第二十一話 結果で得たもの
「そういえばさ、演劇部の作品ヤバかったらしいよ?」
「えーそう、私も聞いた!
なんかやけに誰も内容教えたがらないから明日見にいかん?」
そんな話を聞きながら、体育館に向かう俺たち。
「だってさ、良かったな部長。
明日の公演って何時?」
「ちょっと、部長とかやめてくださいよ。
……明日も十時とかですかね。先輩は何かあるんですか?」
「それこそ、今日の劇で裏方やるけど。
そう考えると明日は一日中暇だな」
明日は一般公開日、つまり親や学校OBもやってくる日というわけだ。
ステージ等は学生内で楽しむものであり、今日が終わればもうやることはない。
部活等に所属していない俺は、明日本当に暇であると言えるだろう。
「私も一日中暇だよ〜。
明日は一緒に回らない?」
「あ、いいよ」
織原さんもそういえば家から食材提供してもらったとかで神様のように崇められ、二日目の仕事を免除されていたんだったな。
「……私は、公演終わった後も展示あるんですよ。
今まで劇で使ってきた小道具とか、半分くらい何故か無いんですけどね」
藤垣さんはやけに機嫌悪くそんなことを言う。
明日まあまあ忙しいストレスからかもしれない。
「おい、明日の話をするな!
私は来客の招待状受け取りとかで、ずっと受付するんだぞ!……あ、こいつも連れてくからな」
「え?」
大輝は驚いた表情で、陽子さんのことを見る。
陽子さんは最早真顔、どうやら逃がしてくれる可能性は無いらしい。
まあ、とにかく皆それなりに忙しいようだ。
織原さんがいなかったら、一人でトボトボその辺を歩き続けるか、空き教室にいるかの二択だった。危ない。
そんなこんなで体育館に向かう人々でいっぱいになった列をゆっくり進みながら、雑談で誤魔化す。
ようやく体育館についた俺は、クラスメイトたちと合流して、段取りとかを確認する。
「全員ちゅうもーく!
それじゃ、クラスステージを始めていくぞ!」
相変わらず仕事の多い陽子さんが、司会として声を張り上げる。
全員、今日一日はお祭りムードでボルテージはマックスのようで、全力で声を返す。
「うおおおおおおおおお!」
「かいちょおおおおおお!」
陽子さんはそれらが終わるのを待ってから、早速紹介を始めることにするようだ。
「早速、一年生ステージから!
バンド演奏にダンス、とにかくフレッシュな音楽をしっかり耳に焼き付けろ!」
こうして、どんどんクラスステージが進んでいく。
音楽をやる一年生、劇をやる二年生。
スタミナが全然切れることのない生徒たちは常に盛り上げてくれている。
「私と、結婚してください!」
わあああああああああああああああ!
俺たちのクラスの劇も大盛り上がりだった。
今年は、金賞を狙えるんじゃないかと周りも興奮気味なようだ。
三年生は受験等、色々あるため二年生のステージで全項目が終了する。
だが、これで終わりじゃない。
最後には、賞の授与式があるのだ。
「それでは、二年生の出店!
銀賞は二年四組!」
わああああ!
相変わらず歓声が上がる、皆が手を合わせて願っている。
「そして金賞は二年二組!」
わああああああああ!
俺たちのクラスは出店で、金賞を取った。
皆肩を組んだり、ハイタッチしたり喜んでいるのが伝わってくる。
だが、俺たちはこれで終わりじゃ無い。
「それでは、二年生の劇!
銀賞は二年三組!」
相変わらず、願うしか無い。
ここで二冠を取るために、頑張ってきたのだ。
「金賞は……二年一組」
わああああああああああ!
隣で上がる歓声に全員が崩れ落ちる。
駄目だったか、全クラス頑張ってきたのも分かっている。だから仕方のないことなのだ。
別に努力だけで報われるものじゃない。
「え、あれ?」
それでも、俺は気づけば泣いていた。
あんなに頑張ったのに、皆で最高の日にしたいって。
「……そりゃ、悔しいよな」
「えーん、負けたくなかったよ〜」
悔しさはどんどんと伝播していく。
俺たちは本気でやった、そのことだけを証明するように。
「まあ、悔しかったとはいえ金賞は一つ手に入れた。
とにかく、明日は全員楽しむように!」
「はい!」
こうして、先生の総括で三輪田祭一日目は終わった。
俺は、話しているクラスメイトたちを抜けてあの空き教室へ向かう。
「……やっぱりな。
お前はここにくると思っていたよ」
そこにいたのは陽子さん。
窓から、帰っていく生徒たちのことを眺めている。
「慰めに来てくれたの?」
「馬鹿言うな、私もここに来たいと思っただけだ」
「……俺、やれるだけのことはやったんだ。
絶対勝ったと思ったし、皆を泣かせるつもりも無くて」
「ああ、あの時周りを信じないで噂に怯えていた慎也がここまで本気になれたこと、嬉しく思うよ」
「うん、本気だったんだ……悔しくて仕方ないよ」
陽子さんはやっぱり俺の話をよく聞いてくれて。
こうして悔しさに寄り添ってくれるから、つい弱い所を見せてしまう。
俺はそのまま、泣き続けてしまった。
その間も陽子さんは隣にはいるが、何も言わない。
終わっちゃったんだ、一年生の頃はあんな適当にやっていたクラスステージが。
ここまで熱くなれたこの舞台が訪れることはもう無いとただ、そう痛感していた。
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