プロローグ 1
初めまして。UNKNOWNといいます。
初投稿です。
色々と至らぬ点もあるかと思いますがどうかよろしくお願いします。
※2015年1月1日に改稿しました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――
「・・・・・・・・・」
なんだろうな、この状況。
・・・・どうしてこんなことをしてるんだっけ?
「だーかーらー、言ってるでしょー?あんたがポンポン並行世界を量産してくれたおかげで世界を管理する能力が破綻しちゃったんじゃない!」
「そりゃないね!姉さんだってあの程度の数の世界を管理しきれないとかありえないよ!老化でも始まっちゃってるんじゃないの!?」
「な・・・! しっ・・失礼ね!あんただって年齢でいったらアタシとおんなじ位でしょ!!?」
「ボクは見た目が若いもんね!姉さんみたいに年食った見た目じゃないんですー!」
「ムキーーーー!! あ、あんたなんてそんなに胸がぺちゃんこだったら小学生と間違われても仕方ないわよね!!」
「ボクの胸のことは言うなっていつも言ってるでしょ!!?大体姉さんなんてそんなに胸がデカかったらもう垂れてきてるんじゃないの!?」
「垂れてないわっ!!! あんたみたいなまな板よりはデカいほうがいいわよ!!」
………………
(……僕、ここにいないと駄目?)
僕こと、クロは言い争いを続ける二人を見ながらひそかに溜息を吐いた。
かたや、巨乳でロングヘアーな巨乳美女。
かたや、貧乳でツインテールなボクっ娘。
……信じられないかもしれないけれども、コレは一応神です。ついでに僕の姉たちです。
巨乳で目のやり場に困るようなプロポーションの女の人のほうが、長姉であり、世界の時間をつかさどる神であるキザミ姉。
ボクっ娘で活発そうな、少々子供体形な女の人のほうが、次女であり、平行世界の創造を司る神であるメグル姉。
いつも(主に胸の話で)言い争いが絶えない二人だけど、今日はちょっと雰囲気が違うような……。
「だいたいボクが世界を増やしすぎたぐらいでなに?また下位神たちを降臨させて現地で管理させればいでしょ!?」
「その下位神がもういなくなったからこういう話になってんでしょうが!!この前派遣した分でもう最後の一人だったのよ!?それでまたアンタもうひとつ世界を作るとかどういう脳味噌の作りしてんの!!?」
「そんな話聞いてないし!!」
「言ったわよ!!」
「言ってない!この年増!!」
「言ったわね!?この小学生体形!!」
(はぁ……。)
どうやら今回の口論の原因は、メグル姉が、枝分かれした全ての平行世界の『幹』となるを世界を分岐させすぎて、下位神の世界を管理する能力がキャパシティーを超えてしまったことが原因みたいだ。
それにしても、
(八百万の神々の処理能力がパンクするとか、どんだけ分岐させちゃってんだろ?)
だいたい1200年ちょっと前から「あーるぴーじー」とやらにはまっていたメグル姉が、ゲームみたいな世界をたくさん創ってしまったことが原因なんだろうな。
こないだ下位神さんたちが使う下界監視用のモニターに映ってた平行世界の光景の大半がゲームチックなセカイだったし。
まぁしかし、下界では命ある生き物の皆さん方が一生懸命日々をすごしていらっしゃるわけで……そんなに迂闊に世界を滅ぼすわけにも行かないんだよね。
さてどうするか。
「だからさっき言ったでしょ?私たちのうち誰かが下界に行けばいいんだって!!」
「いいワケないわよ!!」
「なんで!」
「私たちの誰かが欠けて他の世界に変な影響があったらどうするのよ!?」
「そんなのやらなきゃ分かんないじゃん!!」
「あんたねぇ……!」
あぁ、そうか。
神は基本的にひとつの世界しか管理することはできない。つまり、複数の世界を一人で管理することはできないのだ。
そこで、キャパシティーを超過した八百万の神々に代わって、僕ら高位神を代わりに派遣する。幸いなことに、いま下界に存在する世界は8000001個、つまり高位神を一人派遣すればまだ何とかなる、と、思われる。確証は無いけど。
さて、そうなると問題になってくるのは、高位神のうちの誰を下界に派遣するかだけど……
「派遣するひとは会議で決めればいいじゃんか!!」
「だから派遣しないわよ!!」
「なんで!」
「何かあったときに対応する人手がいなくなるじゃない!」
「………で、本音は?」
「めんどくさいわー、仕事増えるの」
「ほら見ろ!やっぱりめんどくさいだけじゃんか!!」
「う、うるさいわね!!だって本当の事でしょ!?」
「うわ開き直ったよこの女!!」
んんー……。
どうもいい案が思い浮かばない。
やっぱりメグル姉が言ったみたいに高位神同士で話し合って決めるのがよさそうかな。
「そうだ、せっかくクロがいるんだからクロに聞けばいいじゃん!」
「それもそうね。クロは何かいい考えでもある?」
……え、急に振られても。
今振られてもあんまりいい案なんてないんだけどなぁ・・・・。
「……メグル姉が言ったみたいに、会議で決めればいいのでは?」
そうすれば、後でイロイロ揉めずに済むと思うし。
「く……クロ!あんたこの断崖まな板女の片棒を持とうって言うの!?」
「うん!それでこそボクの弟だよ!ちゃんと話がわかってるねっ!うりうり!」
なんかメグル姉に抱きつかれた。
「あっ!ちょっとメグル!あたしも!!」
なぜかキザミ姉にも抱きつかれました。
……柔らかいっす。
胸とか。後は胸とか。それから胸とか。あ、それと胸。
逃げたいような逃げたくないような、そんな感触に包まれている僕と、何故だかワナワナ体を震わせているキザミ姉とで目が合った。
「………むっ……」
ん?
「胸なんて……胸なんて……!!」
………!!?
腕が!?メグル姉の腕が僕の首を締め上げてるんですけどっ!!?
千切れる!!首が千切れる!!!
「ん――――!―――、――――!!」
「あらクロ、どうしたの?顔色悪いわよ?」
心配そうに僕の顔を覗き込んでくるキザミ姉。
姉さん、ダメ、面白がって僕の鼻をつまんでみるなんて尚更ダメ……!!
急激に欠乏する酸素。
首の辺りで止まりかける血流。
あ、なんか視界が……
ぼやけて…………
「――――けふっ」
「え?あれ?クロ?どしたの?」
キザミ姉さん、僕の首を締め上げる腕は全くの無意識だったんですね……。
「え?あ、ちょっとクロ!寝るな!!ねーるーなー!!」
……メグル姉さん、いまさら腕を放しても手遅れです……。
目の前が……まっくら…………
・・・・・・・
・・・・
「………はっ」
気がつくと、僕はどこかに座らされていた。
周りを見回してみると、どうやらここは会議室のようだ。
10メートルほどの長い机を僕以外に4人、それぞれがイスに座って囲んでいた。
ちなみに長机の上座にはには誰も座っていない。この場に集まっている5人はそれぞれこの世の最高位神であり、等しく力を持つ「兄妹」たちだからだ。
まあ要は、もうみんなこの世のトップなんだからこの中で「誰がいちばん偉い」なんてことは決めようが無いし、もういっそリーダーとか決めないほうが良い……って事。
それはそうと。
……なんだか僕の座っているところが柔らかいんですが?
「目が覚めた?」
声がしたほうを見上げると、そこには艶やかな黒髪を腰まで伸ばした女の人の顔。
「・・・・ミササ姉?」
「ふふ、おはよ」
どうやら僕は、知識を司るミササ姉の膝の上に座っていたようだ。
座り心地がもう、なんか……すごい。
「では、クロの目も覚めたことですし、これより会議を始めます」
僕の頭に手をやり、髪に手を滑らせるようにして頭を撫でながら会議を始めようとするミササ姉。
いつものクールな顔が少し緩み気味だ。何かいいことでもあったんだろうか?
「今回の議題は、『下界に派遣する高位神一人の決定』です」
「・・・・・・」
ぼくら5人、みんな揃って黙り込む。
よく考えても考えなくても誰が下界に行くにしろ、兄弟たちと非常に長い間会えなくなる。そんなの誰だって嫌だ。
「ちょ、ストップストップ!」
「何?メグル?」
急にメグル姉が慌てたように立ち上がった。
「ほ、ホントにあの世界に派遣するの?」
「当たり前じゃない。あなたが創った世界でしょ?」
「そ……そりゃそうだけどさ……うー」
うなりりながら机に突っ伏してしまったメグル姉だけど、僕らにとって一度創ってしまった世界は容易に消去することなんてできないモノだ。
そして、分岐した世界に多くの生命が存在している以上、そこには最低でも一人、その世界を受け持って管理する神が必要になる。
そりゃ確かに、その世界にいる生命を魔法をもってして全滅させてしまえばもうその世界を管理する神がいらなくなるわけだけど、誰だってできればそんなことはしたくない。消耗だって相当激しいし、物凄い抵抗感もあるしね。
「今回派遣されるのは、私を含めてここにいる人のうちの1人。任期は件のセカイより他に存在する平行世界のうちの、どれかひとつの世界が滅びて受け持ちの下位神が神界に帰還して受け持ちを交代するまで。……誰か立候補する人は?」
……任期はすごく長そう。
他のセカイに存在する生命が滅びるまでって、いつまで経っても帰ってこられないような気がするんだけど。
それに件のセカイを創ってしまったメグル姉も、世界に大きな異常が起きた時に神界全体に警告を出す重要な役割があるから行けそうにない。
当然ながら、立候補する人は一人もいなかった。
「・・・・ちょっと質問なんだけどよ」
めんどくさそうに手を挙げたのは、平穏を司る神のカルム兄。平穏を司っているけど、髪はツンツンしてるし金髪だしピアスつけてるし。
なんだかずっと昔に見た「田舎のフリョー」とか「ヤンキー」とやらによく似ていると思う。本人に言ったら怒られるけど。
「何?カルム」
「その、派遣先の世界ってのは、具体的にどういうセカイなんだよ?それが分からないことには行こうとしても行けねぇじゃねぇか」
ぴくっ、がばっ、にぱー。
見事に3テンポで突っ伏していたメグル姉が復活した。
「え、カルム行ってくれるの!?」
「ちょっと待てメグル!!誰も行くなんて言ってねぇだろ!!?」
「えー行ってくれるんじゃなかったの?ブーブー!」
「バカ野郎、その派遣先のセカイがわかんねーから行けねぇって話をしてたんだろ!?たった今!!」
テーブルを挟んで向かい合うメグル姉とカルム兄が顔を至近距離で突き合わせていがみ合う。
「あ、じゃぁボクが派遣先のことを教えたら行ってくれるんだね!!いや、うれしいな!!」
「はぁ!?脳味噌沸いてんじゃねぇのかお前!!?誰が行くかお前なんかの創ったフザケたセカイ!!」
「はいはいストップ。二人とも静かになさい」
とりあえず、ミササ姉が間に入る。
「カルムの言ってる事も最もだわ。メグル、目的のセカイについて説明してくれる?」
「・・・むぅ。仕方ないな・・・。派遣先のセカイについて簡単に言えば、『剣と魔法の』世界。科学文明が繁栄した『幹の世界』をベースにしてあるけど、科学文明の終息と共に魔法が急速に発展した世界だね。RPGで言えば―――」
「あ、俺絶対に行かねーわ」
「何故に!!?」
お、カルム兄が拒否った。
「いや、だって俺って剣はともかく魔法とか超絶ニガテだろ?だったら行っても意味ねぇかなーって」
「なっ!!? こっ……この役立たず!!!」
「何とでも言えや」
そうだった。カルム兄は、剣とかは得意だけど魔法がからっきしに駄目なんだ。
どうやらそれは先天的(神なのに)な物のようであるらしく、おかげでカルム兄は魔法に関してはミクロン単位で知識がない。
「じゃあじゃあ、ミササ!キミが行ってくれれば」
「無理ね」
「即答!!?」
「だって私、魔法ならそこそこできるけど剣術なんてほとんどできないのよ?」
まあ確かに。でも、あるだけの知識を蓄えるのがミササ姉の役割だから誰も責める事は出来ない。
「ぐぬぬ……!なら……ならキザm」
「あたしならムリね」
「まだ何も!?」
「時間の流れの管理とか、他の誰かができるとも思えないもの。あたしは行けないわよ」
ミササ姉にも断られ、キザミ姉に断られて。哀れメグル姉。
・・・・・・・・・
………ん?
待てよ?そうなると、後に残っているのは……。
・・・・・・・・・
なんだか全員の視線を感じるんですが。
僕を膝に乗せていたミササ姉が僕に回していた手を心なしか締める。
……に、逃がさないということでありますか。
「……クロ、あんたって魔法できたわよね?」
おもむろに、メグル姉が口を開いた。
「は、はひ」
「カルムと剣術の試合、したことあるわよね?」
「で……でも僕は負けたんですが」
「カルム、どうだったの?」
頼れる兄貴なカルム兄!お願いだから何とか上手い事言って!!
「ああ、申し分ねぇよ。俺も危うく負けるとこだったな。さすがクロ、って感じだな」
あ。詰んだ。
メグル姉が、ニィ……と不気味に笑う。
こ、怖い……!
「へぇ……それはいいこと聞いたなぁ………どうクロ?やってくれない?」
「や、ややや、やぁ、ぼ、僕はどうも管理をする仕事っていうのが苦手なみたいなので辞退させてもらっ」
「 や っ て く れ る ? 」
ひえぇ!
たぶん僕は今、泣きそうな顔をしてるに違いない。
「ひ、ひとつ聞いても?」
「何?」
「そ、そのセカイの管理っていうのは、具体的にどんなお仕事をするんですか?」
「う〜ん……そうねぇ……」
キザミ姉がしばしの間考える。
そして、
「・・・・・・・何も?」
そんないい加減なことをのたまった。
「ちょ、何もって……何かすることがあるんじゃ?」
「え、いやだってその世界でただ過ごすだけだし?生命の存在とかその他チマチマしたことを把握して報告してくれればもうそれでいいわけだし」
え、ちょっと姉さん……チマチマって……。
そのチマチマがわからないから怖いんのではないかと僕は思うのですが?
「……わかったわ」
ん?
「クロが行かないのなら……私が行くわ」
突然ミササ姉が言い出した言葉に、4人がはっと驚いた顔を上げる。
「待てよミササ姉、本気かよ!?」
「そうよミササ、あんたこの間10センチぐらいの段差につまづいて骨折したじゃない!!」
「ダメだよミササ!キミが行ったらきっと1週間せずに全身の骨が粉になるよ!」
慌てたように立ち上がった兄弟たちが心配してるのかバカにしてるのかよく分からない微妙な言葉で引き止める。
確かにミササ姉はずっと本ばかり読んでいるせいか、ものすごく体を壊しやすいから、みんなが引きとめようとする気持ちもよくわかった。
「みんなありがとう。でも……でもいいの」
「ミササ姉……」
「確かに私は、クロみたいに物凄く剣術が強かったり魔力をいっぱい持ってたり固有魔法で銃とか戦車とか軍艦とかを召喚できたり格好いいお侍さんみたいな刀も美人でかっこよくて格闘術なら何でもござれな使い魔さんも防弾チョッキみたいなコートも無いけど」
「」
他の3人から、『それ持ってんのクロじゃねぇか』というメッセージ付きの無言の視線とものすごいプレッシャーが僕に送られてくる。
な、何だっての。なんか僕が悪いみたいになってるのこの流れ!?
「でもいいの。私、みんなが心配してくれてるから――――」
目元をそっと押さえながら、健気に振舞おうとするミササ姉。ああもう、いよいよ僕への姉さんたちの視線とプレッシャーが凄まじいことになってきてるっ。
あ……ああもう!いいや!ギブアップ、どうにだってなれ!!
「な、ななななら、なら、ぼっ僕いきますよ!!っうん、がが頑張りますっ!!」
「「「っしゃぁ!!!」」」
なんでガッツポーズ。なんで息ピッタリ。
「あぁクロ!!オメーなんていいヤツなんだ!?どうしても下界に行きたくn…ゲホゲホ、行けねぇ俺たちに代わって下界に行ってくれるなんてよぉ!兄ちゃん感動した!!」
いや、カルム兄、そんなにニッコリした目で見ないでくださいよ。怖いですよなんか。
『ヤンキー』みたいな見た目の分、微笑まれると怖いんですよ。
「ありがとうクロ。本当に、ね」
や、ちょっと、ミササ姉さん、僕を膝に乗せたまま頭を撫でないでください・・・、あ、気持ちいい・・・
「そうと決まれば後は早いわ。キザミ、クロに新しい服でも見繕っておいて。メグルは下界用のゲートを開いておいてちょうだい。カルムは・・・そこで煙草でも吸ってなさい」
末妹のミササ姉の号令で、兄弟たちが三々五々散っていく。
あぁ、でも何だか勢いで決めちゃったしやっぱりもう一回……
「あのぉ……、ミササ姉さ「クロ!!服の用意ができたわ!!ほら、早くこっち来て!!」えっキザミ姉待って」
僕の話を遮ったキザミ姉がミササ姉の膝の上から僕を軽々と抱き上げ、別室へと運んでいく。連れて行くのではない。小脇に抱えて運ばれている。
「え、あ、あのちょっと、僕はミササ姉にお話がっ」
もちろん、運ばれる僕の言葉はスルーして。
「あ、あ――――れ――――――――――――−−−-‐・・・・・」
僕の叫びは、虚空へと消えた。
クロ以外の高位神の皆さんが次回で出番が終わってしまう気がする・・・
ちなみに神界はカオスの巣窟です。うん。
※作者のスケジュールの都合上、更新は基本的に休日になると思います。
また、作者が忙しい時など、更新がまばらになるということもあるかと思います。そのあたりもご了承いただけると幸いです。