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魔法の線を、伸ばせるだけ伸ばしてみる。海に到達しても止めない。線がブレるまで、続ける。


「ラッキー様、茶菓子が届きました。いかがですか…」


ピキッと魔法の線が軋み、そのまま魔力が途切れた。鯨が水面に顔を出した時のように波打つ。


「あ…邪魔をしてしまって申し訳…」

「いいよ、それより茶菓子の方が気になる。この世界に茶菓子なんてあるのか?」


和室に向かうと、コンロとシェルが口元をニヤつかせながら一つの小箱を見つめている。

「ラッキー!ようやく来たね!」

「私の父が好んで買っていたものです」

蓋を開けてみると、既視感のある見た目をしていて、甘い匂いが鼻を通っていく。

「…紅葉まんじゅう!?」

「やっぱり知ってるんだ!」

「知ってるも何も…めちゃめちゃ有名だぞ、これ」

(異世界に、根付いている菓子なのですか?)

ちょこんと頭に乗ってきたロワを捕まえて、箱に近づける。

「まあ、とある地方の特産品、と言ったところかな」

ふんわりとした生地に、中の餡子が口を幸福で満たしてくれる。至高の一品。


“珊瑚の貯蔵庫”とパッケージに書かれている。


「どっかで聞いたことあるような、ないような」

「狩人の組合だね!」

(食品の原材料から生産、販売までこなす大規模なクランです)


そういえばメルたちからそんな話を聞いたな、と思い出す。冒険者としてセキレイの山岳に行った記憶が頭によぎる。

「なんか懐かしいな」

「何がですか?」

「いや、なんでもない」


珊瑚の貯蔵庫には、オルデンの名を持つ者が確実にいる。もしくは、いた。そう確信した。




~~~




「ラッキーさん、今日から本格的に史官としての心得をお伝えします」

「おす」

「まずは基本。史官はこの世界書というものを受け取ります。世界書にはこの世界で起きた出来事、その時代が載っています。全ての事柄が、記載されています」


 史官の仕事はこの世界書に追加記載すること。その歴史が正しい、正しくないに関係なく記載することができる。


「ずるい!なんでもありじゃん」

「そうです。ですから、以下のルールが設けられています」


三名以上の史官が異議申し立てを行うことで、その歴史は削除される。その異議申し立てに、正しい根拠があれば成り立つ。

また、世界書に追加記載すると、観測者(史官や継承者)と発展者(国に関わる人物や一般市民など)全員に伝書鳩で通知が送られる。


「削除する側は、正しい根拠が必要なのか」

「そこがミソですね。しかし、間違った情報を流そうものなら国があり得ない量の軍を史官に向ける、なんて状況も起きかねます」

「それはヤバい」

「なので、追加記載する際はくれぐれもご注意を」


一息おいて、シェルは言う。


「ここから、史官の真髄をお話しします」



~~~



「灯台の影」の頭領であるアンビシオンは、書類を何枚も睨んでいた。

「アンビシオン様、モルテンがお見えです」

「入れ」

「失礼します、セキレイの山岳に向かったラッキー•オルデンに関する話を」

「セキレイの山岳…ね、もうセキレイはいない。ついでに赤眼鳥(レッドゴート)も行方をくらますなんて」

「その件に関しまして、フロルからの伝言と絡めて予想される真相をお話ししてもよろしいでしょうか」

「その前に、俺の予想をいいか?」


アンビシオンは椅子の背もたれから背中を離して、前傾姿勢をとる。


「ラッキー•オルデンは未開拓の地「セキレイの山岳」に関する情報を誰かから受け持っていた。そしてセキレイの山岳にかけられていた魔法を解いて、ただの山岳地帯に戻した。こうすることで、赤眼鳥(レッドゴート)から逃れた」


「…少し私の見解と被っている部分がありますね。異なる部分は最後。ラッキー•オルデンは赤眼鳥(レッドゴート)に呪いをかけられ見逃されているようです。その直後、異質なセキレイを追いかけて姿をくらました。これは偶然起こったこととは思えません。誰かがラッキー•オルデンを動かしている可能性が高いですね、それも超大物が」


「前半は俺の意見に賛成ってことか?」


「…セキレイの山岳に関しては、謎が多すぎてまだ何もわかっていません。かつてその地にあった魔力が消滅していたのは確かですが、それでも何がどう作用しているのかは考えても意味がありません。手がかりを探るためにも、ラッキー•オルデンに接触できる機会があれば私に」


「分かった。下がれ」


モルテンは綺麗に一礼をして、部屋から離れる。

その背中を見ながら、アンビシオンは頭を抱える。


「どうなさいました?」

「優秀な部下がいると、自分の存在価値が分からなくなる…」


秘書はため息をついて、書類を重ねる。

「アンビシオン様、あなたは最上史官であるということを、忘れないでください」


また一人、優秀な部下が部屋から出ていった。

















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