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第五話 生徒会長襲来

 「ほう、こんなに良い場所があったとは」


 突如現れた生徒会長、渕崎陽子さんはぐるりと教室の外周を一周する。

 その真ん中、俺たちがセッティングした四つの机が向かい合っている場所の中でも渕崎さんは俺の向かい側に座った。


「いや、本当に突然すまない。

 どうしても、この場所が気になってしまってね。

 昨日の放課後、織原さんとの会話が聞こえてきたものだったから」


 まあ、確かに織原さんのバイト勧誘はかなりの勢いだったし、周りに居れば聞こえていたかもしれない。

 とはいえ、そこから端っこにあるこの教室まで来て状況を確かめるほどではない、という感覚もある。


「凄いですね、この教室に人が来ることなんてほとんどありませんよ」

「そうだね、私もあの時は疲れていたから。

 サボりがてら、放課後の皆がどう過ごしているか様子を見て回っていたんだ」


 サボりがてら、なんてことを渕崎さんは言っているけど普段彼女はそうやって、生徒たちの日常を観察しどんな風に学校を変えればいいか考えているらしい。

 今、というか別にどの時代でも珍しいほどの真面目に取り組む人柄に惹かれている人も多いようだ。


「それで、どうしてここに?」

「うーん、君と話をしてみたかったというのは?」

「……まあ、あんまり深くは聞きません」


 ふふ、ありがたい。

 そう言いながら渕崎さんはお弁当箱を開いた。

 どうやら、ここで昼食をとるらしい。

 その後、特に何も喋ることもせずご飯を食べ始める彼女に安心した俺は、もう一度イヤホンを耳につける。

 こうして動画を見ながらご飯を食べることができるならば、他に人がいることも大して気にならない。


「ふー、ご馳走様でした」


 動画を見ながらだらだら過ごしているとあっという間に時間は過ぎていってしまうものだ。

 そろそろ昼休みの時間も終わってしまう。


「それじゃ、渕崎さ……」


 彼女は、いつの間にか眠っていたようだ。

 突っ伏すように寝ていたが、息苦しかったのか顔を傾けていて、完全に寝顔が見えてしまっている。

 そんな無防備を晒してもなお、美しい彼女の寝顔にどうしてもドキッとしてしまった。

 結局、渕崎さんはこの教室に来た理由を教えてはくれなかったが、もしかしたら疲れていたのかもしれない。

 流石にそのままにしておくことはできないため、体を揺らす。


「渕崎さん、渕崎さーん」

「う〜ん」


 ゆっくりと身体を起こした彼女は伸びをして。

 寝ぼけた様子を少し見せた後、俺に気づく。


「ああ、寝てしまったのか。起こしてくれてありがとう。

 それから……またここに来ても良いかな」

「はい、別に俺たちの場所じゃないので」

「それもそうだな」


 それでも許可が出たことが嬉しかったようで、無邪気に笑う渕崎さん。

 本当にもうそろそろ昼休みが終わる。

 クラスが遠い彼女は、もう行くことにしたらしい。


「それじゃ、また」


 渕崎さんが去っていく様子を目で追う。

 だが、彼女は突然何かを思い出したように戻ってきた。


「ちなみに、同学年なんだから敬語は使わなくても良い。

 それに、私は一応友達になりたいと思っているんだ。

 次くる時は、陽子と呼んでくれ。

 それじゃあね、慎也」


 最後の最後に、何て試練を与えるんだ。

 急に会長のことを名前で呼び捨てる奴が現れたら、とんでもない注目を浴びることになってしまう。

 だから次会う時はまあ、陽子さんくらいで手を打つことにしよう。

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