第三十二話 テストの結果
「えーそれでは、テストが全て返却されたということで、遂に結果発表とさせていただきます」
大輝の声に合わせて、パチパチといつもの空き教室には拍手が響き渡る。
テストの返却がようやく全て終わり、順位の用紙も遂に配られた。
俺と陽子さんは、ここまで全くテストの話はしていない。
自分の得点は知っている、正直言ってかなりいいと思っている。
だけど、相手は陽子さんだ。
到底油断できるはずもなかった。
「じゃあ、とりあえずじゃんけんで負けた方から順位を発表していただきます」
大輝の司会進行のまま、陽子さんとのジャンケンが行われ、結果的に陽子さんが先に発表することになる。
封筒から紙を取り出し、順位を確認する。
「それじゃ、私の順位だが……五位だ」
おお、と周りから歓声が上がる。
流石陽子さん、っていうか多分普段よりも高いっぽい。
ドヤ顔を見せる彼女は、やはり勝負事は勝ちたい性分のようだ。
「じゃあ、次に慎也」
心臓が大きく、小さく形が分かるほどに変動してドキドキと耳の中が心音で支配される。
目の前の封筒を開けるのが、やけに億劫で手が全然伸びない。
落ち着け、俺なら勝てる。
一瞬出来た行けるタイミングを逃さないよう、封筒に手をかけた。
中から出てくる紙には、確かに順位が書かれている。
薄く片目を開け、慎重にその文字列を追いかける。
「……二位」
一瞬、空気が凍りついた。
俺自身もそうだ、何が起こったのか分からず現状を飲み込むことができない。
それでもゆっくりと、ゆっくりと身体は熱を帯び始めて脳みそは内容を理解し始める。
その時間、およそ一分ほど。
俺は確かな勝利にガッツポーズが出る。
「え、二位!?
……先輩、マジですか?」
「今回の勝負は慎也の勝ち……」
皆の反応も完全に驚きだ。
事情を知っている沙織は必死に口を覆って、喜びを隠し通している。
「ふっ、ははは」
陽子さんが溢れるように笑う。
そして俺に対して握手を求める。
「また、戦いたいな。
ここまでの期間、私は正直楽しかったよ」
「俺も楽しかったけど……もう勝負はきついかも」
そんなことを言いながらも、俺は陽子さんの手を取った。
ようやく俺は、彼女と並ぶことが出来たような気がして嬉しくなってしまう。
「ねえ、そういえば見て!
私も順位めちゃくちゃ上がってるよ!」
「ほう、やっぱり勉強会は効果あったな」
「本当ですね、私も結構いいところ行きました」
さっきまでの緊張感はいつの間にか無くなって、各々テストの感想を言い合う時間が始まった。
やっぱり、いつもの緩い雰囲気の方が俺は好きだ。
「あ、ちなみに慎也。
お前もう、テストで上位食い込めるの証明しちゃったからな。勝負じゃないにしろ、次順位めちゃくちゃ落ちたら承知しないぞ」
「ていうか次は慎也が先生やってよ!」
はぁ、どうやら俺はこの後のテストに関しても悪い点数は取らしてもらえないらしい。
それでもまあ、次のテストの時はまたこの場所に集まって勉強会が開かれるのだろう。
こうして、期末テストというまさかすぎる方向に行ってしまったイベントは、ようやく幕を閉じたのである。
「陽子、こっちだよ!」
「分かった分かった……」
沙織に言われるがまま、車に乗り込む陽子さん。
今日は俺も、助手席に乗り込む。
「よし、それじゃ行こう!」
今日の車はいつもより賑やかだ。
……とは言ってもその理由は、陽子さんが増えたからというより、陽子さんと一緒にバイトできることが嬉しくて沙織のテンションが上がっているからなのだが。
あの順位発表から二日後の金曜日。
今日は、沙織さんが旅館のお手伝いに来てくれる日だ。
……そういえば、このために俺も頑張っていたことを忘れかけていた。
「おい、沙織。
あそこめちゃくちゃ鳥が飛んでるぞ!」
結局テンションが上がって、外の景色に一喜一憂する陽子さんを車に乗せて、旅館への道を今日も辿る。
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