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「おはようございます」

「…おはようシロエ」

どんなに夜更かししても、朝になればシロエが起こしにくる。怖いくらいに、毎日同じ時間帯なのだ。

「シロエはいつもどのくらいの時間に起きているんだ?」

「私は太陽が登ってくるまでには必ず起床しています」

「はっや」


起床後、フライパン片手で魚料理を作る。基本的に島でのご飯は魚料理と決まっている。元日本人のラッキーからしたら有難いことである。

「よっと」

フライパンを振って、焼き飯を作る。朝から焼き飯はハイカロリーだと思うがコンロからの頼みなので断りずらい。

横長の皿に、焼き魚。人数分の皿を準備して焼き飯をよそう。

「朝ごはんできたよぉ」

「もうちょっと…寝る…ぐはっ」

(ラッキーさん、もう少しだけ待ってください)

寝癖ボサボサのコンロが、ロワに叩き起こされている。シェルは気付けば食卓にいる。シロエはフライパンをずっと見ている。本当に、ずっと。

「そろそろ席座ろ、シロエ」

「はっ、すいませんラッキー様」


全員でご飯を食べたら、次は結界魔法の基礎を学ぶ。

空間指定→空間把握→結界生成の順で魔法を展開する。この三段階の魔法を使った術を結界術と呼ぶらしい。

まずは、地面に正方形の空間を自身で指定する。長方形でも構わないが、結界術は円形になると柔くなるらしい。なので、綺麗な直線を描くように魔法を使う。


「空間指定!」


ぐにゃりと空間が歪み、魔力反応が途切れる。うまく直線にならず、歪んだ線になってしまった。まずは、この空間指定をうまくできるまで特訓が必要である。


昼過ぎになるとコンロと将棋を指す。令和と室町で、時代を変えたストラテジーゲームコンテンツである。

コンロは暇な時、一人で勉強をしているし、頭もキレるのでラッキーなど敵ではない。


「まだまだだね!」

「はえぇ?」


ほぼ全ての手駒が取られて詰み。やってられない。

次は魔力操作の特訓。ラッキーが渡してきた木製の小箱。これは、魔力を込めることで浮かぶ。この小箱を浮かす。それだけなのだが…。


天井に当たって落下。魔力を雑に扱うと変な方向に飛んでいく。その場に留めるのに、神経がすり減っていく。コンロに手本を見せてもらう。


「このまま寝ちゃいそうだわぁ」

「マジか」


異次元すぎる。もはや悲しい。コンロに勝っている分野が一つでもあればいいのに。

夜になるまで、シロエとお茶を啜りながらダラダラする。たまにコンロもコタツに入りにくるが、ロワに引き戻されて書斎へと戻っていく。


「最近ハマっている本は、こちらの本です」


趣味は読書。主人に従順。礼儀正しく敬語もバッチリ。隙のない人間である。


「結界魔法、修行の進み具合はどうなのですか」

「全然進んでない。最初のステージすらクリアできない、まさに無理ゲーって感じで」

「むり、げー?」

「ああ、こっちの話」

ここでの生活が心地良すぎて、ラフに話をしてしまう。会話面では、昔の自分が戻ってきているようだ。


「私も興味があります、結界魔法」

「…うーん」

「ラッキー様、是非私にもその結界魔法の———」

「ダメだシロエ。君は魔法使いにはなってはいけない」

後ろからシェルが声を挟む。しょんぼりしながら返事をして、シロエは外に出て行った。


「なぜですか?」

「ラッキーさんには才能がある。魔法使いになっても、開拓者として戦地に駆り出しても死なない。それは異国の地から来た何かが影響していると私は思うのです」

「もしかして、シェルさんの父も何かあったのですか、才能が」

「父は鬼才でした。東の一国を治めて軍の長官まで登り詰めて、開拓者として文献を一つ発見した…」

「ロワの話ですと、オルデンの名前を持っている普通の人もいたとのことですが」

「…東の一国に、サラオルの惣菜という店があるのですが、店主はオルデンという名を持っていました。この店は開店してわずか一週間経たずで大人気となり、店名を街に轟かせました」

「なるほど」

「オルデンという名前がつけば、何かしら才に恵まれるということ。あなたはそれを理解した方がいい」


「私はただ、シロエを死地に向かわせたくないのですよ」

シェルは「さ、ご飯の時間ですね」と呟いてキッチンに向かう。その背中はどこか寂しさを感じさせた。


夕日が沈み、五人で晩御飯を囲む。ラッキーの一日が終わる。













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