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クロの下界冒険記~神→冒険者?~  作者: UNKNOWN
4章 塀の国と、陰謀?
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12話 キャンプと夜襲、チューブ入りの注射薬

お久しぶりです。

まさかこれだけの文でここまで掛かるとは…・・・。

「こちら『パファダー』。目標を視認、本部の判断を仰ぐ。オーバー」

『こちら本部。処理班の到着を待て。オーバー』

「了解。待機する。……オーバー」



 闇に埋もれた木立で、漆黒の銃身が小さな光を舐め取った。





―――――――――――――――




 夜。



「……こういう展開はあまり予想してませんでした」



 いつの間にか移動していたらしいレガルド王国警備軍の車両が集結した林の中の開けた平地に陣取って、薪を集めて燃やした焚き火をライオット小隊の3人と囲みながら、ぼんやりとつぶやく。

 誰だよこんな林の中でキャンプしようなんて言い出したの。蚊はいないけど、もしかしたらもしかしてサソリが出現するかもしれないからとかいう恐怖の野外活動だ。


 ちなみに僕ら、グループで2時間ごとに交代する歩哨を割り当てられ、日暮れ前に武装して2時間パトロールしてきた。で、日が完全に沈んだあたりで待機していたチームと交代して、休憩に入ったところだ。

 待機していたチームが何張か張ってくれていた仮眠用のテントの前で5人で車座になり、簡単な夕食を取ろうとしている。


「おーう、明るく行こうぜクロたん。ほら焼けてんのどーぞ」

「あ、いただきます」


 何かあったらしく部隊に合流できないライオット小隊長に代わって隊を指揮するイースさんが、報告に来た通信兵さんと一言二言言葉を交わし、兵士さんがテントへ戻っていくのを見届けて、僕の方に向き直る。

 焚き火の周りをぐるりと囲むように10本ほど立てた、極太のソーセージの1本をイースさんから受け取り、刺された鉄串の部分を耐熱用の革手袋をつけた手で掴んでかぶりついた。

 ぱつんぱつんに張った皮を噛み破ると同時に、中から肉の旨味が目いっぱいに溶け込んだ肉汁があふれ出し………


「のあっ……!ふあっ、あっつ!!」

「うんまあクロたん、そりゃ流石に熱いわ」


 熱々のソーセージを口の中で転がして冷ましていると、向かいに座る半透明のフローラさんがクスクスと笑った。

 な、なんなんだよもう……熱いものは熱いんだから仕方ないじゃんか。そんな笑わなくてもさぁ。


 ふわふわ笑うフローラさんから目を逸らしつつ、ようやく冷めてきたソーセージを噛み締める。


(お、うまい!!)


 皮が弾ける食感といいハーブの風味と脂の旨みのバランスといい、これは本当に美味い。帰ったらジルにも分けてあげたいぐらいだけど、どっかで売ってるのかなこれ。もちろん、右前に座るデュラハンのアリスさんが食べてる唐辛子で真っ赤なの以外で。

 するとひざの上に載せた自分の頭、その口でゆっくりとソーセージを齧っていたアリスさんが、ふいに口を開いた。


「……イース、マスタードがない」

「あぁマスタード?ストック切れてたし持ってこなかった。ごめんにー」


 そしてなんで追加で付けようとしたマスタードが無いからと少し残念な表情をするのか。というかそんなに辛くして味なんて分かるんだろうか。 

 今もイースさんからマスタードの代わりにと受け取った黒コショウをこれでもかと掛けてるし。


「でもおかしいわよねぇ~。演習場に魔物が出るなんて~……」

「ンなんだろねもうさー。おかげで非番なのにこんな物騒なブツ持って一日過ごすハメになるんだからさぁ」


 不平を垂れるイースさんの背中で、銃剣を取り付けるための着剣装置が装備されたポンプアクション式のショットガンが揺れる。今日のイースさんは小隊長代理ということで大きな無線機も肩から提げていて、なんだか見るからに重そうだ。

 あとの二人も非番だったのは変わらないらしく、揃ってため息を吐いた。

 でも僕なんてジルと王都観光を楽しもうとしていたところを(同意はしちゃったけど)無理やり連れてこられてずっと付き合わされてるんだよなぁ。きのう頑張って王都のマッピングを済ませて、今日は一日観光で潰すつもりだったのに……軍の偉い人にでも訴えてやろうかしらん。


「それにしても急に静かになりましたよね。サソリを駆除してからは特に」

「………クロもそう思う?」

「はい。あれから一発も撃ってないですし」


 じっさい、二脚で自立させて脇に置いてあるマイ軽機関銃に装着された、キャンバス製のホルダーに収められた200連弾帯の5.56×45mm弾はまだ一発も発射されていない。

 ちなみにこの機関銃、ストック固定式のフルサイズモデルで、機関部上面のフィードカバーには単眼式の微光暗視装置とそれに対応したホログラフィック・サイトを装着している。これで夜戦もバッチリ……だと思う。たぶんおそらくきっと。欲を言えばサーモグラフィー機能も欲しかった。


「いやーでもさぁ、クロたんてサソリ嫌いなんしょ?また出てきたらどうすんのさ」

「そ、その時はその時ですよ。ちゃんと仕事します」

「あらら~、無理しなくてもいいのよ~?」


 言われてみれば確かに、本陣まで戻ってきて機関銃も弾薬も豊富にあるワケで、僕が『お手伝い』をする必要も無いんだけども。

 食べ終わったソーセージの串と右手の革手袋を置き傍らの軽機関銃を持ち上げ、構えて見せる。


「まあ……乗りかかった舟ですし。効率もいくらか上がるかと思いますよ」

「ほー。そうかね」


 空返事を返しながら新たな串に手を伸ばすイースさんから目を離し、構えたままの軽機関銃にマウントされた暗視装置のスイッチを入れた。

 ナイトビジョンモードに設定され、不可視光レーザーで画面内に投影された円形のレティクルが暗視装置の視界に白く浮かび上がる。


「ラスト一本もらうわね~」

「あいよー……てかクロたん食ってないじゃん」

「もふおほいはよ~」


 たぶん『もう遅いわよ~』と言ったらしいフローラさんの横で、傍らに置いていたブリキの弾薬(アモ)缶をひっくり返して中に何も残っていない事を示すアリスさん。余談になるけど、何でも携帯糧食のマズさに辟易したとかで、隊のみんなで共謀していくつかの弾薬箱にソーセージをいっぱい詰め込んで持ってきていたらしい。

 あ、そういえば昨日もらった携帯用チョコレートは不味いって程でもなかった。なんか巨大なソーセージを一本食べただけで大分お腹が膨れたし、もう残りも無いってのならチョコを貰って来ようかな?昨日もらった糧食以外にも何か面白いメニューが見れるかもしれないし。

 たしか向こうの作戦本部横に停めてあるトラックの周りで補給隊の人たちが休憩してるはず……ちょっと行ってみるか。


 ――――そう思って立ち上がった、その瞬間。




 ズダァァン!!




「あが……ッ!?」



 遠雷のような爆音が響いたと思った瞬間、上半身を凄まじい力で殴りつけられるような衝撃が走り、視界がぐるりと一回転した。


「クロ!?」

「クロたん!!」


 顔を冷たい何かに打ち付けた。直後、天地の感覚がないまま装軌輸送車の隙間に引き摺り込まれる。


「敵襲よ!敵襲ー!!」

「痛ッ……たぁ」


 左肩がなんだか熱い。熱く熱した鉄板を押し付けられているような激しい感覚を覚えて、思わず苦悶の声を上げてしまう。

 そしてしばらく時間の経過と共にだんだんと鋭い痛みもそれに加わってきた。


『チームA(アー)から本部!所属不明の武装集団を発見、交戦状態に突入した!!』

『こちらチームB(ヴィータ)!!なんか巨大なライフルを持った人間が逃走!捕獲するため追跡中!!』


 


「クロ!クロ大丈夫!?」

「あ、アリスさん……。どうしたっ…ん、ですか、それ」


 脇に抱えた頭から心配げな視線を僕に向けるアリスさんの、ガンブルーで青黒く染められた全身鎧の胸部から腰のスカートアーマーまでに何か付いていた。粘っこくてタールか重油のような……少し赤色が混じった黒色の半固体の液体だ。

 

「……痛く、ないの?」


 質問には答えてもらえなかった。……しかし答えてもらったところで聞く余裕は無かったかもしれない。

 さっきから左肩の痛みは増す一方で、今や僕の肩には無数の釘を同時に打ち込まれているかのような痛みが襲い掛かっている。


「ひ、左肩が、痛くて―――わっ」

「……見なくていいから。フローラ、お願い」

「わ、わかったわ~」


 革手袋を着けた手でガッチリと両目を塞がれると同時に頭を固定され、何も見えなくなったところで右肩にフワリとした手が触れた。どうやらフローラさんが肩に手をかけたらしい。

 直後、右の太ももにチクリとした痛みが走った。何か針を刺されたらしいけど、目隠しされてるから見る事が出来ない。


「あとでジルさんに怒られないかしら~……」


 アリスさんの手が若干緩み、頭を拘束するような感じではなく、ただ手を乗せて僕の視界をふさぐだけになった。なったけど、体を動かそうものなら更なる激痛が襲ってくるため、払いのける事もできそうにない。


「……薬が効くまでじっとして」


 痛みに耐えている僕には返事をする余裕も無かったけど、どうやらさっきの注射は麻酔か何かの鎮痛剤だったらしい。

 注射された脚がじんと痺れてきて、頭の中に残った意識が少しずつ溶かされていくかのような感覚が襲ってくる。同時に、酷く痛む左肩も少しだけ感覚が鈍くなり、痛みが減った……ように思いたい。

 感覚が無くなったとか何とか、そんな事を考えることもできやしない。これも麻酔の効果……?


「……クロ?大丈夫?」

「なんかふわふわします……ふわふわ……」


 なんだか体が落下していくような、でも浮いてるような……、

 ……すごく、気持ちいい。


「フローラ、オーバードース!」

「ふぇえっ!?―――あっ、大人用!!」



(あは……あはは、ふわふわ……)



 心地よい落下感と酩酊感のなか、全身の感覚が無くなって――――






――――――――――――



『ライフル射手の身柄をを確保!……チームA、オーバー!』

『こちらチームB。目標の殲滅を完了、指示をくれ。オーバー』


「おほー早い早い。さすがは我等が小隊、夜でもギンギンてかね」


 しばし弄っても使い方が今一つ分からなかったクロの機関銃を銃架代わりのリュックに放り投げ、持ち換えたショットガンを林に向けて油断なく構え続ける。


『本部より各チーム。負傷者の救護を最優先し、各チームとも早急にキャンプに帰還せよ。繰り返す―――』


 肩から提げた小型無線機からは先回りして自分が本部に伝えた通りの文句が流れている。

 本当なら自分は現在小隊長代理だし、本部テントに居るべきかもしれない。が、『現場が見えない』状況というのは、自分にとって何とも耐え難いものだった。―――まあ、だからと言って常識から言えば危険な行為なのには変わりがないけど。


「クロたんは大丈夫ー!?」

「……あんまり」


 返ってきたアリスの震え声を聞いて輸送車の上から振り向くと、眠たそうな半目のままで動かないクロと、それを介抱するイースの同僚ふたりが見えた。

 わたわたしているフローラは顔色という概念がないから分からないが、可哀想にアリスが抱えた自身の頭の顔色はすこぶる悪い。


 まあ確かに、とイースはひとり考えをめぐらせる。

 普通なら(・・・・)銃で急所を撃たれれば即死する危険性もあるし、ましてや今のクロのような―――左腕が肩の半分ごと(・・・・・・)千切り取られている状況ならば、どんな名医だって匙を投げるに違いない。

 ましてやここは医療設備など皆無に等しい、強いて言うならば衛生兵が応急処置程度の医薬品を携行している程度の戦闘地帯なのである。手術はもとより、満足な応急処置さえ受けられないような劣悪な環境なのだ。


(でも、まーそれで死んでないって事は……そーゆーことでいいのかね?)


 曲がりなりにも食人鬼、様々な種族が住まうこのセカイでも指折りの再生能力を持つ自分には分かったような気がした。

 現にクロの左肩は黒い結晶質の物体で覆われて傷が塞がり始めているし、負傷直後に傷口から流れ出ていた半固形の液体も血ではなく何か別のものだった。それはアリスの白銀色の全身鎧にべっとりと纏わりつき、歪な黒い(まだら)模様を残していたものの、先程振り向いたときには見当たらなかった。アリスが拭いたか、自然に落ちたのかもしれない。

 

 しかし何にせよ、怪我人は怪我人。敵の襲撃も収まったところだし、この小さな神様を後方へと送り届けてやらないと。


「報告!チームBが帰還しました!」

「ご苦労さん。チームAは?」

「向こうのトラックに捕虜を収容している所です。―――少々、小突きながらですが」

「そりゃ楽しそ……ゲフンゲフン、後で怒られるから程々で止めさせてちょ。んでクロたんを後送。応援の中隊がもうちょいで来るからそのタイミングであたしらもズラかんよー」

「了解しました、副長殿」

「んー」


 オープントップの荷台の上で最後の抵抗とばかりに暴れるライフルマンを取り押さえながら、いちいち大声の棒読みで『あー手が滑ったー!』などと申告しながら数発ブン殴って黙らせた獣人兵士の一団をすこし見やり、輸送車を降りる。

 たしかアリスは今日の任務にも愛馬ネイビスに乗って参加していたはずだ。気性の荒いネイビスのことだから、今ごろ手綱を取って移動させようとした兵士を蹴り飛ばしでもしているかもしれない。


「アリスー、あたし代わるからネイビス連れてきなよ」

「で、でも……クロが……」

「いやーもうさ、死んでないから大丈夫なんじゃない?」

「……」

「ンまぁ勘だけどさ。でも血も出てないし」

「………じゃあ……」


 不承不承折れてくれたアリスの膝からクロを抱き上げ、まだ残っているクロの右腕を首にまわして安定させてやる。


「『ヒト為らざる者みな丈夫』ってね。うぉい見てフローラ、神様をお姫様抱っこ!」

「なんだか誘拐犯にしか見えないわ~」

「ヒドっ!?」



 さぁて、こうなったらクロを抱いたままバイクになんて乗れないし、適当な兵士に話をつけてせめてクロだけでもトラックに乗れるよう手配しないと。




「おーそこのトラック!!どいつかアタシのバイクに乗ってくれるヤツぼしゅー!!」




 ようやく白んできた空の下、しかし我等が隊のやる事は未だ山積みのようであった。
















「ま………アタシらもそろそろ我慢の限界かも。――――ねぇ、クロたん?」















だいぶん書いたつもりだったんですが、改めて見返すと短い…。

もっと書かねば。


さて、今回出てきた兵器は、登場順で


・ウィンチェスターM1897トレンチ(イースのショットガン)

・MINIMI軽機関銃(クロが召喚していた銃)

・PTRD1941(ライフルマンの銃)


です。


今回やたら悩んだのはMINIMIです…。

登場させたMINIMIには夜戦仕様ということでナイトビジョン(以下NV)とNV対応のホロサイトを搭載しました。が、このとき搭載できるNVの候補としてAN/PSQ-20(従来の微光暗視機能に加え、サーモグラフィーの機能も追加されている最新型)を考えていたのですが、どうもそれが銃にマウントできるという情報が無い。

AN/PSQ-20は微光暗視方式だからホロサイトのNVモードは利用できるわけですが、銃に直接マウントできないので頭にバンドやらで固定するしかなく、パトロール中は兎も角そんな格好でソーセージ食べてる絵ヅラは流石に……となり、代わりのNVを探していました。

結果、AN/PSQ-20の一つ前に米軍で採用されていたAN/PVS-14が確かにMINIMIに搭載できるらしいということを(やっとこさ)知って、ようやく安心して書き進めることが出来るようになりました。

毎回こう無駄に時間を費やしてるから更新が遅くなりますね……。反省。


(あ、ちなみに特に解説はしませんでしたが、ホロサイトはEoTECH551あたりで脳内補完を宜しくお願いします)

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