8話 暗殺者さんいらっしゃい
今回はちょっと短めです。・・・・とか言いながらむしろ長かった気が。
白亜の長い廊下を歩きながら、ちょっとあまりよくないニュースを聞いてしまった。
そういえば今日は廊下を歩いてばっかだなぁ・・・しかもやたら長いし。
それにしても・・・
アテナちゃんかぁ・・・・。
いや、嫌いって訳ではないんだけどさ。
なんというかその、スキンシップが過激・・・違うな。バイオレンス・・・違うか。
まあともかくちょっと苦手なわけですハイ。
加減って物を知らないからなあの子。
はるか昔のギリシアとかいうところで戦を司った事もあるらしいから、それ繋がりなのかな?僕はかなり懐かれている。
まだジルが僕の使い魔になる前に何度か会った事があるんだけどそりゃぁもう。
僕に延々とまとわりついてくるアテナちゃんを見てカルム兄が死んだ目をしていたのはよく覚えている。
あのあとカルム兄がなぜか下界のカップルをすべて永遠に爆破するとか言い出したからかなりあせった。本当になんだったんだろう。
「どうしたの?何か気がかりな事でもある?」
しばらく僕が歩きながら昔のことを思い出していると、隣のヒタキさんが声をかけてきた。
意識も別の場所に飛ばしていたので、知らず知らずのうちに歩調が少し乱れていたのかもしれない。
「気がかりというか何と言うか。アテナちゃん、こっちに来てからもはっちゃけてないかなー、と」
「アテナちゃんって・・・知り合いなの?」
「昔にちょっとした縁があって」
「ふうん・・・・」
「どうかしました?」
なんか感心したような顔で見つめられてるんですが。
ちょうど廊下の曲がり角に差しかかった。後ろを見ると、誰もいない白亜の廊下が延々と続いている。
「ううん、やっぱり神様の世界ってすごいんだなって」
「そうですか?」
「だって神様と知り合えるって、普通に考えてすごい事だとは思わない?」
「そんなもんなんですかね」
「そうよ。だって私たちだったら神様と知り合えるなんて絶対にありえないじゃない」
そういうものなのかなぁ。
僕からしたらアテナちゃんもヒタキさんも同じような「知り合い」だったり「友達」なんだけど。
「でも、そんなこと言いながらももうすでに僕と知り合いになってるじゃないですか」
「えっ?・・・・あ」
「何ですかその反応」
「な、何でもないわよ?」
ああ、なるほど。
この人もそういうクチなのか・・・。
「どどっ、どうしたの?何でいきなりそんな目になるの?」
ええ、そりゃちょっとぐらいやさぐれますとも・・・。
「どうせ、どうせヒタキさんも僕がムダにちっちゃいとか威厳がないとか強くなさそうむしろか弱そうとか日本刀の先を引きずってるとか掃除用のモップの柄と身長がいい勝負だとかもしドラエ○んがいたらまっさきにビッグライト頼めとかコートに僕が着られてるとかぜんぜん神っぽくないとかそんなことを思ってたんでしょう?」
「え?ちょっと、えっ?」
「ああ大丈夫です。わかってますよどうせ身長なんて伸びませんよどうせ不変の体ですからもうずっとこのままですよ今も昔もこれからもええ。ビッグライトなんてあったら本気でほしいですよ札束なんていくらでもくれてやりますともコンチクショウ」
じ、自分で言いながら悲しくなってきたぁ・・・。
ううっ・・・グレてやる・・・グレてやるぅー・・・
「えっと・・・クロ、ちゃん?」
「なんですかぁ・・・・」
「その、さっき言ってたことって、前に誰かに言われたの?」
「・・・・ええ」
「誰?」
「・・・ジルですよ」
そう言ったら、なんか納得された。
「なるほど。・・・あの人なら言いかねないわね」
「・・・・」
「・・・大丈夫よ?モップの柄なんかよりたぶん身長高いし、日本刀だって今はちゃんと引きずってないし、コートだって袖をまくってるから普通に着られてるじゃない」
・・・・
あれ、なんだかなぐさめられた気が全くしないぞ?
どころかジルが言った事を半ば肯定されてしまったような。
ついでに神っぽくないうんぬんの部分はスルーされてるときた。
ああそう・・・神っぽくないのね・・・・。
「もう・・・知りませんよーだ」
「あれ?」
「誰もが僕をいじめるんだぁ・・・ぐすっ」
「・・・!?」
ああ・・・もう地球なんて爆発してしまえばいいのにぃ。
うう・・・
・・・それからしばらく、僕とヒタキさんは無言のまま歩き続けた。
沈黙が重苦しい。
「・・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・そ、そそそ、そういえば!」
「・・・?」
いったん立ち止まったヒタキさんが、僕らの周りに漂う澱みきった空気を振り払うかのように声を発した。
めちゃめちゃぎこちない笑顔で。
「く、クロちゃんって、男の子じゃないのに自分の事『僕』って言うよね?か、変わってるなぁ」
「・・・・」
さて、ここで重要な部分で勘違いされてる事が判明したぞ。
「な、何でさらに空気が澱んでしまうのかな」
「・・・・ヒタキさん」
「ひゃい!?」
「僕は・・・・男です」
「・・・・・・えっ?」
聞こえなかったかな。
「僕は、おとこ」
「き、聞こえたわよ!?聞こえてたから!!」
「そうですか」
「・・・・その、本当?」
ええ本当ですとも。まるっきり本当ですとも。100%本当ですとも。
・・・よく間違われるけど。
「はぁ・・・・まったく」
なんで見んなそうやって僕を弄るかな。
ああちっちゃいからか。そうか。へぇ。
・・・・・泣きたいなー。
・・・・・・
ところで。
・・・さっきからずっと我慢してたんだけど、もう我慢の限界かな。
ここまでしつこいと・・・・・ちょっと、イラっと。
「どっ、どうしたの?」
廊下の真ん中で立ち止まる。
なるべく静かに。
ほかの誰にも気取られないように。
「・・・召喚魔方陣、起動」
「え?」
小さな声で発動させた魔方陣が、足元ではなく僕の手の平の上だけに展開した。
今の状況に最適な火器をイメージする。
すると、手の中に、僕がイメージした通りの火器が現れた。
ヒタキさんの表情が凍る。
「・・・っ!?」
僕が召喚したのは、大型な一丁の拳銃。
もちろん、ただの拳銃じゃあない。
僕は、スライドの先端部からやや長く突き出てネジが切られた銃身に、L字型に曲げられた針金から取り外した拳銃本体とほぼ同じ長さの円筒をねじ込んだ。
サイレンサーだ。
「な・・・い、いきなり、どうしたの?」
「どうって事はありません」
思わず、重くて、硬い言葉が口から出た。
・・・・あれ?まったく僕らしくないな。
「僕の機嫌を損ねたヤツを始末してやるだけですから」
「ひっ・・・!」
サイレンサーから取り外していたL字型の針金――簡易式のストック――を大理石の床に投げすてた。
静かな廊下に、カラーン!と澄んだ音が響き渡る。
「ご、ごめんなさい!」
「なんで謝るんですか?」
まったく、別に気にしなくていいのに。
「すぐに済みますから」
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
銃のスライドを引いた。
いったん最後端まで引ききり、手を離す。
スライドが前進しジャキッ、と短い音を立てて20発の9mm×18mm弾が装填されたマガジンから1発が薬室に送り込まれ、発射可能な状態になる。
「ごめんなさい・・・!!」
人を撃つのは精神的にきついんだけどなぁ・・・。
まぁ、しかたないか。
引き金に指をかける。
「!!!」
ヒタキさんが声にならない悲鳴を上げた。
と、同時に。
僕は、僕の真後ろ、僕にとって死角になっている方向に銃口を向け、引き金を絞った。
シュバババババババババババ!
ロケット花火が飛び立つ瞬間のような、そこまで減音されたとはいえない銃声が連続して耳を打つ。
その速度、秒間およそ12発。
1秒そこらで弾倉の中の弾薬を撃ちつくして、スライドが後端でストップした。
20個の空薬莢が大理石の廊下を跳ね、やがて静まる。
「・・・・・・え?」
「ちぇっ。逃がしてしまいました」
ヒタキさんが不思議そうな、狐につままれたような顔をしている。
それもそうか。
「あの、えっと、すみませんヒタキさん。なんか誤解させちゃったみたいで」
「へ?・・・・ぇえ!?」
「うわぉ」
「びっくりしたわよ!!殺されるんじゃないかと思ったじゃない!!!」
「す、すみません」
お、おお。ヒタキさんが元に戻った。めでたしめでたし。
「『ちぇっ。逃がしてしまいました』じゃないわよ!説明!!状況を説明して!!」
「わ、モノマネうまいですね」
そう言ったら何か逆鱗っぽいものに触れたらしく、胸倉をわしっと掴まれた。
「せ、つ、め、い!」
「ひゃ、ひゃい喜んで!」
ギリギリと首を絞められながら、僕は説明を始めた。
要するに、さっきの出来事は・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
僕とヒタキさんが廊下を歩き始めてしばらくして、その気配は現れた。
不審に思った僕は、即座にレーダー魔法「魔力走査」を発動。
僕らの後方20メートルほどの場所、廊下に並べられた美術品に隠れるようにして1人の人間がこちらの様子をうかがっていた。
ピンポイントで魔力走査を発動させたところ、その人間が拳銃を隠し持っている事が判明。暗殺用と思しきニードル型の刺突武器も所持しているようだった。
若干殺意らしき意識も感じられたので、警戒しておく事にした。
それからしばらくして。
僕らがアテナちゃんの話をしていたとき、後ろの死角でこちらをうかがっていた人間が動いた。
人間が、こちらに銃口を向けたのだ。
その手にあるのは細長い、鉄パイプにグリップをくっつけたような形をした偽装拳銃。
若干太い銃身内に消音器が内蔵され、最高レベルの消音効果を発揮するように設計されている。
消音効果を高めるために半自動式ではなく手動で弾薬を装填・排莢する必要があるものの、その欠点を補ってあまりある性能を持つ暗殺用拳銃だった。
さいわいな事に、ちょうどよく曲がり角があったから撃たれずに済んだ。このとき「次はない」という意味合いの視線を僕らの後ろの暗殺者に向けて送っておいた。
すなわち、今すぐあきらめるなら何もしないが、これから先でもつけてくるようならば危害を加えずともこちらが攻撃する。もう相手の銃弾から逃れられる場所がないとも限らないしね。
そういう意味合いで。
しかし、僕らをつけていた人間改め暗殺者が取った選択は「追跡の続行」。
要はもう僕からどんな攻撃を受けるのも怖くない、ケンカ上等、と。
イラっときた。
僕ら2人をまとめて暗殺するような素振りはまったく見せないくせにただ追いかけて来るだけのヘタレた暗殺者。
そんなヤツに舐められてたまるかと。
で、さっきの掃射。
狩りだして締め上げてやろうかと思ったけど運悪く逃げられてしまった。
ちゃんちゃん。
・・・・・・・
・・・
「まあざっと、こんなところでしょうか」
「・・・・・」
「ヒタキさん?」
僕が話し終わると、ヒタキさんはちょっと黙り込んだ。
同時に僕の胸倉も解放された。ああ、首が真っ赤になってるなこれ。絞殺したあとみたいなのが残らないかな。大丈夫かな?
「・・・ぜんぜん気がつかなかったわ」
そりゃそうだろう。曲がりなりにも相手は暗殺者。気配を消せなければ話にならない。
まあ、そんな事したって僕には通用しないけど。
「差し向けてきたのは神殿かしら?」
「神殿というより、ブルファット司祭あたりでしょうかね」
悪徳商人みたいに会談してたからなぁ。首謀者はブルファット司祭の可能性が高いかな。
「ところで・・・」
「はい?」
「ずいぶん派手にやっちゃったわね」
「あ、それについては申し訳ないっていうか何というか」
ヒタキさんが言うとおり、僕がフルオートで20発もの弾丸を撃ち込んだ一帯はボロボロになっていた。
そこまで距離がなかったからわざとストックをつけずに弾丸を散らしたのもあって、けっこうな範囲の壁と床が砕けていた。
「事情を説明したら何とかなりませんかね?」
「クロちゃん神だもんね・・・何とかできない事もないのかしら」
「職権乱用ですね」
「・・・・すごく、今更ね」
「・・・今更でしたね」
これだけぶっ壊しておいて何を今更、と。
そう言いながら床を見てみると、おっ?
「ヒタキさんヒタキさん」
「なに?」
「血痕です」
赤黒い血のしずくの跡が点々と廊下の向こう側まで続いていた。
3、4発は当てたっぽかったしな。けっこうなケガを負ったかもしれない。
まあ暗殺者さんには神に刃向かった報いとしてあきらめてもらうとしよう。
神にしか使えないようなヤバイ魔法をブチ込まれなかっただけ運がよかったと思ってねうふふ。
「この跡を追えば、相手がどんなヤツなのか分かるかもしれないわね」
「それもそうですね」
「たどってみる?」
ちょっと乗り気なヒタキさん。
それもそうか。自分の命を狙った相手は捕まえたいと思うのが普通か。
「やめておきましょう。いまからアテナちゃんにも会わないとですし」
「そっか・・・そうね。わかった」
こんな事で時間を取ってちゃまずい。
ジルはもう神界との連絡を済ませてしまっただろうか。
とにもかくにも、はやくアテナちゃんと会わないと。
僕とヒタキさんは踵を返して、今度は少し早足になりながらアテナちゃんがいるという部屋へと歩いていった。
クロは命を狙ってくるものには容赦しない性格ですね。そのときはちょっとだけ性格が変わります。性格が、変わるんですよ(伏線
そしてヒタキはナチュラルにクロをちゃん付けで呼び始める。
神っぽくないクロちゃんドンマイ。
それにしても久々に武器が登場しましたね。
今回登場したのは、
・APBサイレンサー・ピストル(スチェッキン・フルオートマチック・ピストル)
・ウェルロッドMk.2サイレンサー・ピストル
です。
サイレンサーピストルの変り種を2つ。
APBは鋼線製のストックを付けることで連射時のコントロールを容易にすることが出来ます。出来ますが・・・作中のクロのようにストックを付けないで撃っちゃうとまぁ的なんざ狙えるわけがありませんね。それでも当てるクロ。神ってすげー。
暗殺者さん(名前未定)のウェルロッド。低速の.32ACP弾を使用することで消音効果を高め(弾丸が音速を超えてしまうと消音効果が減る)、内臓式のサプレッサーとボルトアクション機構の採用によりその銃声の大きさは35dBまで抑制・・・35dBってどんぐらいだろう。小さいのはわかるんだけども。
ともかく暗殺にはもってこいの銃だったわけですな。はい。
次話こそは週末に更新・・・・出来ます。たぶん。
平日更新も夢じゃない・・・・・・・かな?




