2.観測者
協会は街の中心部に位置している。行き交う人々の服装と見比べれば、今着ているダウンジャケットにデニムパンツはあまりに異質である。
(そういった服はあんまり出回っていません。この街は治安が良いから大丈夫ですが、スラム街に行くと身ぐるみを剥がされてしまうので注意してください)
「了解」
床がギシギシと軋み、受付まで歩く。スーツを思わせる正装の受付嬢がいた。
「戸籍登録をしに来ました」
「戸籍登録ですね、お名前と少量の血液をお願いします」
まち針のようなもので親指をチクリと刺す。
血は一滴だけ、透明な水晶板の上に落ちた。
その水晶が、ほんのわずかに脈打った気がした。
「イテテ…あ、名前はラッキー•オルデンです」
「オルデン…承知しました。では登録まで少々時間がかかるので、こちらの職業本をご覧になってください」
(ここでは大きく分けて3つの職があります。開拓者、発展者、そして観測者です)
「観測者?」
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開拓者に該当する職は「騎士」「魔法使い」「狩人」「傭兵」「司令塔」など多岐にわたる。若者に人気の職で、歴史の謎を解き明かす最先端を行く者がいる。
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「いいね、楽しそう」
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発展者に該当する職は「料理人」「建築家」「司書」に加えて国務をこなす職全般も含む。言わずもがな人口が1番多い職で、開拓者と異なり永住地を持つ者が多い。
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(過去の来客は皆、発展者になっていました。あちらの世界とは命の価値観や倫理観がズレているようで、「開拓者のような危険な職は嫌だ」と言っていました)
「なるほど、確かに現実じゃ人が1人殺されればニュースに取り上げられSNSは盛り上がる。こっちじゃそんなこともないのだろう」
SNS…待てよ…?
勢いよくポケットに手を突っ込んでiPhoneを取り出す。電源は付かず、オーバーヒートしたように中の基盤が焦げ出ている。
(そちらは?)
「いや、何でもない」
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観測者に該当する職は、「神託」「翻訳家」「継承者」など、他の職と比べて唯一条件付きの職である。特殊な生まれや血縁関係がある者が多い。まだ記録に存在しない例もある。
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「神託は分かるけど…他の職は”観測者”って感じしないな」
(生まれが特別な方は、一般人の上に立つ者として上から見下ろす”観測者”として捉えられています)
「あまりにも価値観が違いすぎないか?人は皆平等じゃないのかよ」
「お、お待たせしました!ラッキー様!」
受付嬢は、髪型が崩れているのも気にせず裏から出てきた。
「ラッキー•オルデン様、観測者の——いえ、観測者として登録可能な素質が確認されました!」
「え?」




