12.赤眼鳥 中編
「ちょっと、なんか喧嘩売ってない!?」
「あいつら何考えてんだ!」
メル一行は、モルテンと契約を交わしてラッキーの尾行をしていた。岩陰に隠れて、巨大な魔物と戦うラッキーを眺めている。
「やはり只者では無かったのか、ラッキー君…」
「あんた、本当にモルテンさんの弟子なの?」
「なんか…よわそう…」
「はっきり言うな!」
灯台の影が手配した助っ人は、フロルだった。首元にラッキーに叩かれた痕が残っていた。
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ゴツゴツとした岩場に機動力を奪われている。ラッキーを敵だと認識した山岳のキングは、雄叫びを上げた。
水が沸騰したように周辺のセキレイが上に飛び立つ。雄叫びの音圧により、ラッキーは耳が圧迫される感覚に陥った。
(足を止めないで下さい!)
「了解…」
赤眼鳥の口元から炎が見える。ラッキーは振り向き、踏み切るように左足を蹴り上げ、弓を放つ。攻撃動作を中断して羽をゆっくり上下させて接近してくる。弓矢は風で明後日の方向へ飛ばされた。
(攻撃をしてくる瞬間に、こちらから攻撃を仕掛ければ、止めることができますね)
「それはそうなんだが…」
あれだけ大口を叩いておいて…勝てるビジョンがまるで見えない!矢が効くとも思えないし、魔法は防がれるし…ていうか幸運魔法しか使えないし!
いやしかも一時的に攻撃を止めれたとは言っても、あいつまた…。
赤眼鳥の魔力は、常に体に纏わりついていてバリアを張っているように見えた。そんな魔力が、口元に集まっているように感じた。ラッキーは踵を返し、逃げ先を変える。
ドンッという快音と共に、ラッキーの足元に亀裂が入った。ラッキーの頭に、コンロの真空魔法がよぎった。ラッキーは頭で考えるより先に、口が開いていた。
「幸運魔法」
追撃の衝撃を防いだ。反動が右腕から全体に伝わる。地面が崩壊する瞬間に、ラッキーは全力で跳んだ。
赤眼鳥との距離は、わずか20メートル。段々と、距離を詰めてくる。腰元に備えている魔道具を握る。
距離10メートル。
7、6、5———
「今ッ!」
筒を投げた。中に、魔法陣がびっしりと描かれている。爆音と黒煙が、魔物を襲う。死犬から逃れる際に使ったロールを筒状にして使いやすくしたものだ。
「え?」
赤眼鳥は怯むことなく、黒煙の中から牙を剥き出しにして突っ込んできた。ラッキーの体は赤眼鳥に飲み込まれた。
(退けてください!)
肩にいたはずのロワが、赤目の中心を脚で蹴り上げていた。大きな牙を支点として体を捻った。間一髪。腹部に致命傷を負ったものの、一命は取り留めた。
「危ねぇ、ていうか痛ぇ」
腹の傷跡からドクドクと血が漏れていた。
ラッキーの脳裏に死がよぎる。かつてのラッキーなら悲しむことも後悔することもなかっただろう。今のラッキーには生きる目標がある。死にたくなったら死ねばいい。そんな考えが消え去っていることにラッキーは感激していた。
「ロワ、俺、この世界に来てから変われたかも」
(ラッキーさん!?こんな時に何を…)
勢いのまま、赤眼鳥は剣の如く鋭い羽根を飛ばしてくる。
「幸運魔法」
メルの剣技のように、ギリギリまで引き付けるイメージ。自身の魔力に触れた瞬間に、幸運魔法を発動させる。
飛んできた羽は全て弾かれて、ラッキーの周りは羽根が散り舞っている。
「お前を倒すまでは、この世界にしがみついてやるよ」
弓の弦が悲鳴を上げている。目線は赤眼鳥の目。ロワの蹴りで動きが緩むならば…。
弓矢なら。
ラッキーは、赤眼鳥の一連動作を理解していた。
空気砲の時も、その後は距離を縮めてきた。炎の息吹の時も、接近しようとするそぶりが見えた。おそらく、遠距離→近距離の順で立体感のある攻撃をしてくる。
赤眼鳥は頭部を突き出してこちらに向かってくる。ラッキーの読み通りだ。




