17.お引っ越し
「魔物になったのは、結界内で魔力を浴び続けて自身の許容範囲を上回ってしまったからだろう。何千年も結界内に閉じこもっていたらそうなる」
彼は消えていく。ゆっくりと、たんぽぽが種を飛ばすように体が崩壊していた。
「どうした?」
「結界が解ける。そうなれば今まで何千年もの寿命が一気に押し寄せるだろう」
(魔物なのに寿命があるのですか)
「結界外に出れば、私は魔物なんてものにはならない。昔生きていた、過去の人物に過ぎない」
「…君」
ラッキーの方を向いて、消えかかる口から最後の力を振り絞って、声が放たれる。
「…赤眼鳥は頼んだよ」
翌日から、世界中でセキレイの山岳が話題となった。赤眼鳥の行方、セキレイの消失。セキレイの山岳地帯は再び謎に包まれた。
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某日。
魔女の家にドアベルが鳴り響く。
「おかえりぃ〜!」
コンロはラッキーの胸元に頭突きをして、豪快に出迎えていた。
「…流石に骨が折れたよ」
「そんな力で突進しちゃった!?」
「いや、そういう意味じゃない…」
事の顛末を話す。コンロの手は止まることなく動き続け、その度に紙が文字で埋め尽くされていく。
「君は成長速度が半端ないね!」
歴戦の猛者である剣士を手にかけ、赤眼鳥から認められた。狩人になってまだ日が浅い。これは過去に類を見ない例である。
「赤眼鳥、呪い、結界術、発見した文献。戦争の引き金となった事件。これは大収穫なんてもんじゃないね!」
(発見した文献には何が記載されているのですか?)
「んーとね、結界術だね!」
「結界術?」
「言うなればこれは結界魔法の魔導書だね。文献としてはハズレだけど、魔導書としては一級品だ。なにせ結界魔法を使える魔法使いなんてほぼいないからね」
「ハズレだったかぁ」
「結界魔法、習得しな?これは強いよ」
いつになく真剣な眼差しで、コンロは言う。
「まあ『すぐに遠征に行こう!』っていう気にもならないから、結果魔法を会得するまでは待機でいい?」
「いいよ!いいよ!むしろそうして!」
(私情がダダ漏れですよ…コンロ様)
「私情?」
ぴょんぴょんと跳ねて、コンロは椅子を揺らす。
(次の遠征予定地はどこなのですか?)
「うーんとね…まぁ…海!」
「海?」
「ここは思いっきり内陸部だし、修行をするにしてもここは適切じゃない!なので明日にはここを出ます!」
「えぇ!?」
「引っ越しだ!」
向かう先は、西と東の境界付近。その奥に浮かぶ離島だった。
次の章は、ほのぼのとした話が続きます。一話完結型になるかもしれないですが、空いた暇な時間があれば、軽い気持ちで見てみて下さい!




