如何してこうなった
誰かが言った。「話を始めるにあたって、まずは死体を転がせ」
だから私は転がしてみるのだ。事件と言う名の死体を。(適当)
暗がりにある冷たい石の小部屋。床に敷かれた藁の感覚。そこに横たわっていた自分。
「…どうしてこうなった。」
目の前に広がる鉄格子。かすかな明かりを頼りに書類の山に埋もれ、真剣な顔で脇目も振らずに処理していく男。舞い散る紙束。牢人の怒号やイビキに唸り声。
茶髪の少年は自分の置かれた状況を把握して、半目で呟いた。
「どうして、こうなった。」
斜め前の牢屋で醜悪な顔をした男が少年を見て、下卑た様子で舌なめずりをしている。きっとアイツは俺の事を女と勘違いしている。それもこれもこの顔と容姿が全て悪い。
げっそりした気持ちでその男を睨み返していたら、相手の額に羽ペンが刺さって血が噴き出した。ゲスな男が倒れる。代わりに書類仕事をしていたやつれた顔の優男が、椅子から立ち上がって舌打ちをした。彼はそのまま牢屋の中でのたうち回っている男を、鉄格子越しに蹴り上げ、額から羽ペンを抜き取って、また元の位置に戻る。
ゲスのうめき声が牢屋に加わった。そしてまた、書類が舞い散り始める。かすかに見える書類のインクは血液交じりだ。少年は自分の目の良さを呪いたくなった。何故、牢屋でそんなホラーなものを認識せねばならないのか。今夜は眠れるだろうか。
他の牢屋が騒がしくなったと思ったら、定規が飛んで静かになった。また、騒がしくなると短剣が飛び、断末魔が聞こえた。書類の山が舞い散り、別の山を作りつづける。
「どうして、こうなった。俺が、なにをしたってんだ…。」
少年は鉄格子に縋りつくようにして、うなだれる。
彼の罪は不法入国罪。少年はこの世界の者ではない。所為、異世界人というヤツだ。彼がどうしてこうなったか。それを説明するには話を遡り、それとともに時も遡らなければならない。
まるで砂時計を逆さまに戻すように。
決して戻らない流水を奇跡の力で巻き戻すように。
始まりです。
(このページを)付け足してみました。納得がいかなかったから。
お次へどうぞ。
この訳は、話しが進まないと見えませぬかも。
頑張るのです。
よろしゅうおねがいします。