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第二十六話 来訪者

「まず、私の名前は三辻真依(みつじまい)

 この学校で副会長をやってるの……まあ、これで大体誰に関する用事かは分かったと思う」

「はい、陽子さんですよね」


 後昼休みが終わるまで十分と言ったところか。

 こんな微妙な時間に来るということは、どうやら陽子さんがいなくなるタイミングを狙っていたらしい。

 それこそ、最悪昼休みが終わるギリギリでも良いと思っていたのかもしれない。


「それで、陽子さんがどうかしたんですか?」

「……ごめんなさい。

 ここから先は、私の推測でしか無いんだけど。

 今度、生徒会選挙があるのは知ってる?」


 テスト勉強に必死になって忘れていたが、我が三輪田高校では毎年十二月の頭に、生徒会選挙がある。

 時期として、違和感を感じる人も多いかもしれないが前年度の生徒会と共同で三月まで引き継ぎを含め活動し、新年度を円滑に始める、という理由でそうしているらしい。

 それこそ、去年のこの時期くらいに陽子さんが生徒会長として認められ、今もなおその役割をこなしているのだ。

 とはいっても、正直今年の生徒会選挙自体に問題が起きそうな予感はない。


「まあ、単刀直入に言えば。

 今年の選挙、私は会長を倒したいの」

「え?」


 ……正直驚いた。

 生徒会メンバーは、ある程度陽子さんに信頼があると思ったからだ。

 まあ、信頼に関して言えば生徒会に限ったことではない。

 一年間、生徒会長としての激務をそつなくこなしてきた人だ。三輪田祭の盛り上がりも記憶に新しい。

 とにかく、今年も継続してくれるなら陽子さんで良いと思っている人はかなり多い気がする。

 それを真正面から勝ちたいなんて、中々肝が据わっている。


「まあ、生徒会選挙自体は自分で何とかするんだけど……。

 私が立候補する理由がものすごく大事なんだよね」

「理由……ですか?」

「直感……でしか無いんだけど陽子さんは会長の座を降りたがってる」

「え、そうなんですかね……」


 生徒会長はそれこそ激務だ。

 だから、降りたいと言っても責めたり引き留めたりも俺はしない。

 ただ何となく、陽子さんがそう思っているなら意外だなとは感じてしまう。


「そこで、ここからがお願いなんだけど。

 本当に辞めたがってるか、会長に確認して欲しい。

 最近、あなたたちといる時は本当に楽しそうだから。

 きっと会長が一番信頼してるのはあなたたちなの」


「……まあ、確認だけなら。

 何とかしてみます」


 三辻さんと話していて、分かったことがある。

 彼女は、相当に陽子さんを尊敬していて好いているということだ。

 そんな彼女があえて陽子さんを倒したいと、そういうのなら直感的とはいえ、感じたものがあったのだろう。

 間違っていたらその時はその時だ。

 ついでに、俺も何となく気になってしまった。


「本当にありがとう……!

 そうだ、何かお礼をしないと」

「いや、大丈夫です。

 俺もやりたくてやることにしたので」

「……でも、タダでやってもらうのもあれだしなぁ。

 何か思いついたら言ってよ」


 昼休みはそろそろ終わる。

 陽子さんが帰ってくる可能性を考慮した三辻さんは立ち上がる。


「じゃあ、本当にありがとう。

 よろしくね」


 とりあえず、俺は陽子さんからどうにか聞き出さないといけないわけか。

 ……何となくだけど陽子さん、それに関して簡単に口を割ってくれなさそうだな。


「あ、それから」


 考えるモードになっていた俺は急いで意識を戻す。

 彼女が指差していたのは、問題集だった。


「それ、全部間違えてるよ」

「え……三辻さんって頭良いの?」

「うーん、そうだね。

 頭は良い方だと思うよ」


 俺も気づけば席を立つ。


「あの、お礼思いついた」

「ほんと!?

 とりあえず、何でも良いから言ってみて」

「じゃあ……勉強教えてください」

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