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第三十四話 本音

 朝起きると、沙織からメッセージが届いている。


 ―どうだったか、また今度教えてね


 まあ、そりゃあ気になるよな。

 昨日の夜で決着がつくはずだったことだ。

 そこから、とりあえずシャワーを浴びて朝ご飯を済ませて、用意されている車の前に行く。


「来たな、それじゃ行くとするか」


 今日は、このまま帰ってゆっくり休む。

 久しぶりに何もない休日だ、一日中寝てみても良いかもしれない。

 ……昨日までは、そんなことを思っていた。


 だが、昨日の夜。

 陽子さんは俺を遊びに誘った。

 後部座席に並んで乗り込んで、こうして話せることにとりあえず安心はしているが、内心はぐちゃぐちゃになってしまっている。


「ふふっ……もしかして緊張してるのか?

 二人きりで遊びに行くとか、そんなにないのか」

「うん……大輝以外なら初めてレベルかも」


 周りに気を遣える陽子さんはそういうところも鋭い。

 車の中でも、俺に適度に会話を振ってくれる。

 それでもまあ、俺たちは普通に友達だ。

 そうやって話している内に段々緊張も解けていく。


「それじゃ、ここで降ろしても良いですか?」


 車を運転してくれていた従業員の由麻さんに頭を下げてそのまま行ってしまう車の後ろ姿を見送る。

 どうやら、今日は陽子さんのエスコートのようでもう行きたい場所に向かっているらしい。


「で、結局どこ行くの?」

「まあ、何個か候補はあるんだが……カラオケは?」

「良いけど、俺上手くないよ?」

「そんなことは気にしない」


 結局、カラオケに行くことになった。

 歌に自信がない……そんな不安はあるものの、友達との定番な遊びって感じがしてテンションが上がるのも事実だ。

 機種とかの話は、とりあえず陽子さんに任せて言われた通りに部屋に入る。


「曲……どうしようかな?」

「慎也って曲とか聞いたりするのか?」

「失礼な、俺だってアニメとか映画はよく見るしその主題歌とか気に入れば、登校する時に聞いたりするよ」


 そこで、ようやく曲を決めた俺はマイクを持つ。

 前奏が始まり、曲のタイトルがどでかく表示される。


「陽子さん、一応聞くけど知ってる?」

「勿論、知らないな。

 まあでも、どうせ私が歌う曲も慎也は分からないだろ」


 実際、陽子さんのいう通りになった。

 お互い、自分の趣味全開の知らない曲同士を延々と歌い続ける。

 それでも陽子さんは歌が上手くて、曲のセンスもある。

 苦痛どころか、めちゃくちゃ楽しい。

 ようやく俺の曲のレパートリーが切れた頃、時計は六時を指していた。


「あー、もう一日終わっちゃった……」

「本当だな、昨日はデートなんて言い方をしたがこれじゃ全く風情も無い」


 顔を見合わせて笑う。

 あんなにあった時間全てをカラオケに費やしてしまうなんて、大輝と遊んだ時ももうちょっと計画的に色々した。


「……私な、前にクラスメイトとカラオケ行ったんだ」

「え?」

「慎也が聞きたいって言った話だよ。

 身の上話すのに慣れてなくてな、勢いで言わせてくれ」


 そっか、またもすっかり忘れていたが陽子さんが生徒会長を辞めたい理由っていうのに繋がる話なのかな?


「最初集まった時は、皆色々意見を出してな。

 ふと、私はカラオケが良いんじゃないかと提案した。

 その瞬間、満場一致でカラオケに決まったよ」

「……それで?」


 今の所、話の要点が掴めない。

 とりあえず全部を聞きたくて、続きを促す。


「カラオケに行った後にな、好きな曲を聞かれた。

 答えたら、いの一番にその曲をかけて歌い始めたんだ。

 それに続くようにアーティスト繋がりとか、また好きな曲を聞かれたりとか」

「うん」

「……結局な、私だけ蚊帳の外な気がしたよ。

 全員が私に気を遣って、まるで目上と関わってるみたいに接待したり、気に入られようとしてくるんだ。

 私は、普通の女子高生なのにな……」


 そっか、陽子さんが求めていたことが見えてくる。


「そんな中、あの空き教室にふと入った。

 ようやく、私の居場所を見つけたんだと思ったよ。

 大輝は嫌な時すごい嫌な顔をするし、沙織は私の懐に思いっきり入ってくるし、弥生は自分の意見をズバズバ行ってくる。

 ……それに、慎也も初めて私と正面切って勝負をしてくれたしな」

「確かに、俺も凄く居心地が良いよ」

「……結論な、生徒会長は嫌じゃないよ。

 皆に推薦されたし、ここまでの仕事だって総合的に見れば楽しかった。

 可愛い後輩もいるしな……でも、欲を言うなら私は織原旅館でバイトをしたい」

「……え?」


 まさかすぎる解答に驚きを隠せない。


「着物な……着た時物凄く高揚した。

 綺麗で、可愛くてそれを着て働く女将さんや沙織が可憐に映って、私もそれを着て働けるなんて夢のようだ。

 それに、さっき言った信頼できる友達もいる」


 何となく小っ恥ずかしくて天井に目線をやる。

 そっか、どのタイミングでそんなことを思っていたのか分からない。

 でも、そこまで旅館を評価してくれていたことがバイトながら嬉しい。


「でも、生徒会の仕事があれば叶わないことだ。

 ……だからといって、わざと下手を打って相手に勝たせてあげるなんて、それこそ推薦してくれた皆に顔向けできない」


 良かった、陽子さんの意思をようやく全て聞けた。

 だからこそ安心して、宣言できる。


「それは大丈夫だよ、陽子さんは本気で来たらいい。

 今回の相手は、それでも超えてくれるかもしれない」


 最終的には、こうしてカラオケで歌いまくっただけだがとりあえず俺のターンはようやく全て終わった。

 後は三辻さんに、全てを任せるとしよう。

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