13.赤眼鳥 後編
ラッキーが矢を放つ前に、赤眼鳥は動きを止めた。何かに気付いたように、何かを悟ったように。
(何でしょう…)
ラッキーは警戒を解くことなく弓を握っていた。赤眼鳥が不自然なまでに目を開いてこちらを睨んでいた。
「何だ?睨めっこでもする気…」
そう言った瞬間に、魔道具である耳飾りが破裂した。音の衝撃と共に、ラッキーは体勢を崩した。
(これは…?)
赤眼鳥は、のそのそとラッキーに近づいてきていた。ラッキーは腹の傷を押さえながら、その姿を見つめることしか出来なかった。
そして嘴をラッキーの腹部に当てた。腹の奥で、ラッキーは血管が握り潰されるような感覚を抱いた。
(これは…止血魔法?)
そしてバラバラになった耳飾りを大きな羽で飛ばし、風に乗せて消し飛ばした。赤眼鳥はラッキーの目を見た。
「なんっ……!」
(ラッキーさん!?)
視界が赤く染まった瞬間に、ロワの声が遠ざかった。同時にフロルの声もしたような気がしたが、思考が回らない。湖の底に落ちていくように、虚無感に襲われた。ラッキーはそのまま意識を失った。
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(ラッキーさん、目が覚めましたか?)
岩に挟まれた空間。日光を避けるように、影となっていたその場所にはロワとフロルがいた。
「ラッキー君、本当に君は何者なんだ」
「どうなった…?」
腹を触ると、牙で裂かれた腹の傷が塞がっている。
(ラッキーさん、前代未聞ですが、おそらく赤眼鳥に呪いをかけられましたね)
「呪い!?」
「ああ、呪いを防ぐ魔道具が破壊されたということは呪いで間違いない。それに君の目は…」
ラッキーの目は鮮やかな赤色をしていた。
「何で、呪い…?」
(灯台の影に、赤眼鳥の情報を知られたのは不覚ですが、それ以上に収穫はあります)
「赤眼鳥が、戦時の術である呪いを使うとは…。これはヤツが戦争に一枚噛んでいる可能性もあるな」
(そうですね)
「俺の心配をしてくれよ」
状況を把握できず、オロオロしているラッキーを尻目に二人は考察をする。
「何にせよ、君は赤眼鳥にマーキングされた。これはヤツに認められたということなのか」
あまり見かけないセキレイが岩場に集まっている。虹色の羽を輝かせている。
(もしくは、ラッキーさんに呪いが効くのかを知りたかったという可能性もあります。呪いを防がれたことなどないでしょうから)
「うんうん」
ラッキーは一呼吸おいて口を開く。
「何でフロルがこんな所にいるんだ?」
「そこは今はいい」
(そこは今はいい)
岩陰から光が差し込んで、ラッキーの目に当たる。咄嗟に目を逸らした。
(ラッキーさん!?痛くはないですか)
「大丈夫、全然普通。眩しかっただけ」
「呪いの効果をまずは調べないとな。あとは………変なセキレイについても考えないと」




