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FXに夢と希望を託した男の末路 〜1クリックで全財産を飛ばした俺の泥臭い出稼ぎループ戦記〜  作者: オーストリッチマン


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第5話 再び軍資金を確保へ

カクヨムにも掲載しています

(……ポンド円で負けた分はしょうがない。残りの50万で勝負に出るか?)


 いや、ダメだ。レバレッジが最高25倍に規制されてしまった今、軍資金は多ければ多いほど精神的な余裕に繋がる。

 そう判断した俺は、トレードを一時封印し、再び軍資金を作るための『出稼ぎ労働』に出ることを決意した!


(なんか良い仕事、転がってないかなぁ……)


 血眼で求人サイトを漁っていると、お宝のような求人を発見した。

 職種は工場勤務。時給は1300円で、なんと『寮費無料』。

 家賃という最大の固定費がかからないなら、全額をFXの軍資金に全振りできる。最高の環境だ。


(ヨシ、ここに決めた!)


 すぐさま応募すると、トントン拍子で採用が決定した。


 今回の就労条件には「電気配線ができること」とあったため、まずは派遣会社の研修センターでみっちりと基礎を叩き込まれることになった。


 ◇


 無事に研修を終え、俺は意気揚々と派遣先の『山口県』へと移動した。


(マジかよ、新築で家賃タダかぁ! ツイてるぜ!)


 あてがわれた寮は、まさかのピカピカの新築物件だった。

 幸先の良いスタート。新生活に向けて、俺のやる気は限界突破していた。


 そして迎えた初出社の日。


(さすがにデカいな……)


 派遣先は、新幹線の車両を作る巨大な工場だった。敷地の広さは、以前働いていた自動車工場とタメを張るレベルだ。


 配属前にもう一度、工場独自の研修を1週間ほど受ける。事前に派遣会社のセンターで叩き込まれていたおかげで、難なくクリアできた。


(いよいよ来週から現場に配属かぁ。よし、稼ぐぞ!)


 週明け。気合を入れて出社し、案内された配属先で班長と顔を合わせた。


「キミ、ここに来る前はどこでどんな仕事してたの?」

 班長からのありふれた質問。俺は正直にこれまでの経歴を答えた。

 すると、班長の顔がみるみるうちに険しくなり、信じられない言葉を口にした。


「……え? ウチ、電気配線の『経験者』を頼んでたんだけどな……」


 どうやら、この部署は即戦力となる経験者をピンポイントで要求していたらしい。


(えっ!? いやいや、『未経験OK』の求人だったから応募したんですけど!?)


 未経験OKという条件で採用された旨を必死に説明したが、現場の班長には聞き入れてもらえず。結局、その日は「とりあえず見学してて」と放置プレイを食らうハメになった。

 ただ突っ立ってボーッとするだけの地獄のような数時間を耐え抜き、初日は終了。


 そして翌日、出社した俺に班長が冷酷に言い放った。


「やっぱり、未経験者とは契約できないわ」


 ……まさかの『クビ』宣告である。


(ハァァァア!? 何だそれ、俺のせいかよ!?)


 怒りのマグマが沸点に達しそうになったが、派遣社員の俺に決定権はない。抗ったところでどうにもならないのだ。

 ――理不尽な強制ロスカット。FXのチャート以外で、まさか現実世界でもこんな理不尽を食らうとは思わなかった。


 当然、すぐさま派遣会社に報告し、派遣会社側からも猛抗議してもらったが、決定が覆ることはなかった。

 一番納得がいかなかったのは、他の部署に配属された『同期の未経験者たちは誰一人クビになっていない』という事実だ。

 俺が配属された部署だけが、運悪く「経験者必須」のハズレ部署だったのだ。


(FXで理不尽に金を飛ばしたと思ったら、今度は不可抗力でクビかよ……。マジでついてねぇ……)


 だが、立ち止まっている暇はない。俺は怒りを無理やり飲み込み、派遣会社に別の工場を探してもらった。

 すると、同条件の仕事がすぐに見つかり、俺は新築の寮に別れを告げて『新潟県』へと飛ぶことになった――!


 ◇


 山口県から新潟県へと大移動し、新たな寮に案内される。


(……ボロッボロじゃねぇか……)


 目の前に現れたのは、ピカピカの新築から一転、築30年は下らないであろう昭和の匂いがするオンボロアパートだった。

 まぁ、寮費無料だし文句は言えまい。そう自分に言い聞かせ、雪国・新潟での生活がスタートした。


 ここでの仕事は、クリーンルーム内でスマホの部品を作る作業だ。

 自分で言うのもなんだが、出稼ぎを繰り返した俺の適応能力は半端ない。あっという間に仕事を覚え、即戦力となった。


 しかも、クリーンルームでの作業は想像以上に快適だった。

 年中気温が一定に保たれているため、夏は涼しく冬は暖かい。おまけにホコリ一つない空間なので、花粉症の症状もピタリと治まる。

 過酷な外仕事や重労働を経験してきた身からすれば、まさに天国のような環境だった。


 そんな天国で順調にお金を貯めていた、ある日の深夜。

 俺は、背筋が凍るような衝撃的な光景を目撃することになる。


 ――それは、夜勤の昼食休憩(深夜)の最中のことだった。


 休憩室でパンをかじりながら、スマホで何気なく為替レートを開いた瞬間。

 突然、ドル円のレートが狂ったように上下にぶっ飛んだのだ!

 慌ててユーロやポンドのチャートに切り替えると、そっちも尋常ではない速度で巨大なローソク足を形成している!!!


(――えっ!? な、なにこれ!?)


 レートが1円単位でワープするように飛ぶ異常な光景。あの全財産を失った『フラッシュ・クラッシュ』以来の悪夢だ。


 数分後、経済ニュースの速報が飛び込んできた。

 『スイス国立銀行、対ユーロの上限(為替介入)を突如撤廃』。

 安全通貨とされていたスイスフランのタガが外れ、世界中の相場がパニックを起こしていたのだ。


(よかったぁ……!! いま、ポジ持ってなくて……!)


 俺はスマホを握りしめながら、心の底から安堵した。

 いつもなら「ここが底だ!」とリバウンド狙いで飛び乗るところだが、今は仕事の休憩中。チャートに張り付くことはできないため、強制的に参戦を諦めるしかなかった。


 もしあの荒波に飛び込んでいたら、大勝ちしていたかもしれない。だが、それ以上の確率で、全財産がチリになっていたはずだ。

 だから、あの時『ただ静観した』ことこそが、俺のトレーダー人生における大正解だったと思う。


 翌日。仕事終わりにSNSを開くと、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 『数千万溶かした』『追証(借金)で破産した』という悲鳴がタイムラインを埋め尽くしている。

 個人トレーダーだけでなく、大手の海外証券会社すらも一瞬で倒産に追い込まれるほどの、文字通りの大災害だった。


 ――だが、相場は等価交換。誰かが死んだ裏で、一撃で数億円の爆益を叩き出したバケモノたちも確実に存在していた。


 これが、2015年1月15日。

 後に『スイスフランショック』として歴史に名を刻むことになった、本物のショック相場である。

YouTub(オーストリッチマンのFX)でリアルトレード配信をしています。

過疎配信ですが、FXやラノベなどの話をしに来てください!

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