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狐の巫女と捨て子の神主  作者: なんてん
6章

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55話.知名度

 休憩を切り上げて境内に出る。参拝者の出入りが増えた以外は、先程の話など嘘のように穏やかな雰囲気に包まれている。驚く事に若い人が多く見えるのだが、いずれも悪い噂を流すようには見えない。

「…杞憂だったかな」

 樹希いつきは固くなった顔を綻ばせた。須々すずきが嘘を言っているとは思わないし、SNSに書き込まれていたのも事実だが、そこまで大袈裟に考える必要はないのかもしれない。


「あの、すみません。狐の巫女さんってどこで見れますか?」

不意に大学生だろうか。若い女性2人組が声を掛けてきた。手にはスマホを持っている。参拝というよりも、物珍しさを求めてきたのだろう。

「申し訳ありませんが、今はご祈祷で席を外しております。ご依頼であれば受付いたしますよ」

 動物園でも来たのか、とでも言いたくなるのをこらえ、あくまでも寛容な返答をした。しかし樹希の返事を聞くなり、2人組はあからさまに残念そうな様子で出口へと歩いていった。

 その後ろ姿を見送り、再び大きなため息をついた。知名度が上がることも、人が増えることもそれ自体は良いことだが、こうもあからさまに参拝目的でない者の相手をするのは、宮司の下で育てられた身としては複雑な気持ちになる。


「という訳でね!本日はここ、つぎ…さび?神社にやってきてま〜す!」

 社務所への道すがら、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。2人組の男性がカメラに向かって話している。何か撮影をしているようだ。

「おいおい、撮影なんて聞いてないぞ…」

「あっちょうど神社の人がいました!話を聞いてみましょう!」

 ひと言言わねばと歩み寄るが早いか、向こうも樹希に気付いて声を掛けてきた。駆け寄ってくるや否やずい、とピンマイクを眼前に向けられ、樹希は思わず足を止めてしまう。

「すみません、ここの神社の人ですか?お話聞かせてくださーい!」

「ちょ、ちょっと…」

「あー安心してください、モザイクかけてあるんで!お兄さんもネットに載って、有名になりましょうよ!」

「いやそうじゃなくて…」

 あくまで主導権はこちらだと言わんばかりに、勝手に話を進めようとしてくる。生真面目な樹希には苦手な相手である。

「ちょっとちょっと、シラケちゃうなーお兄さん。こんなチャンス滅多にないよ?ほらニッコリ笑おうよ!」


「あれー撮影?なになに有名人でも来てるの?」

 あきらかにイライラした様子の男達にたじろいでいると、聞き覚えのある明るい声が後ろから聞こえてきた。同時に、視線をやった2人組の男もニヤニヤと笑みを浮かべ始める。

 藍暁あかりが腰に巻き付けた尻尾をいじりながらこちらを見ていた。撮影者に話しかけつつも、彼らとは目線を合わせる様子はなく樹希の方へアイコンタクトをしている。任せておけと言うことだろうか?

「そう、俺たちはストリーマーのベレッタチャンネル!登録者急増中の超有名チャンネルだよ。お姉さんも配信に映って有名になりたくない?」

「へえ。面白そうねえ。興味あるかも」

 藍暁は小悪魔のような笑みを浮かべながら答えた。思わぬ助っ人が来てくれたのかもしれない。

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