10話 帰還と夕食、カオスな化学反応
お久しぶりです。五ヶ月以上未更新の表示にビビりまくったUNKNOWNです。
いろいろありました。本当にいろいろありました。Twitterでは囀りまくってたので見ておられる方はご存じかと思いますが……艦これの二次創作書いたり、資料集めてたり京都行ったり佐賀行ったり。
まぁそれは追々話すことにして、最新話をどうぞ。
「た、ただいま帰りました………」
怒りが収まったらしいミーシャさんに宿の前でようやく開放されて、僕は三十分ぶりぐらいに自分の足で歩いていた。お尻ではなく。
正直メチャクチャ痛いので途中で勘弁してほしかったんだけど、笑顔のまま僕のコートを掴むミーシャさんの握力は半端ではなかった。もがこうが転がろうが引っ張ろうが、とにかくビクともしないのだ。
あまりの痛さに途中からは足をピンと伸ばすことで何とかお尻を浮かし、分厚いミリタリーブーツの踵で体重を支えながら引きずられていた。まあ、それのせいで今度は太ももが痛くなってしまって結局は力尽きたんだけど。
「お、お帰りクロ。ジルさん達ならあっちで晩メシ食ってるぞ。そっちの人は?……って、誰かと思えばミーシャさん!お久しぶりっす!」
「チャコさん。お久しぶりですね」
「お久しぶりです!晩飯は食べていかれますか?」
「あっ……ごめんなさい、今日は帰って用事がありますので遠慮しますね」
「そうっすか?じゃあ後で親父に伝えておきますんで、またいつでも来てください」
む。なんだか2人の間に親密ななにかがある予感?
よくわかんないけど普通に知り合いっぽい。関係はよく分からないけど、口ぶりからしてチャコさんのお父さん(もとい熊の人)と親しくしてらっしゃるらしい。
おっと、他人の関係を詮索するのはよくないよな。いけないいけない。そう思って、とりあえずチャコさんに指差されたほうを見てジルを探してみると…………お、いたいた。なんか優雅に足を組んでコーヒー飲んでるジル発見。対面にはヒタキさんの姿も見える。
食堂スペースになっている『熊の隠れ家』亭の一階はごく普通の大衆食堂みたいな雰囲気なのに、ムダに様になったジルの所作がなんだかとても浮いて見えた。
「おーいジル、ヒタキさん。ただいま!」
「ああ何だ、マスターですか」
何だってなんだよ何だって。ジルの中で僕の扱いがあんまりにも軽くはありゃせんか。
たまに本当に僕がジルのマスターなのかと不安になってくる事だってあるんだぞこんちくしょー。
なんか悔しかったので、タタタッ、と笑顔で小走りにジルに駆け寄るフリをして助走をつけ、急反転してジャンプ!そのムダにかっこよく組んだ脚に飛び乗ってやる、さぞかし痛かろう…………よ゛っ!?
「まだまだ甘いですね。マスター」
「ぐげっ」
..........普通に空中でコートの襟の部分を掴まれて阻止されて、そのまま宙吊り状態。ぬぅおおおお、足が地面につかない悔しい!
しかもジル、僕を片手でぶら下げたまま優雅にコーヒー飲んでるし。うわめっちゃ腹立つなこんちくしょっ!!
「暴れないでくださいよマスター。コーヒーがこぼれます」
「なら放せっての!?」
「クロちゃん……」
そんな憐れみのこもった目で見つめないでヒタキさん!なんか悲しくなるからさ!
「あー、すごく美味しい。生き返る」
帰っていくミーシャさんを吊るされたままで見送り、やっとのことでジルから開放され席についた頃に運ばれてきた食事に口をつけながら、思わず幸せなため息を漏らす。最高位神っていいもの食べてると思われてるかもしれないけど、、別にそういうことはない。ごく普通の和食とか一般レベルの洋食とかを自分たちで作って食べていたし。
ちなみにキザミ姉に料理をやらせてはいけない。小一時間で食物ではない凶悪な何かが練成される。ついでにむりやり食べさせられたカルム兄が息絶える。
今日の献立のひとつ、豆とマカロニみたいなパスタ(あのらせん状のヤツ)が一緒に入ったトマトスープ。肉は入っていないけど、野菜の味がしっかり出ているスープと、ほどよく煮込まれた豆とパスタが絶妙にマッチしてすごく美味しい。ジルはもうすでに二杯目を頼んで食べている。がっつくなぁ。ちなみに主食はライ麦パン。これもやわらかくていい感じ。
「やー、僕って小食なほうなんですけど、久しぶりにお腹いっぱいまで食べ……ん?ジル、どうかした?」
さっきから、食後のコーヒー片手にジルが僕の背後をチラチラと見ているのに気づいて、声をかける。何だろ、市中引き回しのとき背中に何か付いてたのかしらん。
首を回して、コートの背中を覗いてみる。が、何も付いていない。マチェットと同じ固定化の魔法の弱体化バージョンがかけてあるからほつれてもない。弱体化バージョンとはいっても、少し市中を引き回されたぐらいではびくともしない丈夫さになる。まあ、さすがに銃弾とか衝撃とかは防げないけどもさ。
一時期、これで防弾ベストいらずとか思ってた時期が僕にもありました。無念。
「何もついてないけど……ジル?」
「…………いえ、では少し失礼して」
そう言うとジルは、ふたたびライ麦パンをくわえようとした僕の頭に手を伸ばし、
「うわ!ちょっ、やっ、ぐぅ!?」
そのまま頭を掴んだかと思うと、右に左にがっくんがっくん。向かいの席で唖然としているヒタキさんの顔も視界と共にガンガン揺れる。い、いきなり何だってんだよ一体!?
ボソッと「ダウト」とだけ呟き、片手で僕の頭を掴みなおすと真後ろにツイスト。がしっ、ぐりん、ごきっ。3ステップで変な音がしたんですがジルさん、使い魔ってのはもっと穏やかであるべきだと思うんですがどうでしょう。
「マスター、そいつは何者ですか?」
ててて………ん?そいつ?
首の痛みと脳が揺れた後の嫌な感覚に顔をしかめながら、ジルが指差す先を見る。
そいつと言われて指差した先を見ても、何のことはないただの石造りの食堂の床だ。目を凝らしたところで、何か生き物がいたり特段かわった何かが見えるというわけでもなく、ただ明るい電球の明かりに照らされてできた自分の影があるだけだ。…………ん?影?
数秒考え込んで、ようやくその『違和感』の正体に気が付く事ができた。
(僕、こんなに髪が長……くないよな)
それだけじゃない。僕の影の身長が、隣のジルとほとんど同じだ。いや、むしろそれよりもすこし高いぐらいかもしれない。
影でもわかる細い腕にボディライン、それに僕の着ている袖の余ったトレンチコートとは明らかに違う服。足元の影の感じからして、たぶんドレスだと思う。
なんかちょっと前に見た気がするような……いやいや待て待て。あの人は日本刀に圧縮されていた存在を展開するとき、その存在を展開する魔法を途中までしか唱えなかったせいで存在の半分を刀に、もう半分を僕の中(そういえばどこかは知らない。脳とか?)に留めたままなのだ。
後ろに誰かが立っている訳でも無いし、いやでもこのシルエットはまさしく………あ、そうだ。
あることを思いついた僕は、ベルトに差していた日本刀を抜いてしっかりと握った。
「ちょっと失礼」
さっき路地裏でやったように、日本刀の柄と鞘を緩く握って引き抜く。仮にも店舗の中で刀をぜんぶ抜いてチャコさんに怒られるのも怖いので、白銀色に輝く刀身が少しのぞく程度までに留めておいた。
途端に周りの景色がスローになり、頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚を感じて咄嗟に手を離し、刀身の根元だけを覗かせたままの状態で、鞘を持って膝の上に載せる。
『クロ様ぁ!またお話できて光栄です!!』
「おー、本当にしゃべった」
しかもテンション高いなー……で、声は少し前に聞いたアテさんの声で間違いないな。高めの、しかし耳障りではないきれいな声だ。
どうやら完全に抜かなくても、刀身が鞘から出ていれば刀に意識を顕現させているアテさんとの会話は可能になるらしい。さっき刀を抜こうとしたときも何かに意識が侵されるような感覚があったのし、乗っ取られるリスクを犯さずとも会話ができるのは正直ありがたい。
「クロちゃんそれもしかして『インテリジェンス・ソード』!?」
「ちょっと待ってください。その刀、抜けないはずでは……?」
隣のジルが、珍しく困惑した様子で話しかけてきた。さっきまで手放す事がなかったコーヒーカップをソーサーに戻したあたり、それなりに真剣な感じっぽい。ヒタキさんも僕の正面で四皿目のグリーンサラダ(おかわり自由)にレモンを絞りかける手を止めてこちらを見ている。
これはちゃんと理由を説明しないとダメか。なんか刀に向けるジルの視線が微妙に鋭いし。
ちょうど仕事が一段落ついたチャコさんが自分のまかないを載せたトレーを持って席についたので、チャコさんにも鞘から抜いた日本刀を持ち上げて見せてから説明を始める。
「実は、昼間に演習に参加してた時のことなんですけど……」
――数分後。
「………そんなわけで、こんな感じに」
演習場に豚さん、もといマッドオークが大量に出現した所から今までの経緯をすべて説明し終わった頃、ジルは目を瞑って考え込むようにして黙り、ヒタキさんも黙ってサラダをムシャムシャ……ってもう六皿目だけどお腹は大丈夫かな?すごい食欲だなぁ。
チャコさんは難しい顔のままで僕をじっと見つめていた。が、気のせいだろうか、頭の上に『?』マークがたくさん浮かんでいるように見えるのですが。イマイチ理解できなかったらしい。残念。
僕がしゃべっている途中、要所要所でアテさんが分かりやすいように説明を補足してくれていたから助かった。正直あんまり他人にものごとを説明するのは得意じゃないしね。
「話は分かりました。要は五月蝿い輩がまた増えたということですね?しかも億年単位のストーカー、と」
『ちょっと待とうかしら、ムッツリスケベの変態カラスさん!』
「……何でしょうか?超々ストーカーのお喋り刀さん」
『ムッキ――!!カラス如きが馬鹿にして!』
……何だ何だ、この二人の間で何の化学反応が起きたんだ。
口を開いたと思ったら唐突に口喧嘩を始めてしまった。何と言うかこの状況、どこかで見た何かに似てるような……何だっけ?
『そもそも!たかが使い魔風情の癖して頭の高すぎやしないこと!?』
「はっ!悪戯して神界から出禁くらった神様(笑)が何を言ってるんだか」
『何をぅ……!!』
えーと何だったかな、アジアの……日本だったよな。
なにぶん昔のことで記憶がなぁ。んーと、
「な、なあクロ、止めねえの?」
「んえ?……あ、チャコさんでしたか。心配しなくても大丈夫、止めませんよ」
「いやいやいやいや、そこは止めろよ」
「楽しそうじゃないですか。あれはあれでね」
「……楽しそう?え、マジ?」
「マジです」
だってジルの目が爛々と輝いてるし。普段はああじゃないもんなぁ……さしずめ、これはなかなか弄り甲斐のあるヤツが現れた!ってところかな。あの様子だと。
あ、気付けばもうチャコさんがテーブルの空になった食器をひとまとめにしていた。いつの間にやったんだろ?気付かなかった。まあでもそろそろ頃合いか。何だかんだで疲れたし、もう部屋に戻ろう。
「それじゃご馳走さまでした。いろいろ確かめたいこともあるし、僕は部屋に上がりまーす」
「了解です。私は暫くこっちに居ますので……それでマスター、このイロモノ刀は?」
「……親睦を深めておくようにね、ジル」
『え、置いてっちゃうんですか!?』
「ちょっと集中力つかうんで。ヒタキさん、チャコさん、おやすみなさい!」
「おう、おやすみー」
「おやすみなさい。明日も街を案内するから楽しみにしててね」
「はーい」
うっすら聞こえるアテさんの叫び声と、いまだサラダをムシャムシャしているヒタキさんをスルーしながらあいさつを交わし、階段を駆け上がる。何となく、本当に何となくなんだけど、ジルとアテさんの二人は結構気が合いそうっていうか似た者同士っていうか、そんな気がする。ま、仲良くしてくれたらいいよなぁ……無理かな?
(ま、いいか。嫌でもずっと一緒なんだし)
そのうち打ち解けてくれりゃあいいや。そう考えるようにして、異次元ポケットから304号室の鍵を取り出しコートのポケットに収める。
304号室は4階っと……。
ポケットに突っ込んだ手で鍵を弄びながら、僕は階段をゆっくりと登っていった。
今回は特に兵器も出てきませんでしたし、実に平和な回でした。はい。
毎週更新はムリっぽくなってきた今日この頃ですが、できるだけ定期に更新できるよう頑張ります。
(2週間ぐらいのスパンですかね、そのぐらいでいける気がします)
なお、書式が今回より変わりました。艦これ二次小説と同じアレです。
読みにくかったりしたらドシドシご意見をお寄せください。できる限り改善していきますので(・∀・)
ではではー。2週間後に更新できたら……いいな( ´-`)




