第4話 魔術パレードで再会した運命の人
伯母様と謎のお方がクズ夫を見事に撃退してくださった後、私は国の戸籍管理所へ離婚申請書を申請した。
これで彼へ離婚請求書が届き、彼が署名すれば離婚成立となる。
往生際が悪くて離婚を受け入れないかもしれないと心配していたが、無事に離婚が成立することになった。
「エミリア、連絡が来て無事に離婚が成立したそうよ」
「ありがとうございます、伯母様!」
伯母様が国の戸籍管理所の相談部署にも掛け合ってくださり、夫から妻への不適切な言動や妻の自尊心を傷つけた行為を理由に強制的に離婚が成立したのだそう。
ホッと胸を撫で下ろしていると、伯母様が私にお茶を出してくださった。
「今回の件、本当にありがとうございました」
「いいのよ! 私も久々にぶん殴れて清々したわ!」
肩を回しながら伯母様はそう言うと、一転して優しい面持ちになり私に告げる。
「よかったら、しばらくうちにいなさい」
「でも、それは伯母様のご迷惑に……」
「いいのよ。うちは子どもももう大きくなったし、ほら、ちょうど話し相手が欲しいと思ってたのよ!!」
「伯母様……」
元クズ夫の本性を知った時は絶望しかなかった。
離縁を突きつけて家を飛び出してはみたものの不安でたまらず、涙が止まらなかったものだ。
でも、私には頼ってもいい人がいた。
私のために怒って、殴って、こうして優しく手を握ってくれる。
「伯母様、わがままを言ってもいいですか?」
「ええ」
「家事でもなんでもやります。稼ぐ手段を得るまで、こちらにおいていただけないでしょうか?」
「もちろんよ。好きなだけいなさい!」
深々と頭を下げた私を伯母様をぎゅっと抱きしめてくれた。
この温かい手に何度救われただろう。
そう思っていた時、伯母様からある提案がなされる。
「よかったら、来週の魔術パレードにいかない? 実は三年ぶりに開催されるらしいの」
「魔術パレードですか!?」
この国では魔術を使える人は非常に少なく、魔術師というだけで憧れを抱かれる存在だ。
王宮では国王直属部署「王宮魔術師団」が存在し、人々の平和を守ってくれている。
そんな王宮魔術師団が魔術を使ったパレード、演出でみんなを楽しませるのが、魔術パレード。
昔、一度伯母様に連れられて見に行った魔術パレードは忘れられない。
炎の迫力ある演舞に、霧を使った虹の演出、そして最後の氷の結晶舞うキラキラの美しさは幼い私を魅了した。
「でも……」
正直なところ人の多いところは今は避けたい。
それに今は何かを楽しめるような気分でもなく、ただのんびりと空を見上げたいような気がする。
そんな時、ふと元クズ夫に言われた一言がよみがえってきた。
『エミリアは私のものだからな! それにこいつは俺に惚れてる! 戻ってくるに決まっているだろう!』
ああ……なんだか思い出したら気分が悪くなってきた。
本当にどうしてあんな男を好きになってしまったのか。
もう絶対にあんな男に振り回されたくない!
だんだんと気持ちがむかむかして腹立たしく思えた。
これはもう気分転換しなければどうにもならないわ!
そう思って私は身を乗り出して伯母様にお願いする。
「伯母様、やっぱり魔術パレード行きたい!」
「ふふ、そう来なくっちゃ! じゃあ、ドレスも買いに行きましょう!!」
最初はこの気持ちを発散したいと思って、威勢よく参加を申し出たけれど、パレードの日が近づくにつれてだんだん気持ちが高ぶってくる。
今回はどんな魔術パレードなんだろう。
そう想いを馳せるたびに私の胸は躍る。
伯母様とドレスを見に行って準備を整えると、ついに魔術パレードの開催日が訪れた。
魔術パレードに行くと私の記憶にあるものと全く違う。
人の多さも華やかさも桁違いである。
「昔より、なんだか人がいっぱいですね!」
「そりゃそうよ! なんたって『エルネスト様』が来るんだもの!」
「エルネスト様……?」
確かエルネスト様というと現魔術師団長様の名前がそうだった気がする。
見目麗しくクールで、それでいて強い。
そして何より国民想いとして有名だけど、王都事情に疎い私はそれ以上の情報を知らなかった。
すると、何やら伯母様がにやにやとして私のことを見ている。
「なんですか、そのお顔は」
「ううん。見たらびっくりするわよ! ほら、あそこっ!」
「え……?」
そこには確かに見目麗しく魔術師団の軍服を着た人物がいた。
しかし、私が驚いたのは彼の抜群に良い顔立ちを見たからではない。
「うそ……」
整った顔立ちに氷のような鋭い目つき、長身で長い髪を一つに束ねたその姿──。
先日私をクズ夫から救ってくれた彼が、『エルネスト様』だったのだから。
ついにエルネスト様として登場です!