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狐の巫女と捨て子の神主  作者: なんてん
6章

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56話.デマゴギー

「どんなことやってるチャンネルなの?あたしそーゆーの疎くてさ」

 表向きには興味津々、といった様子で藍暁あかりがベレッタチャンネルの2人に尋ねる。

「あれー?俺たちの事知らない感じ?」

 仕方がないなあ、などと言いながら、2人組は自己紹介を始めた。

「俺たちベレッタチャンネルは、登録者数5,000人の有名チャンネル!各地に散らばる数多の謎を解明し、隠れた闇を暴くのが主な活動!」

「へぇ?」

「ここツギサビ神社にも、バケモノが巫女に化けて住み着いてるとか、血に飢えて魔物に成り果てた神が隠されているとかいう噂がありましてね、その真相を暴いていこうって話なんですねー!」

 どんな尾ひれがつけばそのような話になるのか、呆れた眼差しでベレッタチャンネルの2人組を見る。彼らの意識は既にカメラの向こうへと向いており、樹希と藍暁は視界から外れているようだ。


「面白そうなことしてるのね!それで、この継寂乃杜つぐなきのもり神社のどこに、どんな風に血に飢えた御神体が隠されてるって調べなの?」

「えっ」

 2人組は一瞬固まり、返答に困った様子で顔を見合せる。そこに藍暁が追い打ちをかけた。

「まさか、ロクに調べもせずに来たわけないもんね〜。あ、でも名前間違えてるから分かんないか。それと、ここの撮影ってアポは取ってる?この人神社のわりかしエラい人なんだけど、君達のコトよく知らないみたい」

 2人組は答えられず、汗をかきながら「えっと」だの「それは」だのと口ごもっている。見ている方が恥ずかしくなるようなその様子は、手元のカメラ越しに、ライブ中継で視聴者に流れているに違いない。

「あとね、そのバケモノ巫女さん…って言ってもそれこそものすごくえら〜い立場の人なんだけど、その人は私の姉。堕ちた神様なんて話は一度だって聞いた事無いし、アンタ達どんな調べ方してきたの?」

 男たちは藍暁に見据えられ、射すくめられたように固まってしまった。特徴的な彼女の瞳に睨まれたら、見慣れた樹希でも緊張する。2人の心境は推し量るに難くない。


 さらに藍暁の腰に巻き付く尻尾が動き、2人の視線もそちらに移る。「なんだそれ、飾りじゃないのかよ…?」などと青ざめた顔で呟いている。

「これ?これは正真正銘、あたしの尻尾。可愛いでしょ?」

「は?尻尾?そ、そんなもん人間に生えてるわけない…」

 言い終わるが早いか、藍暁がスルスルと尻尾をほどいてしまった。艶やかな毛に覆われた、細長い金色がゆらゆらと揺れる。

 ベレッタチャンネルの2人は「ひっ」と短い悲鳴を上げながら尻もちをつくが、それでもカメラはしっかり握ったままである。アマチュアなりの意地だろうか。

「だーかーら、言ったじゃん。あたし、バケモノの妹でーす。ていうかここにアンタ達の求めるもんなんて無いし?そもそも無許可で撮影なんて舐めたマネしてんじゃないわよ。警察呼ぶ前にさっさとご退場くださーい」

 藍暁はもはや興味を装う事もせず、気だるそうに尻尾を巻き直しはじめた。そのついでのようにして、チャンネルの2人組をしっしっと手で追い払う仕草をしている。


 樹希はほうほうの体で走り去る2人を見送りながら、「どう?綺麗に巻けてる?」と確認してくる藍暁に適当な返事をした。

「それより、ありがとう。助かったよ」

「別に?アンタってより、ほっといてお姉ちゃんが面倒に巻き込まれるのが嫌だっただけだし」

 確かに、放っておけば境内を荒らしそうな連中ではあった。神社の経営をあずかる者として、もっと毅然と対応しなければ。

「にしても最近多いのね、ああいうオキャクサン。変な噂も多いみたいだし、気を付ける事ね」

 それだけ言い残し、藍暁は雑踏の中へと消えていった。

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