第三十五話 バトンタッチ
「まあ、概要を全部話せるわけじゃないけど生徒会長が足枷になっている、って言う話は嘘じゃないみたい」
「……やっぱりそうだったんだ。
私が会長のことで間違ってたらどうしようかと思ってたよ」
相変わらず、陽子さんのことに関しては異様に自信のある三辻さん。
ある程度、確信のような部分もあったらしく俺の話を聞いてとりあえず安心一色のようだ。
陽子さんと一日中カラオケをした日から、一日明けた日曜日。
久しぶりに戻ってきた我が家から、三辻さんに状況を伝えるために電話をかけていた。
ここ最近は、毎日勉強を教えてもらうためにかけていたからか、数日かけなかっただけでも違和感を覚える。
と、スマホからサラサラと何かを書いている音が聞こえる。
「何やってんの?原稿?」
「そう、テスト終わったからようやく書き始めたの」
良かった、これでもし勉強とかだったら怖かった。
今回もサラリと一位を取っていた彼女でも、流石にテスト終わりから一ヶ月経たない今から、ガチ勉強を始めるということはないらしい。
「まあとにかく、ここまでありがとう。
あなたはやっぱり会長の友達なんだね」
「……三辻さんは、陽子さんの何なの?」
「どうだろうね、ファンとかなのかな?」
ふと、陽子さんの言葉を思い出した。
「……結局な、私だけ蚊帳の外な気がしたよ。
全員が私に気を遣って、まるで目上と関わってるみたいに接待したり、気に入られようとしてくるんだ。
私は、普通の女子高生なのにな……」
俺は三辻さんとも仲良くして行きたいし、あの二人にも仲良くしていてほしい。
だからつい、言葉が漏れる。
「俺は……三辻さんは友達になれると思うな」
「だったらいいね、私もこのまま会長と副会長の関係で終わりたくはないし、とにかくこの選挙で勝ったら何か変わるかもしれないって期待しちゃってる」
そう言った三辻さん側の音声から、きづけば原稿を書く音は聞こえなくなっていた。
「あれ、もう原稿書き終わったの?」
「うん、とりあえずね。
勿論、これから直すことはあると思うけど」
ふと、気になったことがある。
「三辻さんは、どうやって陽子さんに勝とうと思ってるの?」
「…………え?」
三辻さんの気の抜けた返事にずっこけそうになる。
頭の良い彼女のことだ、あの陽子さんに立ち向かうための策を一つくらい用意してるもんだと思っていた。
そのことを彼女に伝えると、明らかに機嫌が悪くなる。
「そんなわけないでしょ。
私は陽子さんを目の敵にしてるわけじゃないし、勝負に勝って気持ちよくなりたいわけでもないの。
あくまで私の考えで、正面切って挑みたい。
それじゃないと、意味がない」
……確かに勘違いしていたようだ。
三辻さんは、勿論生徒会長になりたいのだ。
会長になりたい人がなれば、学校が良くなるかといえばそれは分からないけれど、やっぱり。
「三辻さん、逆に俺からもお願い。
今回の生徒会選挙は、三辻さんに勝ってほしい」
「勿論、って日端君。
だからって脳死で私に票入れないでよ?
ちゃんと演説でこっちの方がいいと思ったら入れてよ」
「うん、じゃあ応援してる」
「……それならまあ、いっか」
その後は力が抜けたように、三辻さんと雑談する。
陽子さんの着物写真を送れと、めちゃくちゃに脅された時はどうなることかと思ったが、その他はやっぱり楽しくて、三辻さんとも気付けば友達になっていたようだ。
通話を切る直前、明日には始まる選挙に向けて三辻さんは気合いが入っているようだ。
「じゃあ見ててよ、私勝ってくるから。
……会長と正面切って戦えるのは日端君だけじゃない」
「うん」
「あ、そういえば一応私が勝つようお願いしてきたよね」
「え?……うん」
「じゃあ勝ったら、報酬が必要だよね」
「………………はい」
「着物の陽子さん……楽しみだなぁ」
何故か、そのことでさらに燃え上がる三辻さん。
……まあ、一枚くらいなら。
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