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第二十八話 極限の提案

「臨時バイト……か?」


 昨日の打ち合わせ通り、沙織がバイトの話を陽子さんに持ちかける。

 陽子さんは俺が解いた過去問の答え合わせをしながら、少し考えているようだ。


「そう、テスト終わった次の金曜日。

 陽子さんは、一回バイトした経験もあるから来てくれたら嬉しいなーって」

「そうか、それは全然良いんだがな。

 その代わりと言っては何だが、一つ条件を提示しよう」


 陽子さんは気づけば、俺の方を向いていた。

 そのまま、過去問の結果を見せてくる。

 三十二点、相当悪い結果だがそれでも前はもっと低かった。

 これだったら、目標の平均点を狙えるかもしれない。


「……それで、条件って何なの?」


 沙織の言葉にふと我に帰った。

 陽子さんは相変わらず、俺の目を見たまま告げる。


「テスト期間中、慎也はバイトを辞めてもらおう。

 ……安心しろ、事情は分かっている。

 その間は私が代理として入らせてもらう。

 勿論、テスト終わりの金曜日もヘルプで入るぞ」


 全員が固まった。

 こんな提案なんてされると思っていなかったからだ。


「え〜!?

 あの、陽子さんは大丈夫何ですか?

 だって、勿論生徒会だってあるし。

 それに、今は選挙も並行して進めてるんですよね?」

「まあ、確かにそうだ。

 それでも、三輪田祭に比べれば大分楽な方だよ」


 誰もが分かっている、陽子さんはかなり無理をしていると。

 ……そしてその原因は、俺の至らなさだ。

 もう一回、過去問を見る。

 何赤点ギリギリ回避で喜んでるんだ……。


「まあ、そういうわけだ。

 沙織、これからのスケジュール確認をさせて欲しいんだが」

「ちょっと待って……!」


 俺は何の考えも無しに声をあげる。

 陽子さんも俺が嫌がることは分かっていたのだろう。


「何か勘違いしているようだがな。

 私はバイトが入った程度では、得点を落とさない。

 ……仮に、落としてしまったとしても私の責任だ」


 俺は知っている。

 三輪田祭の時、倒れてしまった俺なんかよりもずっと沢山の作業を抱えながらも、心配させまいと普通に立ち回っていた陽子さんのことを。

 それこそ、大輝が手伝っていなければ彼女の負担は余裕でキャパオーバーだったことも。


 陽子さんはずっとそうだ。

 優しいから、自分の身を犠牲にしてまで簡単にこういう提案を出来てしまう。

 だからこそ尊敬するし、友達としても信用できる。

 でも、これでは結局俺が望んだ対等な関係ではない。

 副会長が言っていた、陽子さんが一番信頼しているのは俺たちなんだと。

 だから、それに甘えることだけは絶対にしたくない。

 考えろ、考えろ……。


「だったら」


 ふと、思いついてしまったあり得ない作戦。

 俺が陽子さんを心配させないくらいちゃんと成績を上げれると証明しつつ、バイトも参加してもらえる。

 そんな一手。


「だったら……俺と勝負しよう」

「勝負?」


 俺はこの先めちゃくちゃ苦労することになるだろう。

 でも、勉強は俺自身のためで今まで惰性でやってこなかったことなのだ。

 だから、こうして友達が心配して身を削ってまで時間を作ろうとする事態に発展した。

 ……勿論、努力だけでどうにかなる話じゃないかもしれないけど。


「そう、勝負。

 俺と陽子さん、どっちが総合得点が高いか。

 それで俺が勝ったら、テスト終わりのバイト来てよ」

「……えー!?」

 

 再度藤垣さんが驚きの声をあげる。

 勿論、この部屋にいるメンバー全員が驚いていることだろう。

 それでも、陽子さんは冷静に話を続ける。


「負けたら、慎也は何してくれるんだ?」

「……何でも一つ、言うことを聞く」


 この勝負、きっと負けても陽子さんは手伝いに来てくれることだろう。

 でも、それこそそんな優しさに俺が頼ってしまったら陽子さんと対等に話すことなんか出来はしない。

 勝った上で、陽子さんの本心が知りたい。


「良いだろう、その勝負乗った。

 その代わり、私も本気で行くからな」


 そうニヤリと笑う陽子さん。

 こうして、次の期末テストは大きな意味を持つものとなってしまった。

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