5話 巻き込まれてるし
レガルド国立中央神社は、さっき見ていた荒野というか平地というか、それに面した場所に建ててあった。
丁度石造りの区画と砂だらけの荒野みたいな区画の境界線上に建ててあり、大きさもかなりのものだった。
総大理石造りで、真っ白な外装がまぶしい。
・・・・え?
『神社』が大理石?西洋建築?
「着きました。お降りください。・・・って、イース副隊長起きて下さい!着きましたよ!」
イースさんの部下らしい、濃緑色の軍服を着て御者をしていた若い青年兵士が両手でイースさんの頭をガクガク揺らす。
ちょっと待って、部下なのにあんな事やって大丈夫なの?
そんな僕の視線に気がついたのか、イースさんの部下の兵士さんはこっちを見て苦笑した。
「大丈夫ですよ、いつもの事ですし。それに副隊長はこれぐらいしないと起きませんから」
「そうなんですか」
「ええ。なんたって機関銃陣地やら塹壕やらで熟睡できる方ですんで」
マジでか。
「この間なんて、整地で戦車を最高速で走らせながら居眠り運転をされていますよ。しかも一度寝ればこれがなかなか起きないんですよね・・・」
「いやそれシャレになってませんから」
「・・・・わたしがやれば、おきる」
いつのまにやら起きていたアリスさんが、何やら自信たっぷりに言い放つ。
そしてアリスさんは頭を左腕に抱えなおしながら、ふんむ、と鼻息をついて、腰のベルトにカラビナで提げてあったナニカを手に取った。
「って、ちょっと待って!?」
「・・・・・?」
アリスさんが手に取ったソレ。
15センチほどの木製の柄の先に円筒形の金属部分。金属部分の根元には、指を掛けるためのリングがつけられた安全ピン。
そう。それは、
「まんま手榴弾ですけどソレ!!?」
「・・・・うん、対戦車用」
知らねぇし!
「どうすんですかそんなモン!?」
「・・・・こうする」
するとアリスさん、何のためらいもなく。清々しいほどためらわずに、そいつでイースさんの側頭部をぶん殴った。
隣でジルが、うげっ、と小さく声を上げた。いやだって怖いし。
万が一ピンが抜けたり爆発しちゃったりしたらどうするの・・・しかもすごく痛そうだ。
殴った瞬間、「ズゴッ!」とすごい音がしてイースさんの頭が外れんばかりに傾いで、首からなんか絶望的な音が聞こえた。
「んがっ・・・・ん?・・・あ、着いた?あーよく寝たわ」
「何で生きてるの!!?」
なんとまぁイースさん、絶望的な音と共にありえない方向に首をひん曲げたままそんな事をのたまった。
どのぐらい曲がってるかって、だいたい顎の先が時計の11時の方向を向くぐらいまで曲がってた。
「んえー?あ、こりゃ別に気にするほどの事でもないよーん・・・っと」
ゴキリ!!
「ほーれ直った」
・・・・僕は何も見ていない。そう僕はイースさんが自分の手で頭をつかんで180度回転させる光景なんて見ていないさ。
見ていないんだうんそうだ絶対そうだ。
「・・・・じゃ、みんな降りる」
さっきの光景はジルも見なかったことにするらしい。
ちょっとイースさんとは別の方角を見ながらそそくさと馬車を降りた。僕もそれに続いて、最後にイースさんとアリスさんが降りる。
それにしてもやっぱり大きなこの『神社』。
っていうかなんか絶対間違ってる気がする。主に外観とか。
後続の馬車から降りてきたヒタキさんに早速聞いてみた。
「ヒタキさんヒタキさん」
「な、何でしょう?」
「・・・敬語は要りませんよ?」
「え?」
「タメ口ってやつで結構ですから」
「は、はぁ」
何でこうもみんな僕なんかに敬語を使おうとするんだか。普通に話してくれたら楽なのに。
「で、それはそうと・・・ここが例の『神社』ですか?」
「は・・・ええ、そう・・よ」
詰まり詰まりだけどまぁいいや。へぇ、これほんとに神社なのか。
僕のイメージとしては木造建築の一階建て、鎮守の森の中にひっそりたたずむ静かな場所っていうイメージだったんだけど。
「わ、わたしがいる神社は違うのよ?昔からある建物を使ってるんだから」
ナイスタメ口。
確かにこれじゃぁ神社って言うより宮殿みたいだもんな。
「元は中央部にあったんだけど・・・5年ぐらい前、ここに移転するとききにいろいろあったのよ」
「いろいろ?何があったんですか?」
そう聞くと、ヒタキさんは少し苦い顔をして、
「・・・今に分かるわよ」
そう言った。
何だろう。苦い顔をせざるをえない何かがあるのか。
「何ボサッと突っ立ってんですかマスター。ほら早く行った行った」
ジルが面倒事は早く済ませと言わんばかりに僕の背中を押す。
あとの人たちも慌ててそれに続いた。
兵士さんが詰めた門が一応あったんだけど、普通にスルーできた。ちゃんと話は通っているらしい。
「にしても・・・広いですね」
大きな入り口周辺の壁面は精緻な彫刻が施され、覆われている。
そして明り取りの窓には色とりどりのステンドグラスがはめられていて、その、もうなんていうんだろう。
「うっひゃー・・・いつ見ても中央『神殿』はカオスだねぇ」
「・・・・ごちゃごちゃ、してる」
あ、はっきり言っちゃうんだ。まあ、確かにこんなの神社じゃないね。
ところでイースさんが言ってた『神殿』って何ぞ?後で聞いてみよう。
と、ふいに『神社』の入り口の扉が開いて、中から男の人が出てきた。
しかしこの人・・・・
「・・・げっ、出たなデブ司祭」
今のセリフがイースさんだとおもった人。残念!ヒタキさんでした!!
顔を嫌悪に思いっきりゆがめた上で、ちっちゃい声でボソッとつぶやいていた。
キャラが変わるぐらいに嫌いな人なんだろうか。
まぁ確かに、神殿から出てきたデブ司祭(仮)さんは太っていた。かなり。
大昔にやってた『人間ドック』ってヤツで絶対引っかかる体形。具体的には腹囲130センチほど。
デブ司祭(仮)さんはドスドスと小走りで僕らのそばまで寄ってきた。
そしてだいぶ乱れた息をその場で整えてから、
「クロノミコト殿ですな?ようこそ、レガルド中央『神殿』へ。お待ちしておりましたぞ!ささ、こちらへどうぞ」
「あ、はい」
親しげな口調で一通り喋ると、すぐに中に入るよう促された。
みんなでぞろぞろと中に入る。
入ったところにあったエントランスはとても広く、吹き抜けになった天井のてっぺんからはガラスを通して太陽の光がさんさんと降り注いでいた。
そしてやっぱり総大理石。白亜の神殿。西洋建築。
あと、僕の後ろにいるヒタキさんからちょっとヤバいオーラが出てる。まさに殺意の波動・・・!
「えっと、司祭さん」
分からない事は聞いておくに限る。
「なんでございますかな?」
「その、僕がここに来る前、『神社』に行くように言われてたんですが・・・ここは『神殿』ですか?」
そう聞くと、デブ司祭さん(仮)は「チッ」と小さく舌打ちをして、ってあれ?舌打ち?
同時に、後ろにいるヒタキさんの殺意のオーラがMAXに。
「ヒタキちゃーん?ほら煮干しでも食っておちつきなぐぼぁっ!!」
茶化したイースさんがボディブローを決められて沈んだ。恐るべし。
「ブルファット司祭。クロノミコト様のおっしゃるとおりです。『神社』区画へ案内してください」
デブ司祭さん改めブルファット司祭がそんなヒタキさんを睨みつけて、
と、そのとき唐突に。
「そうだなァ。アタシからもちょっと話を聞かせてもらおうじゃないか」
何の気配も感じさせず、僕らの背後から少しけだるげな女の人の声が聞こえた。
ヒタキさんが驚いた様子で振り返る。
「な、リンドウ様!?」
いつの間にか僕らの背後には、リンドウ様と呼ばれた何と言うか妙齢の女の人が立っていた。
ヒタキさんが着ているのによく似た巫女装束を身にまとい、長い黒髪を揺らしながらこちらへやってくる。
すごい威圧感だ。どのぐらいすごいかって、イースさんが黙り込むほどの
「なぁクロたん。リンドウのおばちゃんってパイオツでかいよなぁグヘヘ」
訂正。イースさんはどこでもしゃべる。不変の定理。
「悪いな司祭。残念ながらお前らみたいな生ゴミが『我々の』クロノミコト様に触れるといけないんでね。さ、神社の区画はこっちだ」
「クッ・・・畜生が、後で覚えていろ。リンドウ」
「はっ、残念だが私は物覚えが悪くてね・・・・ほらみんな。こっちに来てくれ」
リンドウさんがブルファット司祭さんが案内しようとしていた道とは90度違う方向へと僕らを連れて行く。
背後では、ブルファットさんがなにやら部下らしき人に耳打ちをしていた。
・・・うわぁ、まんま悪徳商人のアレだ。
そして僕らはようやく、『神社』にたどりついた・・・・ようだった。
後ろで、ジルがぼやいた。
「あぁ・・面倒臭そうな予感満載ですねまったく・・・」
うん、僕も全く同じ意見だな。
はぁ・・・・。
また週末に間に合わなかった・・・ほんとすみません。
武器もちょろっとしか出ませんでした。ぐぬぬ。
さて、今日久々に出てきた兵器ですが、旧ソ連のRPG-43柄付手榴弾ですね。成型炸薬が使用され、戦車の装甲に対応した変わった手榴弾です。
ドイツのM24柄付手榴弾にするかどうか迷ったんですが、オチがほしかったのでRPGに。
(っていうか、柄付手榴弾って本当に人を殴っても大丈夫なんだろうか・・・)




