10話 神撃魔法でレッツ尋問
遅れてしまってすみません。
「召喚魔方陣、起動」
唱えると同時に僕の手に魔方陣が現れ、さきほど廊下で使用したのと同じ拳銃が現れた。
銃口にサイレンサーをねじ込む。
「おおー!お兄さまの神撃魔法なんて久々ですー!」
「え?神撃魔法!?」
アテナちゃんとヒタキさんがそう話したとき、『標的』もこちらがしようとしていることを察したらしい。逃げ始めた。
「そうはさせません」
僕は僕らの頭上、ちょうど高い天井の端っこ辺りめがけて掃射した。
シュババババババババババババババッ!!
連続した銃声と共に、天井の一部がみるみるまに蜂の巣になっていく。
全弾撃ちきってスライドがストップしたとき、足に複数発被弾したらしいその『標的』が倒れ、天井を破って落下してきた。
『標的』というのは、もちろんさっきの廊下で僕らをつけてきた暗殺者さん。
白い神官服のような長い服を着ている。もっとも5発以上も被弾したためにそのほとんどが真っ赤に染まっていたけれども。
「『エア・シールド』」
暗殺者さんが落下する地点に魔法でクッションの代用、空気を圧縮した盾を展開して受け止める。
「がッ!!」
暗殺者さんがうめき声を上げる。あ、ちょっとシールド硬かったかな。まあいっか。
「『多重展開。エア・シールド』」
暗殺者さんが着地した地点を取り囲むようににエア・シールドを展開。即製のオリをつくった。
これで逃げられまい。
「さて、こんにちは暗殺者さん」
弾切れになった銃をしまって、できるだけにこやかに話しかける。
「な・・・」
「な?」
「何なんだてめぇは!!ただの能無しのガキじゃなかったのか、ああ!!?」
体格のいい男の暗殺者さんは、いきなり怒鳴り始めた。
『ああ!!?』なんて言われましても。
「そもそも俺はッ!!クソ忌々しい神社の回し者の小娘2人を始末すれば良いだけだったんだろ!!?」
「失礼な、僕はれっきとしたおとk――」
「それなのに!!それなのにこのザマは何だ!!!何がただの小娘だ!!!バケモンじゃねえか!!!」
話をさえぎった上に人を化け物呼ばわりとは。失礼しちゃうね。
「なぜ俺の潜む場所が見切れる!?あの武器は何だ!?なぜ俺が銃弾を受けたッ!!?」
「・・・だってバレバレでしたし」
「ふ、ざけるなぁッ!!!」
叫ぶなり暗殺者さんは真っ赤に染まった神官服の懐から暗殺用の針状の刺突武器を取り出し、僕めがけて突進してきた。
しかし、その攻撃も
ガキン!
「っ!?」
暗殺者さんのまわりを取り囲むシールドではばまれ、僕には届かない。
暗殺者さんが持っていた刺突武器が手から落ちる。
・・・そういえば、おや?
突進できるまでに脚が回復したのか。
よく見れば、神官服がかすかに光を放って魔力を発している。
これは・・・回復系の魔法かな。自動回復とか。
そうか、それで最初に廊下で僕からの銃弾を受けたはずなのにここまで追ってこられたのか。
納得。
「なっ・・・・」
「クロ兄様のシールドを破れるとでもお思いでー?ばっかみたーい!」
ケタケタと笑いながらアテナちゃんが言う。
・・・なんか悪役っぽいなぁ。
まあいいか。
早くジルから報告を聞きたいし、リンドウさんのほうにも暗殺者が送られていないとも限らないから早く戻りたい。
手っ取り早く尋問と行こう。
「さて、暗殺者さん?」
「クッ・・寄るな化け物!!」
また化け物呼ばわりか。
「化け物じゃありません。僕はクロノミコト。5柱の高位神が1なんてやってます」
「クロノミコトだぁ・・・?ハッ!」
僕が名乗ると、暗殺者さんはあからさまに僕をバカにしたように笑った。
「何かおかしかったですか?」
「おかしいも何も!ちょっと魔法が使えるだけのガキが調子に乗ってんじゃねぇよ!!」
そのちょっと魔法が使えるだけのガキにに動きを封じられるってのもどうなんだろう。
ああ、本人が気付いてないなら別にいいか。
「まあ、信じる信じないはお任せします」
「はっ!虚勢張ってんじゃねぇぞガキ!!」
「・・・・どうせ、嫌でもあとで分かりますから」
「あぁ?」
助かるチャンスならいくらかあげるけど。
それも蹴った場合は・・・強硬手段か。
「さて、まず質問をさせてください。あなたは僕らを暗殺するために差し向けられた暗殺者。これに間違いはありませんか?」
そう聞くと暗殺者さんは僕をバカにしたような表情を無理やり浮かべ、
「違うな。俺はバカ面をしたガキを2人始末するのが任務だ」
あーそう、お安い挑発ですこと。
「わかりました。では、暗殺者としてあなたを雇ったのはブルファット司祭。間違いありませんか?」
「知らん」
まぁ、そこまで口はゆるくないか。
「・・・・分かりました。では最後の質問。あなたは自らここで投降し、僕らに拘束された上でしかるべき場所に身柄を移される事を望みますか?」
要は、しばり上げて警備隊とかそういうところに突き出してもいいですか、って意味だ。
チャンス、その1。
だけど。
「ケッ!このクソガキが偉そうにしやがって!!」
「・・・答えは?」
「ノーだ!!やれるもんならやってみな!!クソガキもろともミンチになってやろうじゃねぇか!!!」
自爆する気か?
そうか、さっきから舌を噛み切って自害しないのは神官服の効果ですぐに再生してしまって意味が無くなるからか。
で、再生の限界を超える=完全に死ぬために自爆して自らを粉砕する、と。
うわぁ・・・えげつないな。それは勘弁。
「わかりました。・・・・では、あなたに1度だけ、最後のチャンスです」
「あぁ?」
これこそ穏便に済ませるラストチャンス。
もう後は無い。
「『マジック・キャンセラー』」
僕が詠唱すると同時に、暗殺者さんの周りに展開していたシールドが消えてなくなった。
それもそのはず、『マジック・キャンセラー』は詠唱を妨害、また一つなら発動している魔法を消去できるという効果を持つ。
つまり、いま暗殺者さんは自由に逃げる事ができる状態にある。
・・・・もちろん、僕らに襲い掛かる事も。
後ろのヒタキさんもその事に気がついたのだろう。わずかに息をのむ音が聞こえた。
「あなたの周りのシールドを消去しました。・・・最後の、チャンスですよ」
暗殺者さんは、ぽかんとした表情のままで動かない。
それもそうか。だって、逃げないように拘束していたのにそれをわざわざ解除するなんて普通だったら正気の沙汰とは思えないだろうから。
「最後の・・・チャンスだぁ?」
「ええ」
僕がそう答えると、暗殺者さんは何やらひとり納得した様子で、
「・・・・そうか、確かにそうだな」
「さ、どうしますか?」
「・・・最後のチャンスだ」
狂った笑いを顔に浮かべ、叫ぶ。
「クソうぜェガキ共をブチ殺せるまたとないチャンスだなぁ!!!!」
そしておもむろに足元に転がっていた刺突武器を拾い上げて構えると、5メートルも離れていない僕に向かって突進してきた。
・・・ああ、残念。
この人は地獄を見ることになりそうだ。
「死ねやああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「・・・・」
僕はその場から動かない。
そして、僕に魔法を詠唱させる時間を与えまいとすばやく距離を詰めた暗殺者さんの凶刃は僕の胸もと、ちょうど心臓があるであろう部分に刺さ――――
ガキン
「!!?」
――――らなかった。
タネは簡単。
最初に天井裏から落下してくる暗殺者さんを受け止めるのに使ったエア・シールドを僕の目の前まで移動させた。ただそれだけ。
マジックキャンセラーで消去したのは多重展開させて暗殺者さんを囲っていたシールドだけ。最初の一つは消さずに残してあったのだ。
「・・・残念です」
開いた右手を目の前にかざす。
いったん距離をとった暗殺者さんがこちらに向かって再び突進、いや特攻してきた。後ろのヒタキさんが息をのむ。
「クソガキの分際でえぇぇっ!!調子に乗るなああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ひっ・・・!!」
僕は、ただ一言だけつぶやいた。
「『アイアンメイデン』」
直後、暗殺者さんの足元に直径2メートルほどの『五芒星』が書き込まれた円形の魔方陣が出現した。
と、同時に暗殺者さんの体がこちらに突進してくる体勢のまま、金縛りにあったように硬直する。
「んなっ・・・『五芒星』!?」
暗殺者さんは手足を動かそうとしているみたいだけど、そんなのはまったく意味が無い。
僕の魔法を甘く見てもらっちゃ困るね。
「き、貴様・・・まさか!!」
「あなたは、」
ちゃんと警告してたとはいえ・・・人間を殺すのはやっぱり嫌だからなぁ・・・・。
「あなたは、僕たちを殺そうとしました」
「そ・・・それがどうした!」
「ですから、あなたにはここで死んでもらいます」
「なっ・・・!?」
暴論かな?
でも、これまでの歴史の中でもそうされてきたんだ。
いちおう言ってる事に嘘は無い。
「僕だって一応神ですから。・・・警告はしましたよね?」
「・・・・っ!!」
「これまでの歴史の中で、『神殺し』になろうとした者は残らず処断されてきました」
魔方陣の中でもがく暗殺者さんの体が、魔方陣によって強制的に直立した体勢にされる。
「だからリスクを犯して『神殺し』となった者は英雄として崇められる」
僕は、何もしていない左手の指を鳴らした。
パチン、と澄んだ音が響くと同時に、何も無かったただの空間から刃渡りが1メートル以上もある真っ黒なロングソードが現れた。
切っ先を暗殺者さんのほうに向けたまま、何も無い空中に静止している。
「ヒッ、ヒィッ!!」
そして次々と、はじめに出現したものとまったく同じ形をしたロングソードが現れた。
魔方陣を中心として、半球形のライン上に何本も、何本も、何本も。
「神殺しに失敗すれば・・・・もちろん、死が待っています」
「こ、この野郎!!やめやがれ!!!やめろ!!!」
「うるさいですね」
僕はもう一度、左手の指を鳴らした。
暗殺者さんのほぼ真上にあったロングソードがすさまじい速度で暗殺者さんの足元に突き刺さる。
「・・・ッ!!・・・・ッッ!!!」
声にならない悲鳴を上げて怯える暗殺者さん。
そりゃそうだよね。もうちょっとで脳天から串刺しだったし。
さも残念そうに言ってみる。
「おっと、外してしまいました」
「った・・・、助けてくれぇっ!!」
・・・・そろそろ頃合いかな?
棒読み口調でひとり言を言う。
「・・・あーあ、本当のことをちゃんと話してくれていたらこんな事にはならなかったのになー」
「!?」
「残念だなぁ・・・あなたにここでハリネズミになってもらわなくちゃならないなんて」
そう言うと、暗殺者さんの顔があからさまに何か救いを見つけたかのように明るくなった。
わっかりやすーい。
「正直、今でも遅くないのになぁ・・・」
「は・・っは、はな」
「やっぱり何も言わなかったら・・・・やっちおうかなー」
そう言いながら、今度こそ暗殺者さんを串刺しにする軌道でロングソードを落として・・・寸止め。
そして、小さく悲鳴を上げた暗殺者さんは―――
「は、話すぅッ!!全部話すから!!やめてくれ!!!殺さないでくれえぇっっ!!!」
「はい、よくできました♪」
ついに陥落した。
ごうもn・・・尋問、大成功!!
やったね僕!!
「・・・・はい?」
「・・・・はぁー?」
コラ後ろ、そんな声出さない!
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
あのあと、なぜかアテナちゃんとヒタキさんに呆れられながら、陥落して目から光が消えた暗殺者さんを針金(異次元ポケットから出した)で縛り上げていろんなことを聞き出した。
それによると、やはりというか何と言うか暗殺者さんはブルファット司祭から僕らの暗殺を命じられていたらしい。
でも、僕がクロノミコトっていうことだったり、ましてや僕が神だっていう事も聞かされていなかったらしく、ただ「神社の小娘と黒づくめの小娘をまとめて始末しろ」と言われただけだったそうで。
黒づくめの小娘ってねぇ・・・?
服が真っ黒いのは否定しないけど、一応僕は男なんですが。
で、暗殺者さんの持ち物を全部はがして調べたところ真っ赤に染まった神官服の懐らしき場所から皮でできた袋を発見。
開けてみると、どうやら小物類を収納する袋だったようで鉛筆やら紙切れやら、あと金属製のクリップに6発ずつまとめられた小口径の弾薬もいくつかあった。廊下で使っていたあの拳銃に使うんだろう。
そのほかには小さな冊子。
どうやら身分証明書みたいなものだったようで、ちいさな魔方陣やらよくわからない番号やらが書いてあった。
ん、『ランドルフ・ベルニッヒ』?・・・ああ、暗殺者さんの名前か。本名かな?よくわからない。
いろいろと使えそうなのでとりあえず回収しておく。
あとは・・・特に気になるものも使えそうなものも持っていなかった。隠密任務だし、できるだけ装備を少なくしてきたのかもしれない。
懐を探ったついでに、腰にコルセットのように巻きつけられていた爆薬も取り外す。
包帯でぐるぐる巻きにされたいくつもの粘土状のプラスチック爆薬には金属製の雷管と、ヒモを引けばマッチと同じ原理で点火する簡単な装置がひとつ。
爆薬はだいたい小さい小屋なら吹き飛ばせるだけの量があった。おお怖い。
これも面白そうだからもらっておいた。異次元ポケットにしまっておく。
・・・あ、そういえば。
「暗殺者さん。あなたの持ってた拳銃はどこです?」
「・・・捨てた」
「え」
「・・・弾丸が直撃して使い物にならなくなった。だから、捨てた」
心ここにあらず、といった風でもちゃんと答えてくれる暗殺者・・・ランドルフさん。
そっかー、捨てたのかー。拾われてたりしたらちょっとまずいかもしれない。
リンドウさんの部屋に戻るときに探してみようかな。
僕は暗殺者ランドルフさんの前から立ち上がり、うしろのヒタキさんとアテナちゃんに話しかける。
「よし、調べる事も調べましたし暗殺者さんは壊れちゃいましたし。もどってジルの報告を聞きに行きましょう」
「こ、壊れたって・・・・」
「神撃魔法を拷問に使ったんだから当然ですよー!」
ケタケタケタ。
失敬な。れっきとした尋問だとも。・・・たぶん。
とりあえず思いのほかここで時間をくってしまった。
ジル、怒ってるかなぁ・・・・?
そう考えて、はたと気付く。
・・・・使い魔の機嫌をうかがうマスターってのもどうなんだろ。
いかんいかん。僕がマスターなんだから、もっと毅然とした態度でいないとダメだな。
よし。
僕はそう固く心に決めながら、ヒタキさんとアテナちゃんと共にまたもと来た廊下を引き返し始めるのだった。
・・・ちくせう。どんだけ廊下を歩くんだよう。
ちなみに、このあと壊れた暗殺者さんは帰り際にクロとアテナが窓(1階)から外の池に投げ込んでおきましたとさ。
たぶんジルが尋問したならもっとヤバい地獄が待っていたに違いない。
こう・・・死んだほうがマシみたいな。




