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監視蝙蝠

作者: 木藻 一月
掲載日:2025/10/26

「暇だ! あ〜、暇だ!」


 女ドラキュラは呟いた。それを聞いた女ドラキュラのしもべである杖をついた老人は、ある提案をした。


「リリィ様。人間共を監視してみてはいかがでしょう?」


 女ドラキュラのリリィはその提案に興味を示した。


「ほぉ、どうやって?」


 老人は口笛を吹くと、無数の蝙蝠が羽ばたいて来た。


「この蝙蝠たちで人間の動向を探るのです。蝙蝠たちの情報は超音波によって、リリィ様の元に届けられるでしょう」


 リリィは頷いた。


「なるほど、面白そうだ」


 リリィは人間の裏の顔が見られると思うと、笑みを浮かべた。


 蝙蝠たちは一斉に羽ばたいて行き、人間たちの社会へと旅立って行った……


 街では能面の様な顔をした人間共が闊歩していた。ものつまらなさそうなその表情は、見ていて吐き気がする程だった……


 そして夜になり、蝙蝠たちが活発になる時刻となった。


 あるときは、万引き……


 あるときは、空き巣……


 またあるときは強盗、殺人などの現場を目撃した。


 リリィはその一部始終を黙って見ていた。


 しかし、あるとき一羽の蝙蝠が怪我を負って地面に臥した。


 そして通りがかった女の子が、その蝙蝠を見つけた。


「お母さん、蝙蝠が死んでる」


 その女の子の母親はギョッとした。


「ゲッ! 蝙蝠……まだ生きてるじゃん」


 女の子はお母さんにお願いをした。


「お母さん、この蝙蝠家に連れて帰ってもいい?」


 お母さんはすぐに否定した。


「駄目に決まってるでしょ!」


 そんな母娘が去ってから、数時間が経った。


 すると暗い夜道の中、さっきの女の子が一人でやって来た。


 その手には傷薬と包帯を持っていた。


 蝙蝠は手当を受けると、女の子に抱えられて連れて行かれた。


 着いた先は女の子の家だった。女の子は母親にバレないように服の中に蝙蝠を隠した。


「暫く我慢してね」


 蝙蝠は戸惑ったが、良くしてくれたので悪くないと思った。


 女の子の部屋は一人部屋で押し入れがあったので、その中に蝙蝠を鳥籠に入れて隠していた。


 蝙蝠は少し窮屈に感じたが、怪我が治るまでの辛抱と思いジッとしていた。


 女の子は寝るときに寂しさからなのか、蝙蝠の入った鳥籠を押し入れから出して、布団の横に置いた。


 そして、蝙蝠に話しかけた。


「私、友達が居ないの。だから友達になってね……」


 夜が明けて、蝙蝠は飛べるくらい元気になったので、女の子は蝙蝠を鳥籠から出してあげた。


 蝙蝠は夜明けの空を飛び回って後で、何処かへ消え去った……


 リリィは感心した。


「面白い人間もいるものだな……」


 リリィは欠伸をすると、また暇潰しを探すために、杖をついた老人を呼ぶことにした。


 その頃、女の子は学校に向かっていた。


 リリィは老人と何か暇潰しが無いかと話し合ったが、夕方まで見つからなかった。結局、その話し合いが暇潰しになった。


 女の子が下校するとき、黒いバンが止まって、一人の怪しい男が出てきた。女の子は悲鳴を上げる間も無く、瞬く間に連れ去られた。


 それを偶然、女の子が助けた蝙蝠が見ていた。蝙蝠は慌てて、女の子の後をつけた。


 女の子はあるマンションに連れて来られた。そして鎖で繋がれた。監禁されたのである。


 それを見ていたリリィはやれやれと立ち上がった。


 夜になり、黒いバンに乗っていた怪しい男は女の子に馬乗りになった。男はパンツを下げて、下腹部を露出しようとした。女の子は悲鳴を上げた。


「誰か、助けてー!!!」


 悲鳴を聞いた一匹の蝙蝠は、男に体当たりをした!?


「何だ! この蝙蝠は! 何処から入って来やがった!」


 しかし、蝙蝠は男に叩かれて床に落ちてしまった……


 すると、窓の外から蝙蝠の群れがやって来た。騒々しい羽音と共に、無数の蝙蝠が一度に窓に打つかり、窓を難なく突き破った。


 蝙蝠たちが人の形を成すと、そこからリリィが現れた!?


 男は仰天した。


「だ、誰だ! お前は!」


 リリィはクツクツと笑った。


「お楽しみのところ、済まないね」


 リリィはそう言うと一歩、今一歩と男に近づいた。


 男は立ち上がりパンツを履き直した。


「く、来るな!」


 リリィの八重歯がキラリと光る……


「人間の血は久しぶりだが、不味そうだな……」


 リリィはそう言うと、男の首元に噛み付いた!


「ギャ〜!!!」


 男が悲鳴を上げる。リリィは血液を一滴残らず吸って、男の身体は骨と皮だけになった。


 女の子は怯えながらも、一部始終を見ていた。


「あ、あなた……誰?」


 リリィは優しく笑ってこう言った。


「君の友達だよ。友達になってくれと言ったろう」


 女の子は何のことだが分からず、ただ唖然とするばかりであった。


 リリィは無数の蝙蝠になり散らばると、その場から姿を消した……


 その後、事件は一時は大事になったが、やがて人々の記憶から忘れ去られて行った……


 その頃には女の子も学校に馴染んで友達が出来ていた。


 女の子が家に帰ると、以前に女の子が助けた一匹の蝙蝠が夕闇を横切って行った。

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