第3章
ウィーラー医師の机の上にニュートンのゆりかごが置かれていた。
五つの銀色の球がワイヤーで吊り下げられ、まるで首吊り台にぶら下がる五つの生首のようだった。
——彼も患者をそう見ているのだろうか。互いにぶつかり合うだけの頭のおかしい連中として。
「話は理解できていますか、アイザック?」
私はゆりかごを見つめたまま、自分の声が遠くから聞こえるように答えた。
「……どういうことですか?」
「昨晩遅く、心臓発作を起こされました。お父上はお亡くなりに……。ご愁傷様です」
私は一つの球を引き、カチリと弾いた。小さな頭たちが連鎖してぶつかり合う。甲高い規則的な音が妙に心地よかった。
「……それなら、帰らなければ」
「アイザック」
医師は厳粛な息を吐き、首を横に振った。
「その話は、もう二度と蒸し返さないように」
「……どの話ですか?」
「辛い知らせなのは承知しています。ですが、これまでの治療を台無しにするわけにはいきません」
私は睨んだ。
「何を言ってるんですか?」
「声を荒げないでください」
「荒げてません!」私は手錠を掲げた。
「さあ、これを外してください。茶番は終わりだ。葬儀の準備をしなきゃならない」
「継母の——」
顎が震えた。
「あの悪女のことは言うな!葬儀には絶対に来させない!」
「アイザック、いい加減にしなさい。落ち着くのです」
歯ぎしりした。
「いいか。手錠を外せ。さもないと後悔するぞ」
「脅しているのか?」
確かに脅していた。だが次にどうするべきか考える間もなく、扉が開いた。ポールが、鮫肌のスーツを着た男を連れてきたのだ。
「誰だ、お前は」
「ウィンストン・レイン。君のお父上の弁護士だ」
「弁護士?それなら好都合だ。この医者に言ってくれ。今すぐここを出るぞ」
「そんなことはしない。我々は、君のお父上の遺産処理について話し合いに来たのだ」
「我々?」と問いかけた瞬間、継母が派手に入ってきて、豊満な胸で私を包み込んだ。
「ああ、坊や。ひどいことよね。信じられないわ、あの人が逝ってしまうなんて」
私は彼女を突き飛ばした。
「何をしてる!これはどういう茶番だ!」
左右を見渡せば、皆が同情と不安を入り混ぜた目でこちらを見ている。私は出口に突進したが、ポールの太い腕に容易く捕まった。胸を締め付けられ、息が詰まる。必死に肘打ちや踵を使ったが、一分と経たずに力尽きた。
「なんてことだ!」弁護士が叫んだ。
「拘束衣を着せるべきだ!」
「やめて、ウィンストン!」継母が泣き声を上げた。
「彼は病気なのよ。お願い、乱暴にしないで」
ウィーラー医師が机の前の椅子を指差す。ポールは私を人形のようにそこへ押し込んだ。肩に分厚い手が置かれ、体重をかけて押さえ込まれる。
「まったく……狂人め……」
弁護士がスーツの埃を払って呟いた。
「その言葉は使わないでいただきたい」
医師が鋭く叱責した。
ウィーラー医師はゆっくりと呼吸を整え、声を低く落ち着かせて言った。
「当然ながら、今は大変な時期です。皆さんの感情も高ぶっている」
継母は椅子に腰掛け、ハンカチを取り出して鼻をかんだ。全身を黒い布地とレースで包み、巨大な黒い帽子に網目のヴェールまで被っていた。それでも淫靡な曲線が隠しきれない。
「これは一体どういうことなんだ!」私は叫んだ。
弁護士のレインが咳払いし、継母に視線で合図を送ってから話し始めた。
「ご尊父の急逝に伴い、すぐに遺産管理者を任命する必要があります。株主の信頼を失わぬためにも。……遺言によれば、第一の執行者は君だ」
私はうなずいた。
「そうだ。だからさっさと解放しろ」
「しかし、法の規定によれば、執行者が職務遂行に“不適格”と見なされた場合、その権限は次の候補者に移る」
「……何だと?」
「大丈夫よ、坊や」継母が言った。
「私がしっかり引き継ぐわ」
「馬鹿げてる!私は不適格なんかじゃない!」
弁護士の視線が手錠に落ち、鼻で笑った。
「鼻で笑うな、このサメ皮のご都合主義者め!」
「坊や、落ち着いて」継母がなだめるように言った。
「許してあげて、ウィンストン。可哀想に、混乱しているのよ」
「混乱なんかしてない!それから坊やと呼ぶな!」
私はウィーラー医師に振り向いた。
「先生、あなたからも言ってくれ!」
医師は冷静にこちらを見つめた。
「確かに、ここ数日で大きな進歩はありました。しかし……私の専門的見解としては——」
彼の目が机の隅へとわずかに動いた。そこに、私は初めて気付いた。
——ビデオカメラ。
目を見開き、継母に向き直った。
「この悪女め!」
だが、すでに遅かった。
「違う!誤解だ!」私は叫び、ポールに引きずられながら必死に訴えた。
「全部あの女の仕業だ!俺は狂ってなんかない!放せ!」
扉の向こうに消える直前まで、私は喉が裂けるほど叫び続けていた。
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