5話 演習の決着、行方知れずの機動小隊
9000文字(恐怖
Nexus7の謎エラーやら寝オチやらいろんなお仕事がダブルどころかトリプルブッキングしたために遅れました。すみません。
はやくお仕事に一段落つかねぇかなぁ・・・・つかねぇなぁ・・・・。
「―――了解した。いや了解したくねぇが・・・とにかく戻れ。全速力!以上」
「・・・・駄目だったかぁ」
先遣隊として出撃した急ごしらえの隊が向かった林とは反対側、もうひとつある広大な林の開けた土地に停車した数々の車輌群。
いまは迷彩色のシートが被せられた濃灰色の巨大な重戦車をはじめとして、兵員輸送車、随伴歩兵からなる「モール機甲中隊」と、オートバイを主に運用する「ウィーゼル機動小隊」の混成部隊の姿がそこにあった。
「まぁ、確かにあんなちっちゃい子に壊滅させられるなんてねぇ・・・普通は思わないだろうしさ」
「・・・・・」
「なんてったって相手は武神、しかも最高位の。字面からしてもうムリゲー。あはは」
「・・・・ったく、意味わかんねぇな」
「だよね」
何かをあきらめたように肩をすくめるウィーゼルと、先遣隊の壊滅の報せを聞いて眉間に皺をよせたままのニール。
少し頑なになりすぎるきらいのあるニールに、それから適度に力を抜かせるウィーゼルは、コンビとしてはかなりよいタイプであろう。
「どうする、ニール。ここは思い切って攻めちゃうのも手だけども」
「・・・悪手だな。威力偵察モドキの部隊を単独で撃滅できる武神サマにしちゃあいいマトになるだけだろうさ」
「あり得る」
苦笑するウィーゼルに苦笑を返しつつ、次の作戦を練る。
本隊を温存したまま歩兵部隊を主とした先遣隊によって先制攻撃を加え、林から狩り出して討ち取るという当初の作戦が潰えた以上は、もっと別な作戦を立てざるをえないのだ。
そう、相手が最も嫌がりそうな、最悪にみみっちい作戦を、である。
もともと無駄に礼節やらプライドやらに固執する(と、2人は思っている)騎士なんかには縁のない脳筋軍人2人が集まったところで、勝ちにしかこだわらない泥臭い戦術ぐらいしか浮かびっこないのだ。
「ここは獣道すべてに落とし穴を掘る、とか?施設科出身のヒトもいたでしょ?」
「いや、却下だ。そもそもそれだけの対処ができる時間はもうない。それよりかは進軍しながら地雷を仕掛けていったほうがまだ早い」
「うーん・・・でも混戦になると味方に被害が出るかもしれないよ。ならいっそのこと、兵をいくつかに分割して藪の中に潜ませておくほうがよくないかな?」
「なるほど、それいいな。だが戦車類はどうする」
「あっ・・・」
「えっ・・・」
そんなこんなでも、だんだんと相談は形になっていく。
それから数分後、小さな武神が狩場にやってくる寸前に、布陣は無事に完了した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
歩いてる、なう。
・・・・いや、これぐらいしか言う事がないからさ。
潰走していく2台の輸送車の轍をたどって歩く事10数分。
そういえば、ちょっと頭がボーっとしてきた気がする。なんでだろう・・・歩きすぎたかな。
問題ない程度だし、気にしないでおこうかな。あんまり気にしすぎてもいいことはないし。
・・・・――――コ―セ――。
「・・・・ん?」
いま、何か聞こえたような。
どこかで聞いたような女の人の声。―――ああ、けさ夢に出てきたあの声だ。
耳をすましてみても、辺りを見回してみても、それっきり何も聞こえないし誰もいない。・・・・むぅ、疲れてるのかな?
だとしたらまずいなぁ・・・宿に帰ったらすぐ休もう。
「それよりも先に、まずは目の前の演習、演習っと」
轍を追いかけていった先は、さっき僕がいたところよりも若干木がまばらになった林。
木がまばらになったかわりに地形の起伏が比較的あって、さらに背の低い低木がいくらか密集した茂みが木々の間を埋めている。
正直、さっき僕がいた林よりも数段やりづらい。それに今度は僕が攻める側な以上、守る側に比べてかなり不利にならざるを得ない。
(ゲリラ戦を挑んできそうな地形・・・いや、でもあっちには戦車があるからそれを捨てるような戦術はしない・・・む、でもやっぱりしそう)
ウィーゼル小隊長もなんだか抜け目なさそうだったしなぁ。やっぱり戦術で攻めてくるタイプの人なんだろうな、たぶん。
でもいいか。このセカイの、この時代の戦術をこの目で見られるんだから。もともとそれが目的だったし。
さっ、では行きますか。
新たにベルトで背負った特殊な狙撃銃と、手元のマシンピストルを発射可能状態にした僕は、林の奥へと進んでいく。
レッツだゴー!
・・・・・・・・・・
・・・・・・
「・・・・・おい、来たぞ」
「・・・・・・知ってる」
「・・・・・見えてんのか」
「・・・・・観測手ナメんな?」
「・・・・・・悪ィ、今のお前を舐めるとか無理だわ」
「・・・・・普段でも願い下げだ」
「・・・・・・・違いねぇ」
5メートルほど盛り上がった地面の上、2つの緑色の塊――いや、人の目を欺瞞するためにそこらへんの草やら土やら枯れ葉やらを迷彩服の上に貼り付けて、物言わぬ物体のごとくその場で伏せっている男2人。
ひとりは小さな三脚の付いた軍用双眼鏡を眼前に据えて、もうひとりは手で両手で支えた狙撃銃の側面に斜めに取り付けられたスコープから、小さな人影を見つめていた。
両者とも、小さく軽口を叩きあいながらでも筒先はぴったりと人影の方向へ向けたまま。長年の訓練によって培われた、熟練した技術を感じさせる。
「・・・・・ネリス。距離は」
「・・・・距離90。60までにいけるか、セブ」
「・・・・・狙撃手ナメんなよ」
「・・・・・案ずるな。世界が滅びようと絶対に舐めん」
「・・・・・・・・」
迷彩色にペイントした顔で一瞬ギロリと双眼鏡を覗き続けるネリスを睨み付けたセブは、またすぐに視線をスコープへ。
一瞬で、藪を進むために山刀を振り回す小さな黒い標的を2.5倍に拡大された視野に収める。
「・・・・・よし、そろそろ」
「・・・・・・距離70。いけるか?」
「・・・・・・・シュー」
「・・・・・・・ヤー」
規定の合図を交わしたのち、十字のレティクルを小さな人影の心臓にあわせたセブが、引き金に掛ける指に力を込める。
不可避の銃弾を放った銃声が、響き渡った――――
「・・・・は?」
「・・・・・・げぇっ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
ぱぁん、スカーンと。
少し間延びした銃声とともに僕めがけて飛んできた銃弾をマチェットで弾き飛ばし、藪こぎ続行。
いちいち道を探して歩くのも面倒なので、こうして藪を切り開いて進んでいくことにした。
そりゃトラップだとかがあるかもしれないけどさ、たぶん向こう側もトラップはある程度の道に仕掛けていく可能性が高いからこっちのほうが安全と言えなくも・・・・ない。たぶん。よくわからない。
大体の場合、こうやって安直に考える僕みたいな軍人さんが真っ先にトラップに掛かっていくんだと思う。こわいこわい。
そんな事を考えながら、また聞こえた銃声から弾丸が飛んでくる方向を推測。
マチェットを振り抜くと、カツーンという快音とともに銃弾が弾き飛ばされて、後ろにあった木にめり込んだ。
「むぅ、うっとうしいなぁ・・・あそこからかな?」
弾丸が飛んできた方向、適当に目に付いた小高い段差になった場所にマシンピストルを向けて、狭い範囲に2、3発撃ちこんでみる。
・・・・お、ビンゴ。
小さく断末魔の声が聞こえて、ガサガサと物音がしたのちに静かになった。
どうやら、運よく銃弾が相手の急所に命中したらしい。2人ぐらいいたみたいだけど、多分ヒットできたのは1人だけだな。
ま、いいんだけどね。僕が狙ってるのは相手部隊の隊長なんだから、別に全ての兵士さんを無力化する必要はない。
まぁ、さっきはちょっとだけ遊ばせてもらったんだけどさ。ちょっとぐらいならだいじょぶだいじょぶ。
「きょーうもーいいーてーんきー♪」
僕は、小さく小さく歌いながら、奥へ奥へと進んでいった。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
「あ、戦車」
あれから10分ほど林の中を歌いながらウロウロして、潜んだ兵士さんを見つけた端から無力化していった後。
なんと、だいたい70メートルほどの距離から、林の中の少し開けた窪地に停車している重戦車を発見!
・・・・でも、誰もいないんだけど。
(エンジンもつけてないみたいだし、見張りに立ってる人も見当たらないし・・・無用心な)
いくらなんでも少し怪しかったので、様子を見てみることにした。
手近にあった大きな雑木によじ登る。
かなり高い場所に張り出した太い枝の上に立って、暗視ゴーグルを装着。
(どれどれ、この周りには誰かいるかな?・・・お、いるいる。やっぱりね)
視界の中に映し出されたのは、藪に潜んだいくつかの白い影。オートバイは見当たらなかったけど、少し遠くに狙撃手らしい影も見える。
危ない危ない。僕がもうちょっと近づいていたら、また狙撃の標的にされるところだった。まだ気付かれていないから、おそらくまだ大丈夫。
手にあったマシンピストルを消した僕は、背負っていた狙撃銃を手にとって、構えた。
ストックだけはさっき僕が使った狙撃銃と同じ形をしているけど、全長はずっと短い。そしてなにより特徴的なのは機関部から突き出た大きな消音器。
この狙撃銃は少々特殊だ。使用する9×39mm弾の弾丸には貫徹力にすぐれる鉄芯入りのものが使われているし、工夫がされた火薬の分量のおかげで弾丸の速度が音速を超えず、消音器の効果が限界まで引き出されている。
ちなみに、弾丸の速度が音速を超えてしまうと先端部分から衝撃波が発生して、これまた大きな音がしてしまう。だから消音式の銃に使われる弾薬は速度が重要になってくるんだ。
閑話休題。
で、木の上でなんとかバランスを保ちながらスコープを覗き込んだ僕は、視界の中の逆Vの字をさほど離れていない狙撃手さんに重ねた。そして即、発砲。
じゃこっ、という小さな作動音と共に空になった薬莢が自動で排出され、同時に視界の先の狙撃手さんも崩れ落ちた。
「ヒット。・・・観測手はいないみたいだな」
単独で潜むことで機動力を確保してたのかな。よくわかんないけどラッキー。
まだ気づいていない様子の白い影4人ぶんも―――双眼鏡を構えた兵士さん2人に狙撃手さん2人だったけど、やっぱり同じように狙撃して排除した。
たぶん射撃音なんてまったく聞こえてないだろうから、ビックリしただろうなぁ。うまいこと連携できてないみたいだったし、無線機もたぶん無いから報告が上がった心配もなさそう。
辺りに誰もいなくなった事を確認して、幹に固定したワイヤーをつたって地上に降りる。・・・・ん?普通に幹を滑り降りればいいじゃんかって?ふふふ、残念。自慢じゃないけど僕は木を登ることはできても降りることは壊滅的にムリ!あんな高いところから滑り降りるとか絶対ムリ!!
というわけで、安全にワイヤーと刀をはさんでいるベルトに取り付けてある金具を利用してスルスルと降りる。ちなみに、さっき輸送車を強襲するときも微妙に使ってたよ。・・・こらそこ、高所恐怖症とか言わない!
近接用のマシンピストルを文字通り消してしまったので、手元の消音狙撃銃のセレクターをセミオートからフルオートに切り替えて、出会い頭にも対応できるようにしながら戦車へと向かっていく。
見たところ、戦車には何かしらの仕掛けがされているわけでもなく、ただそこに放置されているだけのように見えた。
変なトラップや地雷が無いことを確かめて、砲塔の向きから死角を推測しながら肉薄。戦車の側面から副砲塔に備えられたハッチをめざしてよじ登る・・・・
・・・・・あれ、高い。無駄に高いぞこの戦車!
・・・・くぅーっ、手が・・・!
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
一方そのころ戦車の中では、ニール中隊長以下7人の隊員たちが少しだらけた様子で潜んでいた。
「・・・何か変な音がしてませんか?隊長」
「ラゴスも聞こえるか。よし、ベルクマン。見てこい」
「えぇ俺ですか?いくらなんでもそりゃひどくないですかね。ここ敵地も同然なんすよ?」
「構わん。これはお前にしかできない仕事なんだ。・・・やってくれるか?」
「よっし行こうじゃないですか!」
誘導とも言えないような誘導に引っ掛かったベルクマンと呼ばれた男は、意気揚々と後部副砲塔ハッチへ向かう。
「さすがは超弩級被虐嗜好者、チョロすぎる」
「・・・いや、マゾがどうとか言う以前ですよね、ありゃあ」
ニール中隊長の悪どい笑みを浮かべながらの発言に、ラゴスと呼ばれた無精髭の主砲砲手が突っ込みを入れる。
現在車内に残っているのはこのラゴスとベルクマンに、操縦手と機関士兼副砲砲手、そして車長であるニール中隊長の5人のみ。最大乗員の11名の半分以下の人間のみを残し、狙撃や潜伏の心得のある隊員を車輌まわりの監視に充てていた。
これも先ほどウィーゼル小隊長と立てた「作戦」のため。
自分達がこの「要塞」にたてこもり、あの小さな武神をおびきよせて仕留める―――戦車の火力と相手が肉薄するかどうかの運をアテにした作戦とは言えど、今のところはこれしか思い付かなかったのでしょうがない。
しかし、林の中で闇雲に動き回ろうものなら先ほどの先遣隊のように奇襲で壊滅させられかねず、あまり良い手とはいえない。その点のみ見れば、分厚い装甲に守られた重戦車の中にいた方が生存率が高いとも言えるのだ。贅沢は言っていられない。
ニール中隊長がそんなことを考えてため息を吐いたとき、またも外部装甲から音が。
先ほどベルクマンが向かっていった、後部の銃塔の方からである。
「おい。ベルクマンはどうした?戻ってこんぞ」
「そうですね・・・おーいベルクマン、異常無かったら戻ってこいよ」
「・・・・・・」
返事がない。
「ん?・・・・おいラゴス。ベルクマンはまだそこにいるのか」
「は?いえまあ、さっき足が見えてた・・・・あれ、いない?」
先ほどまでベルクマンがハッチから身を乗り出すようにして車外を眺めていたため、ベルクマンが無駄に長い足を足場に掛けているのを見ることができていたのに、いまはそこに誰もいない。
ベルクマンが許可なく車外へ出たか、それとも何かあったのだろうか。
万一に備え、乗員の自衛用に装備されている短機関銃を構えながらハッチに向かう。
しかし、開きっぱなしのハッチから顔を出そうとした瞬間―――――
かつてない衝撃が、彼の顔面を襲った。
・・・・・・・・
・・・・・・
び、ビックリしたぁ・・・!
苦労して車体をよじ登って副砲塔のハッチに手を掛けようとした、まさにその時だった。
唐突に副砲塔のハッチが跳ね上がり、車内から柔和な顔立ちの美青年がひょっこりと顔を出したのだ。
お互いに驚いて、硬直したのもつかの間。先に動いた僕が消音狙撃銃を青年の額に突きつけた。
実にこの間2.5秒。早ワザ万歳。
一瞬何かを考え込んだ青年が両手をあげて投降すると、ジェスチャーで黙ったまま車外に出るように指示。
エンジンがカットされて冷え切ったエンジングリルの上にうつ伏せの状態にすると、銃を突きつけたまま両手を背中に回してワイヤーで縛り上げる。足も同様、きっちり縛って固定した。ついでに猿轡も噛んでもらう。
そしてこの作業に1分かかってしまった。いや、だってこの人が縛られるたびに変な声を出すから気持ち悪くて気持ち悪くて。顔はめちゃくちゃカッコいいイケメンさんなのに、縛っていくたびに息が荒くなっていくとか・・・もう気持ち悪すぎて手間取った。
急いでワイヤーでぐるぐる巻きにした青年を戦車の下に蹴落として(あまりに気持ち悪かったため)、開きっぱなしのハッチに駆け寄る。
む、車内から声が・・・・あれ、この声ってニール中隊長?
今回の相手部隊の総大将がいちばん格上のニール中隊長だから、・・・・ごめんなさい。この演習もらった。
どうやら青年がいなくなった事にようやく気がついたらしく、ニール中隊長ともう1人が様子を見に来たらしい。
何かの銃らしいコッキング音と、2人ぶんの足音が近づいてくる。
「・・・召喚魔方陣、機動」
小さくつぶやいて、手の平の上に武器を召喚する。
召喚されたのは、穴ぼこの筒の両端に六角形のナットを取り付けたような、変な形の手榴弾。緑色をしてちょっとオモチャっぽいけど、実際はずっしりと重い金属のかたまり。
点火レバーを握りこんだままで2つ差された安全ピンを力いっぱい引き抜いて、準備完了。
あとはこれをニール中隊長が出てくる前に、
「投げ込めば―――っ!!?」
おもいっきり振りかぶって、投げ込むというよりもむしろ床面に叩きつけるような感じに投げたその手榴弾は、今まさにハッチから顔を出そうとしていたニール中隊長の顔面中央に直撃した。
・・・・いや、わざとじゃないんです。に、ニール中隊長が悪いんです。
けっこうな重さを持つ手榴弾が、かなりの勢いで顔面に直撃したことで気絶したのか、ニール中隊長が力なく車内に落下する。ああごめんなさい。なまんだぶなまんだぶ。
とりあえず、耳をふさいでハッチから素早く離れた。
その瞬間、車内から耳をつんざくような爆音と、昼間であってもなお眩しい真っ白な光があふれ出す。
耳をしっかりと押さえている僕もかなりきついと感じる爆音。これを閉め切った鉄の箱の中でいきなり聞かされたら、さぞかし驚く事だろう。というか気絶するな。
「・・・・・・ふーっ」
数秒後、ようやく爆音がおさまった。
もうあとは簡単。暗視ゴーグルを着けたら、煙が立ち込める車内に侵入して、ハッチの真下に転がっていたニール中隊長を『射殺』。
そこからもあっけなかった。車内にいた4人はみんな無抵抗で(閃光手榴弾をくらったんだから当然だけど)、瞬くうちにライフル弾の的になっていった。
楽ちんでいいけども、もうちょっと手ごたえがほしかった。・・・・じゃぁ閃光手榴弾なんて使わないで突っ込んでいけばばよかんじゃないかって?
・・・・返す言葉もございません。やればよかった。
ひとまず事前に教えられていたMSPS戦に勝ったときの手順を踏んで、試合終了の合図である信号弾を打ち上げる。
ちなみに信号弾と発射器はさっきワイヤーで縛って車外に放り捨てておいた気持ち悪いイケメン君が持っていた。なぜ持っているのかわからなかったけど、ちゃんと試合終了を示す赤色の信号弾が装填されていたのでありがたく使わせていただいた。
信号弾を打ち上げたら、今度は車内にあるMSPSの『仮死モード』のスイッチをオフに。これで、さっきまで銃弾をうけて気絶していた兵士さんたちが動けるようになる。車内の4人も、すぐに起き上がって動き始めた。
僕の後ろにいたニール中隊長も、頭を押さえながら立ち上がる。
「おはようございます、ニール中隊長。なにかご感想を」
「・・・・・負けたのか」
そして、ぽつりとつぶやいたのはそんな言葉。
いかにも不覚、というか想定外、というか。そんな感情が込められたつぶやきだった。
むぅ。ニール中隊長、なんだかんだで僕がクロノミコトっていう事を信じてなかったんだなぁ・・・やっぱり僕がちっちゃいからかな?いずれにせよあんまり面白くはないや。
どうしてやろうかしらん。神撃魔法でもって戦車を一瞬でスクラップにするとかどうかな・・・・いや、やっぱりやりすぎか。できないこともないんだけどさ?
軍の車輌をデモンストレーションで破壊するとか、怒られるで済んだら奇跡に近い。
「確かに我々にも慢心があったことは認めるが・・・だが、俺たちはこんな子供に負けるほど弱かったか?」
「僕、子供じゃないんですけど」
「・・・・クロノミコトか。何億年と前から生きていると聞くが・・・老人ではなかったのか」
し、失礼な。僕はお爺さんじゃないやい。
まぁ確かに、ずっとずっっと昔から神界で生きてるんだけどさ?僕ら神族は不変の体を持っているから、何年たとうが見た目は全く変わらないのだ。
「武神というのは、かくも強いものなんだな・・・」
「いえまあ、今回はたまたまみたいなものでしたし。それに僕は武神といってもそんなに際立った能力があるわけではありませんよ?」
「しかし、武神と言うからには強いのだろう?」
強いとな。むむむ、抽象的な。
僕は『どんな武器でも召喚できる』という能力を持つだけで、あとはほとんど神撃魔法と魔力による身体強化、あとは様々な魔法での力押し。
僕だって、魔力が尽きればただの子供なみの力しか持っていないのだ。・・・たぶんだけど。
「正直に言ってしまえば、僕自身でも自分にどんな能力があるか分からないこともありますからね。とりあえず確実なのは、武器が召喚できるってことですか」
「・・・・・そんなものなのか」
「そんなものです」
人生ではじめて神界から出てきた今、何が起こるのか正直自分でもよくわからない。自分を使った人体実験・・・・みたいな?
ううむ、なんだかしみじみ。
しばらくして、林の各所で倒れていた兵士さんたちや擱座していたり待ち伏せしたりしていた車輌類が、信号弾をたよりに続々と集結してきた。
・・・あれ、でもウィーゼル小隊長の部隊だけが帰ってこない。
無線での呼び掛けにも応じず、居場所もつかめないとのこと。
何かやばそう。
MSPS戦で今まで人命にかかわるトラブルが起きたことが無いというものの、いつまで待っても帰ってこない上に無線の応答もないとなれば話は別だ。
すぐに、このめちゃくちゃ広い演習場を捜索するための隊が編成されて出動していく。ちゃっかり僕も付いていくことにした。僕の『魔力走査』の本領発揮だ。
「こちらニール機甲中隊・・・わからない。・・・そうか、頼んだ。・・・アウト」
「どうしたんですか?」
「いや、ここら一帯の管轄の隊に増援を頼んだ。どうも嫌な予感がする、用心していった方がいいぞ」
「そうですか」
最初の戦闘でいろいろあって破損したオートバイ部隊の一部と、鈍足の重戦車を演習場の入口付近で待機させる。出動するのは装軌輸送車のみで編成された捜索隊。
1台あたりに乗っているのは、荷台に小銃と軽機関銃でフル装備した兵員を2人ずつと、前部の車長席と操縦席に座る操縦手と車長さん。メンバーの中には、万一ウィーゼル小隊の中に負傷者が出ていた場合に備えて、治療のための魔術の心得のある兵士さんも含まれているらしい。
計4人×4台で12人。まあ、捜索が任務だし別に問題ないと思う。
ニール中隊長に聞いてみれば、ごくごくまれにMSPS戦の最中に野生の獣やらに襲われて立ち往生する隊もあるんだとか。
ああ、なら魔物をハンティングする程度の気分で行っててもいいのかな?ちょっと楽しそう。
よーし、じゃぁちゃちゃっとハンティングして、ちゃちゃっと宿に戻りますか!
はーやーくーこーいーこーいーもーんすたぁー♪
・・・・・まあ、すぐにそんな場合じゃなくなっちゃったんだけどね。
はぁ・・・。
今回出てきた武器は、(登場順で
・T-35(既出。重戦車
・BMW・R-75(既出。バイク
・スチェッキン・フルオートマチック・ピストル(既出。マシンピストル
・M1Dガランド(既出。狙撃手コンビのの狙撃銃
・VSS ヴィントレス消音狙撃銃(クロが使った消音狙撃銃。初出
・短機関銃(ぶっちゃけ未定。また解説します
・M84グレネード(スタングレネード。初出
です。
VSS消音狙撃銃はすごいですよ?
発射される弾丸の初速が音速を超えず、衝撃波が発生しないためにそのぶん静か。
そして消音器の性能と相まって、発砲時には機関部が作動するわずかな音しかしないんだとか。すげぇ。
M84グレネード・・・というかスタングレネードは、閃光音響式手榴弾とも呼ばれ、非殺傷の武器として使用されます。通常の手榴弾と同じ要領で投擲し、発火するとものすんげー音量の爆音と、一気に燃え上がらせたマグネシウム末によってものすんげー明るさの閃光を発します。
この爆音と閃光で敵を制圧したり、敵をおびき寄せる陽動に使ったりするそうな。なんか原理だけ聞いたら作れそうですけどね。なんとなく。
来週の更新は通常通り・・・だといいな。
お仕事がんばります(泣




