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第三十話 誘い

「はい、それじゃ今日の授業はここまで!

 日直、挨拶!」

「起立!」


 皆が立ち上がるのに合わせて、俺も急いで立つ。

 挨拶を終えて、ようやく今日も昼休みが回ってきた。


「あー、疲れた……」

「最近、本当に勉強してんだな」


 大輝も今の事態には驚きを隠せないらしい。

 実際、俺もここまで勉強と向き合うことが出来るとは思っていなかった。

 どうしても疲れは溜まるが、気分はそう悪くない。


「あの、せんぱーい」


 そんな声が聞こえて、扉の方を見ると藤垣さんが小さく手招きをしている。

 何の用事だと立ち上がるが、その前に一直線上に向かっていく影があった。


「弥生ちゃーん!

 どうしたの、私たちの教室までわざわざ〜!」

「あ、織原先輩えっと……見てもらいたいものがあって。

 演劇部まで来てもらえますか?」


 会話が聞こえていた俺たちも顔を見合わす。


「まあ、行ってみようぜ。

 それこそ、良い息抜きになるんじゃないか」


 ということで、陽子さんも合流して演劇部へと向かう。

 そこには、沢山の衣装が並んでいた。


「うわ〜、可愛い!

 これって弥生ちゃんが買ったり作ったりしたの?」

「いや、三輪田祭の時の映像作品。

 見てくださった中の一人に、元劇団員だった方がいらしたみたいで。

 それで、良かったら是非と衣装を寄付して下さったんですよ」


 ……確かに、よく出来てる。

 まさしく、プロの仕事って感じだ。


「それで何ですけど、ここまでしていただいたのに部員が実質一人なのも寂しいと思ったんです。

 だから、この衣装とか使って上手くポスターとか映像とか作って、来年部員増やせたらな……と」

「うん、凄くいいと思うよ!私たちもまた協力するね」

「……はい!ありがとうございます!」


 と、沙織は一着の衣装に目をつける。


「これ、綺麗な着物……」


 そう言って、着物の全体像を見渡す。

 やっぱり、旅館の娘なだけあって着物についてもある程度知識があるのだろうか。


「そうだ、じゃあ弥生ちゃん着てみてよ」

「へ?」


 俺と大輝は部屋を追い出され、少しすると声が掛かる。

 扉を開けると、さっきの美しい着物を身に纏った藤垣さんの姿があった。


「どうですか、先輩」

「うん、凄く綺麗だよ」


 藤垣さんはくるくると回りながら喜んでいるようだ。

 着物を着れる機会というのは、そう多くは存在しない。

 嬉しいに決まっている。


「あの、一枚だけ写真を撮ってもいいか?」


 そういえば、さっきから静かだった陽子さんがようやく声をあげる。


「はい、陽子さんなら良いですよ!」


 そう言って陽子さんのスマホに向けてポーズを取る藤垣さん。

 陽子さんの表情を見て、俺は驚いた。

 目はキラキラ輝いて、今までに無い表情をしていたからだ。いつの間にか沙織もパシャパシャ写真を撮っている。


 数分後、ようやく写真を撮り終え制服に戻った藤垣さん。

 女性陣は各々、やけに満足そうに見えた。


「ってあ!

 やばい、私たちまだ昼食食べてないんだった!」

「ああ、そうだったな。

 急いで、空き教室に集合しよう」


 そう言って、皆解散していく。


「……先輩?」


 そんな中、俺はさっきの陽子さんの表情が忘れられない。

 もし、会長を辞めたがっているとしたらそれのヒントになるかもしれない。


「藤垣さん、ありがとう!」


 ついつい、藤垣さんに感謝を伝えてしまう。

 藤垣さんは不思議そうに首を傾げるが、何かに気づいたように声をあげる。


「あー、そうですよね。私感謝されるようなことしましたよね!……それだったら、何か見返りがあってもいいのかななんて……」

「見返り?どうすればいいの?」

「じゃあ、またどこかお出かけしませんか?

 今度は二人きりでも……」


 案外、藤垣さんは俺のことを慕ってくれているらしい。

 勿論、それくらいのことならいくらでも大丈夫だ。


「分かった、それじゃあ今度予定立てよ」

「……!

 約束しましたよ、絶対ですからね!」


 そう言って、早足で教室に向かう藤垣さん。

 思いっきり手を伸ばす、何だか疲れも吹き飛んだようだ。

 一週間に一回くらいは勉強に縛られずに、こんな昼休みがあってくれるとありがたい、ついそんなことを思ってしまう。

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