大喧嘩の末に
一部宗教に喧嘩を売るような展開になるかと思います。
それでも大丈夫という人だけ進んで下さい。
<プロローグ>
「あーあ・・・。またか」
世界の端が消し飛んだのを感じた彼は、椅子の肘置きに頬杖を突く。
「何でこんなに仲が悪いんだかね。いや、逆に仲がいいのかもしれないけど大迷惑だって。自分達で直せよ、全く」
しばらくブツブツと文句を言い続ける。
「・・・何を言ってるんですか?」
その横で書物を読んでいた一人の青年が、呆れたような声で問いかける。
「ほっとけ。もう、放って置いてくれ。自分が何を言おうと関係な~い」
「主・・・大丈夫ですか?原因は大よそ予想がつきますが」
「だったら仲裁のついでに連れてきて。いい加減、頭にきた。何としてでも解決してやる」
青年は苦笑いしながら頷くと、一瞬でこの場から消え去った。恐らく、消し飛んだ世界の端まで行ったのだろう。
「さて、次は・・・」
目を閉じた彼はふふっ、と笑ってから目を開ける。すると彼の目の前に、先程までいた青年と他二人が立っていた。
「俺は悪くありません!全て隣の奴が悪いんです!」
「先に手を出してきたのはお前だ!・・・何でまたこんな場所に来なければいけないのかっ」
剣を帯びた方が我先にと訴え始めると、隣で腕を組んで立っている方が悪態をつき始める。さっきまで静かだったこの場が、急にうるさくなった。
「はいはい。で、ガブリエル。結果は?」
「はい。いつもの通りです」
聞かなくとも全てを知っているのだが、二人の訴えを受け流すためにそう聞いたのだった。
「だよねぇ」
頬杖を突くのをやめる。
「それで、二人は気が済んだのか?」
酷く冷たい声で、彼が言う。その途端、言い争っていた二人もその威に負けて黙り込んだ。
「私はいい加減、お前達の争いに飽きた。何故和解しようとしないのか」
一度言葉を切ると、彼は右手を前へ差し出す。そして、そのまま振り下ろした。
「時が満ちるまで、向こうで頭を冷やせ。わかったな?」
「そんな・・・ちょっ」
ただの光の玉と化した二人が、揃ってどこかへ飛んでいく。
「・・・いいんですか?」
「もちろん。向こうにはヨエルもいるしね」
どうなるかな。と呟く彼は、久し振りに感じた“わからない”に口の端を歪ませた。