4話 演習開始、林の中でレッツパーティー
今日はちょっと少なめ。って言っても5400字ありますがね。
いや、本来は全てこの字数でいく予定だったんですよ・・・8000字つらたん(´・ω・)
※10,000ユニーク&60,000pv、本当にありがとうございます!
これからも精進して参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします!!
「ふむ・・・これで5人目になるんですかねぇ」
猿轡をくわえ、針金で両腕両足を拘束された神官服の男を見下ろしながら、普段のスーツ姿のジルがつぶやく。
ここは商業区にある、5階建ての宿屋の屋上。
換気と採光に使われる天窓から屋上へ上ってきたらしい男の背後には、丁度下のフロアの床から天井までの長さがあるハシゴが転がされている。
「それにしても、随分といい長モノを持っていらっしゃる事で」
先ほどまで男によって屋上の縁から大通りへと向けられていた細長い半自動式の狙撃銃を手で弄び、拘束されもがく男の右目へと気まぐれに銃口を押し当てた。
一瞬だけ抵抗する素振りを見せた男が、急に静かになる。よく見れば顔からは血の気が失せ、体は小刻みに震え続けているではないか。
(つまらない・・・これで暗殺者など、虚仮おどしもいいとこですねぇ)
銃口を離した瞬間にまた暴れ始めた男の顎を鉄芯入りのコンバットブーツの爪先で蹴り上げる。
顎骨が砕ける感触と共に男が一瞬で静かになったことに満足しつつ、片手間に男の腰のホルスターに収められていた両刃のコンバットナイフを引き抜いた。
「ほう。これはいいものをお持ちで」
セレーション(鋸歯)ブレードつきの大ぶりなマットブラックのナイフはこの男の私物らしく、手入れが行き届いておりとても使いよさそうだ。
グリップ後端のキャップを外して中に何も入っていないことを確かめたジルは、男の腰のホルスターを慣れた手つきで取り外すとポケットにそれをねじ込んだ。
「いただいておきます。後でお仲間さんの拷問に使えそうですので・・・・って、聞いてないですねぇ」
下顎を蹴り砕かれた激痛に耐え切れず、白目を剥いて涙を流す男を呆れたような目で見下ろして、ジルは狙撃銃の安全装置を無言で外す。
そして銃口は、ふたたび男の右目へと。
「このまま野放しにするのも馬鹿らしいので、貴方とはここでお別れです。・・・はい、さようなら」
特に何の感慨もなく引き金を引き、3km先においても殺傷能力を持つ弾丸が男の右眼窩から容易く脳幹を貫く。
弾丸は脳を貫くついでに頭蓋骨の内圧を急激に高め、スイカが爆発するように脳漿をあたりに撒き散らさせた。
「さて、そろそろ『狩り』にも飽きてきましたし・・・マスターの所まで行きますかねぇ」
コンバットブーツに付着した脳漿を神官服で拭き取り、狙撃銃を首無しの男の横に投げ捨てたジルは、すぐ男にに背を向け、屋上の縁から飛び降りる。
そして瞬時に人からカラスへと姿を変え、飛び去った。
首の無くなった男の死骸のみが、それを見送った。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
武器をあらかじめ召喚したのち、林の中に見つからないようにカモフラージュまでして隠してから数分。
林から出て多砲塔戦車のもとへと戻ってみると、すでに整備やらその他作業やらを終わらせた作業服姿の兵士さんたちが何人も集まっていた。
中央にはウィーゼル小隊長の姿が。あ、そういえばミーティングやるって言ってたから、今からやるのかもしれない。
「おっ、クロ君ご苦労様。こっちこっち」
僕に気がついたウィーゼル小隊長が、自分のそばに来るよう手招きをした。
とりあえず行ってみる。
「はいみなさん、紹介します。こちらがイース副長曰くの『最高位の』武神さん、クロノミコト通称クロ君でーす!はいみんな拍手ー」
・・・しーん。
僕の肩に手を置いてそう紹介したウィーゼル小隊長だけど、目の前の兵士さんたちは黙ったまま。唯一、ニール中隊長だけが苦笑していた。
「・・・おい」
みんな黙りこんで何もしゃべらず非常に気まずい空気のなか、誰かが不機嫌そうな声を投げ掛けてくる。
声のした方を向いてみると、そこにはガラの悪そうな青年がひとり。
顔自体は悪くないんだろうけど、暗い茶髪に鷹のような鋭い目つきが目立って非常に人相が悪い。身長はウィーゼル小隊長と同じぐらいかな。
「イース副長の情報がいつも確かなのは知ってる。だがこいつは何だ?武神なんて言いながら、ただのガキじゃねぇか」
ぐさっ。
が、ガキって・・・
「そんな貧弱な腕で武器なんて持てるのか?えぇ?」
ぐさぐさっ。
「鍛えてもねぇようなガキが俺たち全員の相手をするだぁ?バカ言うな。俺らは何年間鍛えまくったと思ってる」
ぐさぐさぐさっ。
鍛えてませんはい。最後に鍛えたのってもう覚えてない。
「今ならまだ遅くない。ガキはとっとと帰って鍛え直して来るんだな」
ちーん。
この人こわい。
あふれでる不良オーラが僕の精神力をガシガシ削ってきます、何とかしてください神様。ああ僕も神様だった。救いがないよぅ。
「(・・・大丈夫さクロ君。ああ言いながら、あいつなりに心配してるんだよ)」
僕を気遣ってか、耳もとで小声でフォローしてくれるウィーゼル小隊長。だけど大丈夫。それでも十分に怖いです。
「まぁ、その件については戦ったあとで。何事もやってみなくちゃ分からないでしょ?」
「・・・・フン。すぐに熨してやるさ」
そう言って、ジロリと僕をひと睨みして下がる怖い青年さん(仮)。
ウィーゼル小隊長はそれにももう馴れているのか、ちょっと苦笑しただけ。そしてすぐに平然とミーティングを始める。
「さて、では今日のMSPS演習のミーティングを始めよう。今回の演習はクロ君1人対中隊アンド小隊のタッグの戦闘になる。勝利条件は相手部隊の指揮官を討ち取ることで、特に武装の制限はなし。クロ君も全力でいくっぽいから皆も手加減無しでよろしく。・・・ここまでで質問あるひとー」
誰も手をあげない代わりに、みんな困惑するか苦笑するかしていた。
その中で、ヒゲもじゃのでっかいおっちゃんが口を開く。
「おいおい・・・またこの間の『坊っちゃん』みたいなのをやれってか?いつからMSPSは子供のアトラクションになったよ」
「?」
「・・・あー、うん。クロ君にはまた後で説明してあげるね」
そう言うウィーゼル小隊長も苦い顔。
『坊っちゃん』、ねぇ。MSPSをアトラクションにしてたって・・・どういうことかしらん。
「まぁ、今回は本当に全力で行こう。『坊っちゃん』とは違って、イースのお墨付きだからね。油断は禁物さ」
「へいへい・・・わーったよ。全力ね」
仕方なさそうにおっちゃんが下がるのを確認して、ミーティング続行。
「ではシステムの確認。『MSPSフィールド』の担当車輌はいつも通りの35型重多砲塔戦車。ニール、確認はオッケー?」
「大丈夫だ。仮死モードもオンにした」
「仮死モード?」
なんだろう。はじめて聞いた単語だ。
聞き返すと、これにもウィーゼル小隊長が答えてくれた。
「仮死モードっていうのはMSPSの機能のひとつで、MSPS戦で殺傷力ゼロの弾丸なりナイフなりの攻撃を受けたときに、一定以上のダメージを受けると行動不能になるっていうものなんだ。その他には負傷状態とかも再現されるよ」
「なるほど」
ケガを一切せずに、死亡負傷ありのリアルな演習ができるんだな。なるほどなるほど。
「じゃぁ後は特に何も打ち合わせる事は無いかな。質問は?ない?よし、じゃぁ始めようか。各自解散!5分後に状況開始!」
「「「「おう!」」」」
ミーティングおわり。
よーし。じゃぁ豪華な本気のサバイバルゲーム、始めますか!
僕は兵士さんたちとは反対側、さっき武器を隠しておいた林のなかに隠れる。
うひひ、どんとこい。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
林のなかに隠れてきっかり5分。
合図の信号弾が上がるとともに、状況開始。
「えーっと、さすがに林のなかに入るのは見られちゃったからな。結構きたね」
開始と同時に、林のなかをさらうつもりなのかこちらに向かって走行してくる3台の装軌輸送車。随伴してくるバイクも2台。
輸送車後部の荷台には兵員が・・・4人か。
バイクの兵士さんも輸送車の兵士さんも、半自動式の小銃とサブマシンガンを持ったフル装備。ベストには手榴弾が下げてあった。
僕はそれを狙撃銃のスコープごしに眺めながら作戦を立てる。
「やみくもに撃つのもちょっとなぁ・・・よし。まずは輸送車の運転手さん、おやすみ」
逆Vの字の赤いレティクルを先頭の輸送車の運転手さんにあわせて、発砲。
排莢口から弾き出された54mmのリムつき薬莢が下草に落ちるのとほぼ同時に、運転手さんが崩れ落ちる。
そのまま、立て続けに狙撃。
輸送車の車長さんと随伴していたバイクの運転手さん、あとサイドカーに乗ってる軍人さんも無力化した。
これで輸送車を足止めして、バイクも一台無力化できたな。
「さて、どうなるか・・・おっ、散開した」
密集しているとやられると判断したのか、それぞれの車輌が散開して、一気にこちらへ寄ってくる。
機動力のあるバイクは林を迂回して横に回り込もうとしているらしく、全速力で別の方向へと走り始めた。
「そうはさせませんとも」
狙撃銃のスコープで距離を測りながら、脇に置いてあったもうひとつの武装・・・グレネードランチャーを手に取る。
逆さにしたコウモリのような形をしたグリップ一体型の木製銃床をつかみ、中折れ式のぶっとい40mmの銃身を開く。
そしてこれまた巨大な40mmてき弾を詰め込み、銃身を閉鎖した。
バイクが走っていく方向に先回りして照準し、発射。
バイクの目と鼻の先に着弾したてき弾は地面を大きくえぐって、クレーターを作る。クレーターはバイクのタイヤをガッチリとくわえこみ、無理やり停車させた。
減速して、すんでのところで投げ出されずに済んだ乗員2人ももちろん狙撃。
もうこれで目の前には輸送車しか敵がいなくなった。
ならばここからは肉薄戦。
木登り木登り。
・・・・・・・・
・・・・
「・・・・野郎。やりやがるじゃねぇか」
苛立ちを隠そうともせずに、目付きの悪い茶髪の青年が毒づく。
それもそのはず、先ほどまでそこにあったバイク2台に輸送車5台の機動部隊の戦力が早々に削られてしまったのだ。
『敵』の潜む林に入ったばかりというのに、この状況は非常に不味い。
前方の車輌と連絡を取り合いながら、前進を続ける。
と、そのとき。
「ん?」
自分の隣に座る操縦手が、妙な声をあげた。
「どうした」
「・・・いや、何でもねぇ。上の方に鳥か何かが見えただけだ」
「・・・・そうか?待て。ちょっと止まれ」
前回の演習で苦い経験をした青年は、いちど車列を止めて上方に注視するよう下令した。
ーーーーそれが過ちであることにも気付かずに。
「・・・・・確かに。何もないな」
そして、また車列を前進させるべく無線機のスイッチに手を触れた、まさにその時。
「いてっ・・・・何だぁ?」
車輛後部の荷台に乗った兵士の1人が声を上げる。
同時に、視界が白く染め上げられた。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
木登りしてから3分ほど。
僕が予測していた相手の進攻ルートどおりに進んでくれた輸送車のみなさんに感謝しつつ、先回りした道の先で、道全体をトンネルのように覆う大木の太い枝の上から下を監視。
葉もよく付いている枝だったので、僕の姿も下からは見えづらくなっている。
いま、下を監視する僕の片手には昨日神殿で使ったマシンピストル、もう一方の手にはズッシリ重い円筒形の手榴弾。そして顔には赤外線ゴーグルと口元をおおうガスマスク。
手榴弾には白い文字で「WP」と書かれている・・・つまりこれは白リン式の発煙手榴弾。煙幕を張るための手榴弾だ。
点火レバーを固定する安全ピンは引き抜いて、人差し指に引っかけている。
(おー、きたきた。輸送車が3台・・・まずは最後尾の車輛から無力化しようかな)
僕の真下を、1台目の輸送車が通り過ぎる。
5メートルほどの間隔を開けて2台目も。そして3台目・・・・げ。
人差し指から安全ピンが抜け落ちてしまった。つい、つかもうとして体を動かしてしまう。
「・・・ん?」
「どうした」
うおぉぉう。バレたかな?車列が止まって、そろって上を警戒し始める。か、かくなる上は力押しで脱出を・・・ってああ、手榴弾どうすんだ!ピンがないから、いま手を離すとマズイ!
・・・・む、でも待てよ。車列が止まったのって、これチャンスなんじゃない?
下を見る。
あ、もう走り出すかな。タイミングを逃しちゃマズイ。
急いで点火レバーを手の中で外し、適当に手榴弾を投げ込んだ。
「いてっ・・・何だぁ?」
荷台にのっていた兵士さんの頭に直撃したけど問題なし。
1秒とたたずに発煙剤である白リンが炸薬で撒き散らされ、直径30メートル弱が真っ白な煙に包まれる。
「ぐあッ!?・・・・ゲホッ、ゲホゴホッ!な、何だこれは!!」
赤外線ゴーグルのスイッチをオンに。
完全に立ち往生した輸送車の車列と、車上でいきなりの煙に混乱する兵士さんたちが白く視界に浮かび上がった。それを確認して、あらかじめ木にしばりつけておいたワイヤーをつたって地上へ。
真下にあった輸送車の荷台に降り立つと同時にマシンピストルをフルオートで撃ち散らし制圧して、荷台に乗っていた兵士さん4人全員を無力化。ようし、楽勝。
マシンピストルの弾倉を交換して、ボーッとしていた運転席側の車長さんと操縦手さんもそろって道連れに。
2人とも崩れ落ちたのを確認して、次の車輛に取りかかる。
・・・・って、あれ。逃げられた。
仕方ないか。けっこうハデにやっちゃったし。
全速力で林の外へと離脱していく輸送車を、僕は赤外線ゴーグルごしにしばらく眺め続けた。
さーて、でもこれで敵さんの戦力が集中したな。
これからはもっとハデに行っちゃおう。ふふふ。
いろいろと兵器を出しすぎた(´・ω・)
本日は諸事情によりタブレットPCでかきかき。つらかった・・・
さて、今回出てきた兵器ですが、登場順に
・M1Cガーランド(神殿の暗殺者の持ち武器。狙撃銃)
・戦車バイク輸送車(既に解説ずみ)
・SVD(クロが林の中から狙撃するのに使った狙撃銃)
・M79グレネードランチャー(クロがバイクを仕留めるのに使用)
・M34白リン手榴弾(煙幕。えげつない煙幕。)
・スチェッキン・フルオートマチックピストル(マシンピストル。既出)
です。
今回特に注釈を入れねばならんのは、最後のM34白リン手榴弾。
Wikipediaで検索するとなんとか出てくるようですが、グロ画像ももれなくついてくるので要注意。本作では、いちおうMSPS戦においては「武器による負傷は一切なし」ということになっておりますので、燃焼する白リンによる火傷も無効になります(実戦ではその限りではない)。
・・・・え?冒頭?
・・・・・・作者はヤンデレも結構好きとだけ言っておきましょう。




