強敵との絆
この作品は格闘ゲームを題材に扱っています。
格闘ゲームってなんぞや? という方にもわかるように話を進めていく予定です。
この作品を通して一人でも多くの方が格闘ゲームに興味を持っていただけることを願っています。
「さあ、最終ラウンド! この試合を制したものが、勝ったものこそが格闘王の称号をてにすることになります!」
会場の熱がテレビ画面越しにでも伝わってきたのを今でも覚えている。格闘ゲームの全国大会、そのDVDを初めてみたのは5歳にも満たない頃だった。
「1P側はキラリ☆のアナスタシア、2p側はざっきーの御神槌」
「立ち回り相性をアナスタシアがどうカバーするかが勝敗の決め手でしょう。御神槌もワンちゃん掴まれれば簡単に死ねます」
繰り返し見すぎて実況のセリフも覚えてしまった。
「さぁ始まりました! 開幕ダッシュで間合いを詰めるアナスタシア。後ろに下がりながら様子見と牽制を繰り返す御神槌をキラリ☆は追い詰められるかぁ!」
昔は何を言っているのかもわからないまま、ただせわしなく動くキャラクターたちを見ていた。
「御神槌には画面端に追い詰められても反対側にワープできる技があります。いくら硬直があるとはいえアナスタシアが差し込むには厳しい距離。ザッキーのJC置きにキラリ☆なかなか攻めきれません」
今ならこの二人がどれだけの駆け引きを、読み合いをしていたか、そしてその凄さがわかる。
「さぁチクチク、チクチクと御神槌のJBがささる。判定詐欺としかあぁあああぁ! 捕まった! さぁキラリ☆がわんちゃん掴んだ!」
攻撃をかいくぐり自分のターンをつかむまでの我慢強さ、相手の隙を見逃さない冷静な判断を大会の、それも優勝をかけた大舞台で発揮したキラリ☆を尊敬せざるを得ない。
「さあワンコン、カウンター始動で3500ルートぉ! ハイ! ハイ! さあ画面端までご招待! 起き攻めの中段! ザッキー見えてる! さぁ固めて、固めて、暴れ潰しと跳び防止を兼ねた微ディレイの管理が凄まじい! 御神槌はゲージがないと無敵切り返しがないので我慢するしか無い!」
その道において研究を重ねた上位陣の戦い、解説、プレイヤーの意図を理解し、説明をする実況者もまた一流だった。
「発生の遅い中段に暴れを通したいが、アナスタシアの端カウンターゲージ消費は非常に伸びます! 体力の少ない御神槌にはリスクがでかすぎる! さぁ下段下段としつこく下段! ここで御神槌のゲージが貯まる! 同時に様子見を挟んだアナスタシア! さあお見合い! 投げ抜けてぇ! 御神槌はここでワープで画面端を脱出! しっかり我慢し切りました! さぁ仕切りなおしてアナスタシア8割、御神槌6割といったところ」
自分にとってバイブルいっても過言ではない。
「さぁまたジリジリとした立ち回りが始まります! こうなればザッキーは水を得た魚! 50%ゲージがあればフォローが聞くのでやりたい放題! 近づけないままじわじわと削られていくアナスタシア! ワンちゃんで倒しきれないとこうなるのがこの組み合わせです。さぁチクチクささっていつのまにかアナスタシアが4割り切っている!」
「おにいちゃ~ん? ご飯だってー」
「あれ、もうそんな時間か」
「またそれ見てたの? 飽きないね~」
「大好きだからな」
「お父さん譲りのゲーマーっぷりには呆れるよ」
「はいはい」
「ハンバーグだって」
「そりゃ楽しみだ」
「バースト読んでぇ! 決まったああああああああああ!! 格闘王への道、強敵との絆、優勝者はーーー」