第三十一話 決戦前日
そろそろテストが一週間まで迫ってきた頃。
朝から、皆今回のテストの自信について話している様子を聞き流し、生徒会室の扉を開く。
「待ってたよ、日端君」
そこにいたのは三辻さん。
いつも、夜になると勉強に付き合ってもらっていた。
こうして、朝から呼び出されたのはテスト一週間前の状態を確かめるためだろうか。
「それじゃ、まずこれね」
そんな俺の予想を裏切って手渡された数冊のノート。
そこには、びっしり今回の範囲についての対策が書かれていたのだが、驚くべきポイントはそこだけでは無い。
「……まさかこれ、俺専用?」
「そうだよ、夜には色々教えてたしね。
日端君の得意不得意も、今は何となく分かるよ」
そう、さっきも言った通りこのノートは全て俺のために作られたものだった。
俺がよく間違えるところ、解き方がわからなくなる箇所。その他諸々、とにかく綺麗に記されている。
「あ、ちなみに言っておくけど……今回も一位は私。
これで私の得点が落ちるとか、そんな心配はしないで」
「うん、本当にありがとう」
それでも、凄い労力がかけられているものだ。
一ページ捲るたびに、手が震える。
今までの勉強で確実に得点は取れるようになっていたが、陽子さんに届くかどうかは話が別だった。
それでも、このノートを一通りやればもしかして。
「ありがとうはこっちのセリフ。
ここまで、私に付き合ってくれてありがとう。
テストが終わったら、絶対にお礼する」
俺たちは戦友を讃えるように、固く握手を交わす。
朝で少し涼しいはずの生徒会室に何だか熱気すら感じてしまう。
その後の一週間はとんとん拍子だった。
授業受けて、合間も勉強をして放課後はバイト。
夜も、相変わらず三辻さんの指導を受けながら疑問を一つずつ減らしていく。
正直、この一週間は休む暇もなく相当地獄だった。
「とりあえず、今日はもう勉強なし。
明日からのテストはバイトも無いんでしょ?
だったら放課後とりあえず合流して、どこかで最終確認しよっか」
「分かった、お疲れ」
時刻は十時、久しぶりにこんな時間に布団に入り込む。
明日は、遂にテストが始まってしまうのだ。
何が何だろうと一発勝負、相手もあの陽子さん。
思ったより緊張してしまう。
それでも、ずっと布団に入り続けていれば自ずと眠くなってくるもので、気づけば朝を迎えていた。
次の日、早めに登校して勉強していると目の前の席に沙織が座った。
「大丈夫、緊張してない?」
「緊張してない……とはいえないかも」
「昔ね?私も凄い緊張しいだったの。
でもね、そんな時お母さんがよく言ってくれた。
緊張するのは頑張った証拠だって」
ああ、そうかもしれないな。
俺は、本当に負けたく無いと思えるくらいに頑張ってきたんだ。だから、身体が緊張で震えてしまう。
「私も、緊張してきちゃったな……。
問題出し合おう?」
そうやって、沙織と問題を出し合ったのもつい一時間前の話だ。
「それじゃ、全員テスト用紙回りましたか?」
先生の掛け声に、皆が集中しているのが分かる。
これから、始まってしまうんだ。
……意外にも、俺はこう言う緊張感が嫌いじゃない。
ヒリヒリとした感覚の中、陽子さんの顔が浮かぶ。
色々事情はあるし、お互い本気で友達だと思ってる。
だけどその今一番に思うことはやっぱり勝ちたい、あの陽子さんに勝ってみたい。
ここまで積み重ねてきた勉強時間は、勿論辛かったけどそれ以上の何かを俺に与えてくれた。
「時間になりました、始め!」
やっぱり緊張で手が震えてしまう。
それでも、握ったシャーペンは思ったよりも軽やかに動き始めてくれる。
物凄い緊張感の中、ついに期末テストが始まったのだった。
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