表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

泥棒犬“サチ”の行方と“月夜国条例”

大分涼しくなってきましたね。半袖から長袖にチェンジの季節です。

寝起きで頭スッキリおだやかな気分で書いてみました。

よろしくお願いします。


あらすじ:異世界に来たユウは、空という少年から世界説明の最中、犬に泥棒されて…。




「…い、お…ろ~。お~い…――」


誰かが呼ぶ声がする。中性的で聞き覚えの薄い少年の声だ。朝靄が明けた自然の匂いが鼻をくすぐる。背中にあたる感触が堅い。そして不安定だ。足がブラブラしている気がする。意識がはっきりしてきた。声の主は………あれ?なんでソラは猫耳で尻尾が生えていて、犬が飛んでいたのか俺、説明してもらってない…。声の主は猫耳尻尾付けた異世界の少年、天津空だ。黒髪蒼眼の少年で、趣味は鍛冶。んでもって、彼よりもかなり足の遅かった俺を縄で縛って錘にし、最終的に俺を犬に向かってブン投げやがったんだ。空飛ぶ犬から盗られたものを奪い返すために。――なんだか思い出したら腹が立ってきたぞ。


「お~い、ユウ、起きろ~。」

「…っつ! 頭痛ぇ……」


体を起こすと強烈な頭痛が俺を襲った。犬にブン投げられた際、頭同士がぶつかってたんこぶを作ったようだ。触ってみると少し腫れていて痛い…。ぶつけられた犬はというと簀巻きにされて目を回している。ソラから盗った帽子を被り、彼の手に持った縄からぶら提げられていた。


「おう、起きたか。スマン。お前がこんなに弱いとは思わなかったんだ。」


空が予想外と顔にデカデカと書いて謝って来た。四方を木々に囲まれた屋根の上、そこに彼は器用に立ち、俺は座っているのだった。なぜこうなったのかはわからんが。


「俺が…弱い?」


聞き捨てならないことを言われた気がする。確かに犬とぶつかって気絶するなど――犬が石頭だったということも考えられるけれど――情けないと自分でも思う。しかしどうしてそれを空がこんな顔して、申し訳なさそうな上辺だけの態度をとり、謝ってくるのか。全くもって理解できない。空はサチがぶら下がった縄を揺らし、心底心配そうにこうのたまった。


「弱い。ものすっごく弱い。この世界で最弱と言われているサチとぶつかっただけで倒れるなんて、ネズミ以下の弱さだな。やっといてなんだが正直驚いた。お前、もっと鍛えた方がいいぞ? 何ならオレが護身術を教えてやろうか?」


不本意だ。とても失礼な心配のされ方である。第一この少年は人に教えられるほど強いのか?服の隙間から見える体には、しんなりとした筋肉がついているようだが……。自分よりも年下に見える少年に教えを乞うのは気が向かない。だからその目やめれ。なんだかムカつくその目……あぁ、言い表す言葉が見つからないけどムカつく!! 無駄に心配そうな表情を取り繕うなっ。面倒だ。そしてなにより、


「余計な御世話だ。それよりもその犬、どうするんだ? 気絶しながら泣いてるぞ。」

「ん?あ、ああ。とりあえず三日ほどぶら提げておくか。生まれて五年の子犬だしな。そうすりゃ当分は大人しくしてるだろう。」


犬は案外若かった。空は嬉々として犬の簀巻きを回転させる。森の静けさに目が冷めた犬の悲鳴が響き渡った。悪いことをしたとはいえ、なんだか可哀想だ。ちなみに、盗られたものはいつのまにかソラの手の中にある。正直ちょっと引いた。


「あとはまあ、このオレたちが乗っているこいつの社をガサ入れして、このバカ犬が盗ったモン、全部持ち帰るぞ。」


回されてぐったりとしていた犬がジタバタし始める。「きゃん きゃん」と憐れを誘うように鳴いていた。やっぱり少し可哀想だ。


「おい、このバカ聖獣犬に同情なんてするなよ?こいつは物心ついた時から何度も他人の物を取って来た、物盗りの常習犯だ。泥棒はこの国でも犯罪だからな。」

「そうなのか。で、でも…」


簀巻きにされた犬のつぶらな瞳と目があった。……か、かわいい…。

ユウの様子を見たソラは取り戻した帽子に顔を埋めるようにして深い溜息を吐いた。


「ふぅ~…、仕方ない。このバカ犬はお前の好きにしろ。煮るなり焼くなり連れ歩くなり。」


その言葉に犬とユウが勢いよく彼を見上げた。ソラは簀巻きを異世界人に軽く投げた。

犬――サチという名の、自分が面倒を見ているこの国の守護聖獣である一匹だ。泥棒の常習犯で成獣になったらこの国の為に働くことが決まっている。前科150犯はある罪人犬だ。その犬は驚いた様子を見せつつ、キャッチされたユウの腕の中で、喜んで尻尾を振っている。彼女は異世界人の少年を少し気に入ったらしい。

ソラはお転婆な娘を嫁にやるような気持ちで、さっそくユウに縄を解かれているサチをみやった。異世界人の少年はかなり縄に苦戦していた。当り前だ。そうなるように自分が厳重に巻いたのだから。サチは縄が解かれた瞬間、二人の周りを飛び回り、自分ではなくユウの肩に止まった。なんだか寂しい…。ソラはそんな気持ちを抱えつつ、社の屋根から地面に飛び降りた。


「家探しはする。これは決定事項だ。盗品に持ち主がいる場合は、月夜国条例に於いて返さなきゃならない。」


慌てたサチがタックルをかましてきたが、ソラはそれをユウに投げつける。ちょうど降りようとしていた彼は、犬を抱きとめて無様に地面に転げ落ちた。ドサッ――と草地に軽い音がする。


「いたたたたたたっ…。いきなり何すんだっ! 危うく怪我するところだったぞ。」


「ユウ、ついでだからこの国の法律、“月夜国条例”について簡単に教えておく。」


異世界人の少年は抗議したが、ソラはそれをまるっと無視して犬小屋代わりの小さな社の扉を開けた。社の中はサチの巣だ。これまで盗って来たと思われる様々な盗品が転がっている。


「もしも~し、聞いてる?」

「お前の言い分など、今はどうでもいい。だから黙って聞け。たぶんおそらくきっと、お前は当分この国にいるんだろう?」


ユウはぶすくれて懐いてきたサチ(犬)を撫ぜた。


「……ああ、自分の立場とか、どこに行ったらいいのか、どうしたらいいのかとか含めて、まだ先が見えないからな。当分はいる筈だぜ?」

「だったら黙って聞きな。」


社の中から腕一杯の盗品を抱えて出しながら、ソラは厳しい顔で静かに語った。


◇◇◇◇◇


月夜国理条


1、王は主から賜るものなり。安易に簒奪すべからず。


2、王になりたくば、其の力でもって現王よりも優れていることを表し、国と民を豊かにすることを考え、実行して見せよ。民を(大いに)苦しませる王は要らず。


3、王とは、国の代表者であり、全部族の統括的存在である。譲位は速やかに行われるべし。


4、国内でのヒト同士での死闘を禁ず。ヒトとは、各部族・各精霊・聖霊・言語を解す魔族など、何らかの方法でコミュニケ―ションがとれる、知能の高い、心のあるものとする。


5、街中での私闘を禁ず。甚だ迷惑である。決闘・私闘の類は、海上や草原など、ひとの迷惑にならない場所で、合意の上で行うべし。


6、戦やイベントなどの法の下での殺し合い以外、人殺しは禁ずるものとする。

大規模イベントで行われる戦闘に、上記の事は当てはまらない。イベントのルールがそのまま法となる場合があるので注意召されよ。


7、盗み・高利貸し・人身売買を禁ず。商品はお金を払って買うべし。返せない借金をすることなかれ。ヒトの尊厳を損なうことなかれ。


8、他人の物を壊せば、壊したものが弁償、もしくは修理すべし。


9、これらに違反した時、罰を与えるものとするが、死に至る罰は禁ず。労役によって罰せられたし。


10、イベントとは、政府や国民が企画して執り行われるゲームであり、クエストである。イベントが執り行われる際は、我らが創造主と守護神の名のもとに各種族の島にある、代表的な掲示板に張り出される仕組みだ。希望者は自己責任で参加されたし。また、企画者も責任を持って全うされたし。企画するも参加するも個人の自由である。貴賤は問わない。


以下略。


◇◇◇◇◇


「――なんだか、子供でも分かり易そうな言葉で書かれた法律だな。来たばかりの俺でも理解できるぞ。」


腕の中でしみったれた顔をしているサチを撫でながら、呟くように云った。サチが集めた盗品は全てソラが風呂敷に包み、背中に背負った。社の中には必要最低限の物しか残っていない。


「ちなみにこの国の成人はちょいと複雑でな?10歳を過ぎたころから働けるようになり、男女ともに15を過ぎれば結婚できるようになる。二十歳になれば酒を飲めるようになり、子供をつくる事が出来るんだ。そして100を過ぎると長命種はやっと一人前って感じだな。もしくは寿命が来る。町は各種族の長老が治め、国は治める資格のある王が治める。政治は賢い者と各種族の族長が治め、司り、執り行われる。各種族全体は当然のように選ばれた長が治めるって寸法さ。上に立つ者は資格がなければならない。逆に言うと資格がなければ長と認められず、地に落ちるってわけよ。」


こわいぜぇ?資格がないのに上に立とうとした者の末路は…――にやりとした笑みを浮かべてほの暗く嗤うソラの方がよっぽど怖いとその時の俺は思った。しかし成る程。この国の仕組みというモノはよく考えられている。実力主義なのだ。きっと。


「お、いいものがあった。持ち主が死んだか失踪した盗品だ。これでも読め。オレが説明するよりもはるかに分かり易い寺子屋の教本だ。」


もうなにもないかと社の中や近くの木を探していたソラ。彼が渡してきたのは古ぼけた厚くもなく薄くもない一冊の教科書だった。彼は俺に教本を渡すとまた、社や木を探り始めた。徹底的に家探しするつもりなのだろう。目からぽろぽろと涙を流し、震え続ける犬――サチを宥めるように撫ぜつつ、俺は教本を開いた。


後ほど、種族設定をこの下に貼り付けるか。それとも次のページに書くか。

悩みどころです。それが終われば先に進めます。


サチ(犬、幸と書く)は、ユウと同行予定。

“空飛ぶ犬”というそのままの名前な稀少種族。年齢5歳。長命種。性別はメス。元主人・空に似て素早い。耳で宙を舞う。激弱。ドラ〇エでいうとスライム並。特殊能力アリ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ