第25話「世界が、少しだけ俺を知り始めた」
第25話「世界が、少しだけ俺を知り始めた」
横浜の朝は、蓮が望んでいたよりも早く訪れた。
ホテルのカーテンの隙間から、朝の日差しが差し込んでいる。
蓮は目を開けた。
06時42分。
数秒間、天井を見つめる。
そして、息を吐いた。
「……まだ寝られる」
その時、スマートフォンが振動した。
一件のメッセージ。
静香:
《蓮、7時30分に朝食ね》
蓮はメッセージを読む。
そして返信した。
《分かった》
三秒後。
《二度寝しないで》
蓮は眉を寄せた。
「……なんで分かるんだ?」
次のメッセージが届く。
《返信が早すぎるから》
蓮は黙った。
「……なるほど」
起き上がる。
支度を終えた蓮は、ホテルのレストランへ向かった。
美雪と静香はすでに来ていた。
美雪はスマートフォンを確認している。
静香はデジタル資料を読んでいた。
蓮は席に座る。
「おはよう」
美雪が顔を上げる。
「おはよう」
静香が微笑む。
「おはよう」
蓮はテーブルを見る。
「食事は?」
静香がビュッフェを指差した。
「自分で取ってきて」
蓮は立ち上がる。
「分かった」
美雪が小さく笑った。
「まだ堅いわね」
蓮が止まる。
「……努力する」
「そのほうがいい」
蓮は皿を取る。
ご飯、焼き魚、卵、それから少しだけ野菜を選んだ。
蓮が戻ってくると、美雪が皿を見る。
「ようやくちゃんと食べるようになったわね」
蓮は座る。
「昨日、お前たちに言われたから」
静香がすぐに眉を上げる。
「私たち?」
「そう」
美雪が自分を指差す。
「私も?」
「二人とも」
美雪が微笑む。
「それならよかった」
蓮は箸を取る。
「何が?」
「少しずつ慣れてきたってこと」
静香も笑いを堪えながら頷く。
「そうだね」
三人は朝食を始めた。
数分間、静かな時間が流れる。
だが、静香のスマートフォンが振動した。
静香が画面を見る。
その表情が少しだけ真剣になる。
「蓮」
「ん?」
「新しい問題が出てきたみたい」
蓮は箸を置く。
「何?」
静香がスマートフォンの画面を回す。
そこには、一つのビジネスニュース記事が表示されていた。
見出しはかなり大きい。
『黒瀬ホールディングス、関東物流市場で注目を集め始める』
蓮はざっと読む。
「……へえ」
美雪が静香のスマートフォンを受け取る。
「もう出たの?」
「うん」
美雪は記事を読み進める。
これまで、ほとんどメディアに登場してこなかった情報が、いくつも書かれていた。
ヤマト物流の買収。
黒瀬ホールディングスのポートフォリオに入った三井マリンフーズ。
サクラ・フレイトへの投資と再編。
そして、21歳のオーナーが率いる急成長中のホールディングス。
だが、蓮の手が止まった箇所が一つあった。
「そもそも、黒瀬蓮とは何者なのか?」
蓮はその一文を二度読んだ。
「なんで俺の名前が出てるんだ?」
静香が答える。
「あなたがオーナーだから」
「それは知ってる」
「そうじゃなくて。今は、他の人たちも知り始めてるってこと」
蓮は黙った。
美雪が画面をスクロールする。
「記事の閲覧数、見て」
蓮は記事の下に表示された数字を見る。
一般的なビジネス記事より、はるかに多い。
コメントも増え始めていた。
蓮の年齢について語るもの。
黒瀬ホールディングスについて語るもの。
会社の初期資本がどこから来たのか疑問を呈するもの。
買収を大胆な判断だと評価するもの。
そして蓮を「謎の若手経営者」と呼ぶものまであった。
蓮は眉を寄せる。
「謎?」
静香が頷く。
「メディアにほとんど出てこないから」
「それなら、いい」
美雪が蓮を見る。
「そうとも限らないわ」
「どうして?」
「あなたが何者なのか分からないと、人は自分で空白を埋めようとするから」
蓮は美雪を見る。
「推測で?」
「そう」
静香も頷いた。
「そして、推測は事実より危険になることもある」
蓮はスマートフォンを受け取った。
いくつかのコメントを読む。
「みんな暇だな」
美雪が小さく笑う。
「そうかもね」
三人は08時20分にホテルを出た。
東京へ戻る道は、昨日までとは少し違って感じられた。
道路が変わったわけではない。
交通量が変わったわけでもない。
ただ、蓮は自分の名前が、もう会社の内部だけではなく外の世界にも出始めていることを知ってしまった。
Ghost Series IIが高速道路を走る。
蓮が運転席。
美雪が助手席。
静香は後部座席に座っている。
今回は高橋はいない。
サクラ・フレイトのチームと一緒に先に東京へ戻り、書類の対応をしている。
美雪がスマートフォンを見る。
「もう1,200件よ」
蓮は前を見たまま尋ねる。
「何が?」
「さっきの記事」
「なんでそんなにコメントするんだ?」
「話題が面白いからでしょうね」
後ろから静香が言った。
「それと、蓮の年齢」
蓮は息を吐く。
「また年齢か」
美雪が笑う。
「その規模の会社を持つには、確かに若すぎるもの」
「数字に年齢はないだろ」
「人にはあるのよ」
蓮は答えなかった。
数秒後、静香が言う。
「蓮」
「ん?」
「コメントを読みすぎないほうがいいよ」
「どうして?」
「過剰に褒める人もいるし、何も知らないのに攻撃する人もいるから」
蓮は頷いた。
「別にいい」
美雪が蓮を見る。
「気にならない?」
「ならない」
「本当に?」
蓮は落ち着いた声で答えた。
「他人のコメントを基準に生き始めたら、自分のために生きる時間がなくなる」
美雪は黙った。
静香もすぐには答えなかった。
やがて静香が微笑む。
「いい答えだね」
蓮は肩をすくめる。
「普通だろ」
美雪が数秒間、蓮を見る。
「そういう言葉だからこそ、余計に注目されるのかもしれないわ」
蓮が少しだけ横を見る。
「なんで?」
「名言みたいに聞こえるから」
蓮はすぐに前を向いた。
「やめろ」
美雪が笑う。
「どうして?」
「俺の言葉を名言にするな」
静香も笑った。
「もう遅いよ」
10時頃、三人は東京へ戻った。
黒瀬ホールディングスのオフィスに入ると、高橋がタブレットを持ってすぐにやって来た。
「おはようございます、蓮さん」
蓮は頷く。
「おはよう」
高橋が画面を見せる。
「今朝のニュース、広がっています」
「どのくらい?」
「かなりです」
蓮はタブレットを受け取る。
新しい記事がいくつも表示されていた。
一社だけではない。
複数のビジネスサイトが、黒瀬ホールディングスについて記事を書き始めている。
見出しも様々だった。
『黒瀬ホールディングス、物流分野で急速な拡大』
『21歳の経営者、異例の成長を見せるホールディングスを形成』
『黒瀬ホールディングス――注目され始めた新たなプレイヤー』
『買収から再編まで――黒瀬蓮とは何者なのか?』
蓮は一つずつ読む。
「……多すぎる」
高橋が頷く。
「まだ始まったばかりです」
蓮が高橋を見る。
「始まったばかり?」
「はい」
高橋は別のページを開いた。
「横浜でのサクラ・フレイトの交渉についても、触れられ始めています」
蓮は眉を寄せる。
「まだ終わってないだろ」
「だからこそ、慎重にしたほうがいいと思っています」
静香がタブレットを受け取る。
「そうですね」
記事を読む。
「幸い、内部の数字までは漏れていません」
美雪が頷く。
「内部数字が出れば、状況は変わるわ」
蓮が立ち上がる。
「情報を流したのは誰だ?」
高橋が答える。
「まだ分かっていません」
蓮は高橋を見る。
「情報源を探して」
「承知しました」
「記事を止めるためじゃない」
高橋が止まる。
「では?」
「会社の情報が、どこまで外に出ているのかを知るためだ」
高橋は頷く。
「分かりました」
蓮は会議室へ向かう。
「それと、過剰な対応はするな」
高橋が小さく笑う。
「いつも通りですね」
その日の昼、黒瀬ホールディングスの会議室は、それほど広くなかった。
蓮はテーブルの端に座る。
高橋が報告を始める。
美雪と静香も同席していた。
大きな会議ではない。
あくまで状況確認だった。
高橋が口を開く。
「まず、サクラの状況です」
スクリーンにデータが表示される。
サクラ・フレイト株式会社
売上高:12億4,000万円
営業利益:1億5,000万円
現金:3億1,000万円
従業員:45名
カントー・リテール・ロジスティクスからの売上比率:31%
当初の配送単価引き下げ要求:8.5%
セイワ・ディストリビューション・ネットワークからの提案:現在のサクラの契約体系より最大12%低い
蓮は最後の数字を見る。
「カントーの状況は?」
「まだ決定していません」
「サクラは?」
「こちらで組んだ戦略に従っています」
蓮は頷く。
「それならいい」
静香が続ける。
「一つあります」
蓮が見る。
「何?」
「黒瀬ホールディングスという名前が、世間の議論に出始めています」
「そうだな」
「これが続けば、外部の人間はサクラの判断をすべて蓮と結びつけるようになります」
蓮は背もたれに体を預けた。
「俺がオーナーなんだから、当然だろ」
「そうですね」
静香は蓮を見る。
「でも、世間は私たちほど、会社の判断と個人の判断を分けて見ません」
蓮は黙った。
美雪が続ける。
「それに、人が蓮を見る目も変わってくる」
「例えば?」
「協力したい人」
美雪は一度言葉を切る。
「利用したい人」
「潰したい人」
「ただ興味がある人」
蓮は頷く。
「つまり、問題は注目か」
「そう」
蓮はスクリーンを見る。
「どれくらい?」
高橋が別の資料を開く。
「本日昼までのメディアとSNSの監視結果では、まだ大きくありません」
「数字は?」
高橋が答える。
「現在、社内分析システムで使用している公的認知度指数の約0.8%です」
蓮は高橋を見る。
「0.8%?」
「はい」
美雪が尋ねる。
「その数字は何を意味しているの?」
高橋が説明する。
「蓮さんを知っている人口の割合ではありません。蓮さんと黒瀬ホールディングスという名前が、関連性の高い一般の会話の中で、どれだけ継続的に登場しているかを測る社内指数です」
蓮は頷く。
「なるほど」
静香が資料を開く。
「それに、上昇傾向です」
「どれくらい早い?」
「過去24時間で、ほぼ倍になっています」
蓮は数字を見る。
「まだ小さいな」
美雪が首を横に振る。
「急速に増えている小さな数字を軽く見ないほうがいいわ」
蓮は美雪を見る。
「なぜ?」
「世間の注目って、そういうものだから」
美雪がグラフを指す。
「最初は少しだけ」
「そこから人が話し始める」
「別のメディアが気づく」
「また別の人が話し始める」
「そして気づいた時には、誰もがあなたのことを知っているような状態になる」
蓮は黙った。
「……疲れそうだな」
静香が小さく笑う。
「まだ始まってもいないよ」
午後。
蓮は再び大学へ戻った。
いつもの場所にP9LMを停める。
車から降りると、建物の近くに田中浩平が立っていた。
田中は蓮を見る。
それからスマートフォンを見る。
そして、もう一度蓮を見る。
「お前、ニュースに出てるぞ」
蓮が近づく。
「何?」
「お前だよ」
「もう聞いた」
「一つじゃない」
田中はスマートフォンを見せる。
「いくつもある」
蓮はざっと見る。
「……へえ」
田中は眉を寄せる。
「それだけ?」
「どうしろって?」
「少しくらい驚けよ」
「驚かない」
田中は蓮を見る。
「蓮」
「ん?」
「自分の名前が知られ始めてるって分かってるか?」
「少しは」
「少し?」
田中はスマートフォンを指差す。
「クラスのグループでも、お前の話題になってる」
蓮は足を止める。
「本当に?」
「本当」
「なんで?」
「お前が今年注目される若手経営者の一人って書かれてる記事があるからだよ」
蓮は空を見上げる。
「……俺、ただ大学に通ってるだけなんだけどな」
田中が笑う。
「それが問題なんだよ」
「何が?」
「お前、本当に変だよな」
蓮は息を吐く。
「ありがとう」
「褒めてねえよ」
「知ってる」
田中がまた笑った。
二人は建物の中へ入っていく。
授業が終わったあと、蓮はすぐには帰らなかった。
図書館の席に座る。
ノートパソコンを開く。
だが、画面に表示されているのは会社の資料ではない。
大学の課題だった。
数分後、隣の席にいた学生が近づいてきた。
「あの……すみません」
蓮が顔を上げる。
「何?」
「黒瀬蓮さん、ですよね?」
蓮は一瞬黙る。
「そうだけど」
学生は少し気まずそうに笑う。
「さっきの記事、見ました」
「そう」
「黒瀬ホールディングスって、黒瀬さんの会社なんですか?」
「そう」
「すごい……」
蓮は待った。
学生は何か言おうとしていた。
だが、結局口にしたのは一言だけだった。
「すごいですね」
「ありがとう」
学生は自分の席へ戻っていった。
蓮はノートパソコンを見る。
別に問題はない。
だが、五分後。
別の人間が同じことを聞いてきた。
その後、もう一人。
さらに二人。
蓮は少しずつ理解し始めていた。
今までとは違う。
大学では、ずっと普通の学生でいられた。
だが今は、少しずつ違うものとして見られ始めている。
蓮はノートパソコンを閉じた。
「……面倒だな」
夜。
蓮は赤坂レジデンスへ戻った。
ソファにバッグを置く。
スマートフォンには大量の通知が届いていた。
いくつかは会社のグループ。
いくつかは大学関係。
高橋からのものもある。
だが、一番多いのはSNSだった。
蓮はその一つを開く。
黒瀬ホールディングスという名前が話題になっている。
まだ全国的なトレンドではない。
まだ。
だが、会話量は増えていた。
蓮の車について話す人。
生活スタイルについて話す人。
家族の背景を推測する人。
裕福な家の後継者だと考える人。
すべて自分で築いたのだと言う人。
さらには、オフィス周辺で誰かが行った短いインタビューについてまで話している人がいた。
蓮は息を吐いた。
「本当に興味津々だな」
スマートフォンが振動する。
美雪からだった。
《もう着いた?》
蓮は返信する。
《着いた》
すぐに返事が来た。
《SNS、あまり長く見ないで》
蓮は小さく笑う。
《もう遅い》
美雪から返事が来る。
《そうだと思った》
その直後、静香からもメッセージが届いた。
《あまり夜更かししないでね》
蓮は返信する。
《二人とも、だんだん似てきたな》
数秒後。
静香:
《違う》
美雪:
《私もそう思う》
蓮は二つのメッセージを読む。
そして、小さく笑った。
スマートフォンを置く。
22時48分。
蓮は赤坂レジデンスのバルコニーに座っていた。
東京は、光の海のように広がっている。
手にはコーヒー。
音楽もない。
テレビもつけていない。
遠くから聞こえる街の音だけがある。
テーブルの上に置いたスマートフォンが、再び光った。
だが、今回はメッセージではない。
システム画面だった。
《絶対資産支配システム》
蓮は画面を見る。
《環境変化を検知しました。》
次の一行を読む。
《利用者の資産が外部から認知され始めました。》
そして――。
《公的認知度:0.8%》
蓮は眉を上げる。
「さっきの数字か」
画面が変わる。
《公的認知度が上昇しています。》
《0.8% → 1.7%》
蓮は黙った。
さらに数字が変わる。
《1.7% → 2.9%》
「早いな」
そして――。
《2.9% → 4.6%》
蓮は画面を見つめる。
《公的認知度:4.6%》
《初期社会的影響力の条件を満たしました。》
蓮はカップをテーブルに置く。
「社会的影響力?」
次の画面が表示される。
《次段階では、資産そのものに依存することなく、認識・信頼・注目をコントロールする能力が必要となります。》
蓮は眉を寄せる。
「必要ないだろ」
画面は消えない。
《評価を完了しました。》
そして、一行が表示される。
《候補能力を検出しました。》
蓮はゆっくり読む。
《カリスマ》
「……カリスマ?」
淡い光の輪が浮かび上がる。
《上位能力の解放条件が、ほぼ満たされました。》
蓮はそれを見つめる。
金ではない。
車でもない。
会社でもない。
これまでの報酬とは比べものにならないほど、面倒そうな能力が一つ。
蓮は息を吐いた。
「その能力で、みんなが俺を気にするようになるなら……」
東京の街を見つめる。
「……いらないな」
システムは答えなかった。
ただ最後の一行だけが表示された。
《利用者の行動に基づき、評価を継続します。》
画面が消える。
蓮は再びコーヒーを手に取った。
「それでいい」
だが、数分後。
再びスマートフォンが振動した。
高橋からだった。
《蓮さん》
《新しい動きがあります》
蓮は返信する。
《何?》
しばらくして返事が来る。
《大手芸能会社の一社から、黒瀬ホールディングスへ連絡がありました》
蓮の動きが止まる。
続けてメッセージが届く。
《蓮さんに、あるプロモーション企画への出演を提案したいとのことです》
蓮は眉を寄せる。
「……いや」
すぐに入力する。
《断って》
だが、高橋のメッセージはまだ終わっていなかった。
《蓮さん》
《単なるプロモーションの提案ではありません》
蓮は待つ。
しばらくして、次のメッセージが表示された。
《黒瀬ホールディングスを、エンターテインメント業界へ参入させる可能性について話し合いたいとのことです》
蓮は画面を長く見つめた。
エンターテインメント業界。
それは、蓮がこれまで一度も考えたことのない分野だった。
世間の注目を避けようとしていた矢先。
今度は、別の業界のほうから扉を叩いてきた。
スマートフォンが再び振動する。
今度はシステムだった。
《上位能力の解放条件を更新しました。》
《公的認知度:4.6%》
《社会的注目:上昇》
《対人影響力:上昇》
《外部からの信頼度:上昇》
《能力解放条件が、ほぼ完全に満たされました。》
そして――。
《適合能力:《カリスマ EX》》
蓮はその名前を見つめる。
「……本当にいらないんだけどな」
システムが現れてから初めてだった。
ある能力が、蓮の穏やかな生活をこれまで以上に面倒なものにするかもしれない。
そして、さらに悪いことに――。
注目を避けようとすればするほど。
世界は、少しずつ蓮に注目し始めていた。
【次回、第26話――「俺、芸能人になるつもりないんだけど」】
黒瀬蓮の名前は、さらに知られるようになっていく。
芸能業界からのオファーも届き始める。
しかし蓮には、公の場に出て有名人になるつもりなどまったくない。
黒瀬ホールディングスへの注目が高まる中、システムはついに評価を完了する。
《カリスマ EX》
蓮をさらに裕福にする能力ではない。
車を与える能力でもない。
会社を与える能力でもない。
人の注目を集め、信頼を築き、他人の記憶に自分の存在を残しやすくする能力。
問題は一つ。
蓮自身が、それを最も望んでいないことだった。
そして、芸能業界から届いた最初のオファーによって、蓮はその能力を使うのか……。
それとも、無視するのか。
【第26話へ続く――】




