表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

11.赤眼鳥 前編

 セキレイという鳥がいる。種の異なる無数のセキレイが飛び交う未開拓の地である山岳地帯「セキレイの山岳」は、開拓者が過去の文献を求めて集う場所である。


「俺たちはここで。また会おう」

「うん」

「ロワちゃんとお別れなんてやだ…」

「俺じゃないんだね」


 メルたちとは早めに別れて、ラッキーは少し山を登り、上から辺りを見渡す。

 見渡す限りの山々。隙間なく山岳が連なり、上を向けば、セキレイが空を埋め尽くすほど飛び交っている。そこかしこにセキレイの排泄物が落ちている。


「お」

ラッキーの足元に、蟻が行列になって並んでいる。

蟻の向かう先にはセキレイの死体が転がっていた。


 この山岳地帯の生態系は、セキレイが支配している。植物から昆虫、小動物がセキレイの死体、排泄物を糧にして生きている。


(セキレイがいつどのように繁殖しているのか、セキレイの種類や数、この場所は謎に包まれていますね)


「ロワ…」

(何ですか)

「セキレイと見分けるの面倒くさいからさ、鳥やめれる?姿を変えるというか、そんな感じのことできない?」

(無理です、ていうか見分けてください)

「だよね…」


 ラッキーの肩に、六羽のセキレイが停まる。順番待ちをするように何羽か付近をホバリングしている。


「ロワの席、無くなっちゃうかも…」

(!?)


 この山岳地帯は、人通りが少ない。開放的な山道を歩き続け、ラッキーたちは心身共にリラックスされていた。

 通りすがるのは開拓者と思われるパーティだが、雰囲気が暗いパーティが多い。ときたま登山者のような人も見かけるし、「灯台の影」のメンバーらしき人間もちらほら。


「未開拓の地、とか呼ばれてるくせにそんなに人いないなぁ」


(協会から特別危険地帯に認定されていますし、国によっては近づくことも禁じられているほどの場所ですから。それに今は冬じゃないので開拓者は集まりません)


「マジか、俺も六割くらいの確率で死ぬのか」

(そうなります)

「そうなります、じゃねーよ。死んだら悲しむとか言ってたくせに、一人で俺をこんなとこに連れてきやがって。コンロのやつ、俺を過大評価しすぎだわ」


 セキレイの鳴き声と、力強い滝音が聞こえる。

セキレイは水場があるところならばどこでも生息できる。この地帯には、明らかに水場が多い。


「ん?なんで冬じゃないと開拓者が集まらないんだ?」


(それは今から分かります。ラッキーさん、来ますよ)

「うわっ」


 大量のセキレイがラッキーの目の前を通過して、奥から巨大な影がちらつく。


(赤眼鳥(レッドゴート)、セキレイ山岳のキングと呼ばれる魔物です)


 竜巻のように魔力が暴れている。赤眼鳥(レッドゴート)は名前の通り目が赤く、魔法を扱う魔物だ。魔法や衝撃を和らげる魔力で体を覆っている。


「なっ、いや、やばいやばい、こっち見てるって!」


(赤眼鳥(レッドゴート)は冬眠します。雪降る季節に行かねば、どんな上級開拓者でも致命傷を負わされ、人に対する警戒心が高い魔物なので、そのまま殺される人たちも多いですね。セキレイ山岳の奥地に行くなら、冬であることが絶対条件です)


「今オフシーズンなの!?何でじゃあこんな季節に来たの!?」

 春風がラッキーの前髪を揺らす。


(コンロ様はこの魔物が鍵を握っていると言っていました)


「ん!?」


(コンロ様のみが所持する文献に、この赤眼鳥(レッドゴート)が描かれているページが存在したとか。ラッキーさんの仕事は、この魔物の情報を少しでもいいからコンロ様に繋ぐことです)


「なるほどね…」


(ラッキーさん?)


「…その物言い、ロワもコンロも俺があいつを倒せないと思ってるっぽいな!?」


 イレギュラーな事態に慣れ過ぎて、ラッキーの頭のネジは緩くなっていた。そのネジが今、勢いよく吹き飛んだ。


「やってやるよ」


  ラッキーは大きく腕を振り上げ、赤く光るセキレイの目を狙って弓を引き絞る。

 ユニコーンに乗りながら修行した日々を思い出し、かつて撃ち抜いた無数の的と、その赤眼を重ね合わせ———迷いなく、矢を放った。

 
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ