくらいだい?」

「現在の成功率は6割1部9厘です」

 オッサンとミズホの会話が通信機越しに聞こえてくる。

「オッサン、十分だろ? 次の段階に移ろう」

「何を言っている? たった6割じゃないか。3発に1発は防げていない。こんな結果じゃ実戦では生存している方がおかしい」

 !? このクソが!! こっちは2時間無休憩で全力出しているんだぞ! オマケにこのフィールドの形成めちゃくちゃ疲れる!! 冷静に考えて防御本能で機械動かすってそうとう脳に負担かけるんじゃないのか! 俺のやる気も既に疲れに変わっているし。


(大丈夫じゃないみたいだね、透君)

 …この声はファントムか! テメェ! 頭の中に直接声を送るんじゃねぇ!

(ボクに出来ることならなんだってする。だから、ボクの大切な人を守ってくれ)

 はっ、相変わらずアンタはバカだ。俺はそうするって決めたんだからな!! このへばりはしない!!


 ~さらに3時間後~

「…島村君、現在の成功率はどのくらいだ?」

「最新100発の成功率は10割、最新1000発なら9割6部3厘です。」

 …ぜぇぜぇ、こ、これなら文句有るまい…

「辛いか?」

(当たり前だ!!!!)

 すでに声が出ない俺は立っているのがやっとである。

「…そうか、なら30分くらい休憩してくれ」


「…指令、さすがにやりすぎなのでは? 敵の来襲にはまだ時間があるのでは?」

 島村瑞穂が指令に向かって指摘する。

「それはあくまでも予測であり、もっと早まる可能性もある。…我々は被害を最小限にする義務がある。だから、例え彼であろうとも特別扱いできない」

 指令・沢渡宗一が額に濡れタオルを当てイスから立ち上がり部屋を出て行く。

「仮眠をとる。残りの作業は伝えたはずだ」

「お疲れ様です」


「お疲れさまトオル、次の訓練は武器だ。そこにある銃で的を狙い撃つという分かりやすいものだから安心してくれ」

 ミッチーの指示が入る

「ミッチー、オッサ…指令はどこに行ったんだ?」

「指令なら仮眠だ」

 あのクソヤロー!! 俺にはとんでもないことやらせておいて自分は居眠りかよ!?


(違う、あの人はきっと寝ていないんだよ。癖で分かる)

 耳元でファントムが囁く。夢での会話でも思っていたが、コイツってこの世界のことを観測できるのか?

(というかアンタ、俺に会話できるのか?)

 少々疑問に思ったことはなるべく質問したほうが後々楽なのである。この世界は常識を時たま超越している気がするから。

(あぁ、出来るみたいだね。でもあんまり長くは出来ないみたい。)

 持続時間は短いのか、亡霊ファントムにも色々あるようだ。

(話を戻して。お義父さんはこのパワードスーツの調整もそうとう時間をかけたに違いない)

 …? ちょっと待て、あのオッサンは保険医で指令で、そんでもって技術者でもあんのか?

(本業が技術者なんだよ。他のはきっと生徒達よりも優れているだろうという理由でやっているんだと思うよ)

 あんなクソヤローでも人気者様の父親ってだけはあるな。冷静になればあの年でこんなデカイ息子が居るのだから色々と凄いのだろう。

(勘違いしているみたいだから言うけどあの人はボクの本当の父親じゃないよ?)


 どういうことだ?と訊こうとしたのだが、

「トオル? 何か問題があるのか?」

 一人で突っ立て居る俺のことを不自然に思ったのかミズホが質問してきた。

「…いや、悪かった」

 この件はまた後で訊くとしよう。


 銃(パワードスーツにも有効な対戦車ライフルにグレネードランチャー、牽制用の散弾銃やマシンガンなど)の他にハンドアクスやフラッシュグレネードやスモークグレネードの練習をしたそれぞれ1時間ほど行った。

 銃はアメリカで親父の趣味で教えてもらったからさほど扱うのに苦労はしてない。ハンドアクスやグレネードもそれほど技術を必要としないので単に慣れるための作業である。

 正直、エネルギーフィールドとかいう力場なんかよりは楽だった。

「兵器の方はもう慣れたか? 慣れたのなら最後に模擬戦をして本日の訓練は終りにしよう」

 すでに訓練開始から10時間は経っているのにまだやらせるのか…軟弱な現代っ子には厳しいぞ…

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