表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

23

空中に、結界が張られている。ロワが不思議そうにそれを眺める。


「どう!?」

(めっちゃ…不安定かもです)

言われたその瞬間に結界が解ける。


「なんでぇ…空間指定も空間把握も完璧なのに」

(結界生成が甘いのでは?)

「だってコンロが…」



コンロは少し前、ラッキーにこんなことを話していた。

「結界魔法は、感覚を掴めば終わり!空間指定も空間把握も結界生成も全部一緒!結界が作れるのは大前提で、どれだけ早く結界を生成できるかが大事だね!」

「なるほど」

「分かったら早く将棋しよぉ〜」

将棋盤を持って胸元に飛び込んでくる。赤眼を活かして華麗に避ける。コンロは一枚上手で、避ける方向を読んでラッキーにぶつかる。

「いえ〜い」



(それは完全に、早く将棋がしたいから嘘をついているだけです。魔法は感覚だけでは掴めません。使用する魔力量を体を慣れさせる必要があります。それを感覚と呼ぶのかもしれませんが)


「でも、空間指定も空間把握も結界生成も全部魔力量違うからぁ、全部同じ感覚で出来ないよねぇ〜」


不貞腐れながらも、ラッキーは修行を続ける。その姿を、お茶を啜りながらシロエがじっと見ていた。


コップの下に、空間指定の魔法線が現れる。そして、コップを包むように空間把握の魔法板が四枚生成されて、最後。


「ほっ」


コップは、角が揺れている結界に包まれて、すぐに解ける。


「できた…ラッキー様、私も負けていませんよ」

シロエは一人で、結界魔法の習得に勤しんでいた。




~~~




水面は夕日の光を反射してきらきらしている。風は弱く、静かで、魔物の気配もない。


「よーし! 今日は修行じゃなくて、遊びだからね!」

コンロはそう言って、釣り竿を高く掲げる。元気が良すぎて、糸がぴしっと音を立てた。


「……修行じゃない、はずだよね」

「釣りも集中力いるから修行だよ? ほら、結果オーライ!」


 ラッキーは苦笑しながら、竿を受け取る。魔法線を引くときと同じように、無意識に姿勢が整っているのを見て、コンロはにやにやした。


「もう完全に職業病じゃん」

「毎日やってるからしゃーなくない?」


 二人並んで腰を下ろす。

 糸を垂らすと、水面に小さな波紋が広がった。


「ねえラッキー」

「ん?」

「結界、上手くいかなくて悔しかった?」


 少しだけ、声音が落ち着いている。

 ラッキーは一瞬考えてから、正直に答えた。


「悔しいっていうか……焦るかな。出来ると思ったことが、出来ないと」

「そっかぁ」



「でもさ、出来ない時のラッキー、結構好きだよ」

「……どういう意味?」

「ラッキーがこの世界に来てくれて良かったってこと!それで相棒にして良かったって意味だよ!」

 パッと笑って言い切る。その横顔は、いつも通り無邪気だった。


 突然。


 ぴくり、とラッキーの竿が揺れた。


「……来た」

「え、うそ!?」


 ラッキーは慌てず、糸の張りを感じ取る。

 引きは強くないが、確かに生き物の反応だ。


「今だよ今だよ!」

「分かってる…よっ」


 ぐっと竿を引く。

 水面が跳ねて、小ぶりな魚が姿を現した。


「釣れたー!!」

「やったじゃんラッキー!」


 コンロは自分のことのように喜んで、思わず抱きついてくる。

「ちょ、魚、魚!」

「えへへ、ごめん!」

 魚を外して籠に入れると、二人は顔を見合わせて笑った。


「ねえ」

「ん?」

「結界もさ、今日みたいにさ」

「うん」

「一回失敗しても、ちゃんと待って、引けばいいんじゃない?」


 ラッキーは、その言葉を噛みしめる。


「……昨日のアドバイスとは裏腹に、やけに的確だな」

「でしょ! 私、天才だから!」


 胸を張るコンロを見て、ラッキーは小さく笑った。


「じゃあ、もう一匹釣れたら、将棋一局付き合うよ」

「えっ本当!? 約束だからね!」


 水面に、また静かな波紋が広がっていく。

 結界は張れなくても、この時間だけは、不思議と壊れなかった。




~~~



「危険すぎる」

「私も同意見です」

(基本的にラッキーさんの意見を尊重しますが、私も反対ですね)


 緊急会議。四人で話をしている。ラッキーが初めて自分で釣った魚を、自分で調理したいと言ったからだ。


「私は、ラッキーさんにしかできないならやるべきだと思います」

「なんで?今ラッキーは結界魔法も習得してない。私より強い魔法使いや剣士だって存在している!」

(史官となれば、そのような者に命を狙われる可能性があります)


 一呼吸おいて、シェルは言う。


「ではなぜ、私のもとへ彼を連れてきたのですか?」

「それは、強くなった時に史官としての振る舞いを教えて欲しかったの」

「ラッキーさんは強くないと?」

「強いよ!強いけど…史官として一人で動くなら、もっと圧倒的な力が必要でしょ!」


 ラッキーは食卓に料理を運んでいる。何も言わずに、漏れる会話を聞き取っていた。


「一人、かは分かりません。現に、灯台の影や協会も彼に目をつけているではないですか」

「あんなやつら信用できるか!」

「落ち着いて」


 全ての料理を運び終えて、ラッキーは席につく。


「話を、一から全部聞かせて」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ