第六話 またまた出会い
この日、ようやく学校生活が終わる。
渕崎さんと昼休みを過ごしたり、イレギュラーはあったものの基本的には平和な一日だった。
……何て総括をしてみたが、結局大変なのはここからである。
遂に旅館でのアルバイト生活が始まってしまうのだ。
いや、実際には今日一日特に織原さんと言葉を交わしているわけではないからまだ今日からなのか分からない。
―ピロン
ちょっと先生に頼まれごとしたからいつもの教室で待ち合わせね〜
これでとりあえずこの後一日が終わるまでの行動はほぼ確定してしまった。
「あの」
最近はあの教室も安息の地って感じがどんどんなくなっている気がする。
とは言っても、クラスの教室にずっといるわけにもいかないし、特段行ける場所もない。
「あの!」
「あ、えとすいません。
えー、どうかしましたか?」
やばい、考え事をし過ぎて周りが見えなくなっていた。
ただでさえ、空き教室に引き篭もって関係を持ちづらい俺がこんなことでは、世間の評判が落ちてしまう。
話しかけられたのは、見たことのない女子生徒。
昼休みに出会った会長の身長が高かったこともあるが、小柄気味で、女の子らしい印象を受ける。
「あの、今って大丈夫ですか?」
「今か、えーと。
どれくらいかかる用事?」
「あればあるほどいいです」
うーん、少し考えてみる。
織原さん次第では、勿論あるのだがどちらにせよめちゃくちゃ時間が取れるわけではない。
断る・・・でも一回気づかなくて、嫌な思いをさせてしまったしな〜。
「あんまり時間取れないかもだけど……協力できることなら」
「はい、じゃあどこか良い場所は」
最早お馴染みになりつつあるが、例の空き教室に向かい合って座る。
早速彼女は、本題に踏み出してきた。
「あの、部活って入ってますか?」
「部活?入ってないよ」
「……!
だったら、演劇部とかどうですか!?」
急に元気になる彼女、そういえば。
「あーと、先に名前を聞いても?」
「そうでした、演劇部部長の藤垣弥生です。
是非とも演劇部に入っていただきたくて、今回は勧誘しに来ました!」
まさか部長の方から直談判とは。
ちょっと嫌な予感がしてしまうが、一応聞いてみる。
「その理由ってのは」
「この時間に廊下を歩いていたので。
もしかしたら、お暇なのかと」
織原さんよりも直接的に言われてしまう。
っていうか俺ってそんな暇そうに見えてるのか?
複数回こんなことが起こってしまうのだから、俺に原因があるような気がしてくる。
「演劇部か、とりあえず入るのは厳しいかも」
「えー、どうしてですか!?」
「いや、学校での活動は特に無いんだけどバイト始めて」
「あーバイト、そうなんですね」
まあ実際、俺みたいに何もやっていない奴は本当に少ない。セールスチャンスを逃した彼女は俯く。
そんな彼女に、何故だか罪悪感すら抱いてしまう。
そんな空気に耐えかねて、ついフォローに入る。
「いや、勿論面白そうだとも思うよ!?
それにさ、手伝うくらいなら出来るし」
「ありがとうございます。
実際、そうして頂けるだけでもありがたいです」
少しは、元気になったのだろうか。
俺は人と関わる機会が極端に少なかったから、こういう時のフォローの仕方が合っているか、よく分からない。
「もし、もし本当に困ってしまった時。
その時は本当に頼っても良いですか?」
「うん、そりゃ勿論」
「そうですか、分かりました」
そろそろ部活が始まる時間だ。
それと同時にメッセージが届く。
用事終わり、とりあえずそっち行くよ〜
俺がメッセージに気を取られている間に、藤垣さんは連絡先を書き込んで、俺の手に握らせた。
そのままぺこりと頭を下げる。
「とりあえず、お話出来て良かったです。
それじゃ頼りにさせてもらいます、先輩」
先輩?
俺は急いで彼女の胸元についているプレートを見る。
1ーC 藤垣弥生
部長って時点で同学年、最悪先輩くらいに思ってたけどまさかの後輩なのかよ。
ようやく、彼女が敬語だった意味を理解する。
演劇部が今どうなっているのか考えながら、藤垣さんが教室を出ると同時に聞こえてきた足音に、俺はリュックを持ち上げる。
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