第十九話 三輪田祭スタート
「そろそろ始まります!皆さん準備をお願いします!」
一階から三階全てのスピーカーから流れたその言葉を合図に全部のクラスが動き始める。
教室では、衣装や小道具の最終確認。
劇の内容自体の最終確認が行われて、外を見れば沢山の出店がその姿を露わにしていく。
「今日、上手くいくかなぁ……」
窓を眺めていた俺の隣にはいつの間にか織原さんがいて今日ここまでやってきたことが脳裏をよぎる。
勿論、後悔は無いくらい頑張ってきたつもりだ。
だけど、それが駄目になってしまう可能性を感じて身震いする。
それだけ、本気で取り組んでしまったのだ。
「成功、させたいね」
結局、選んだ言葉はそんな曖昧なもので目の前にある小道具たちをまた1から見直す。
劇に参加する人の視線はどちらかというとドレスに集まっているようだが。
「綺麗……本当に間に合って良かったね」
「ああ、演劇部の藤垣って人のお陰だ」
「うん、それから日端君も。
今日まで本当にありがとう」
さっきまで織原さんと話していたのに、気づけば取り囲まれて視線を集めている。
器用なのもあるけど、結局成功させたい思いが強くて気づけば、みんなに指示を回して最終チェックまでやって装飾設営チームのリーダーのようになっていた。
あの時倒れてしまって、そこから皆にももうちょっとだけ頼ろうと、そう思っただけだ。
……相変わらず、俺は周りに恵まれている。
旅館でバイトを始めた頃には、気づいていなかった。
「うん、こちらこそありがとう。
今、ここで劇の道具の確認している人も出店の設営に行ってくれている人も、ここまでよく頑張った。
後は、これを使う人たちに最大限盛り上げてもらうだけ。俺たちは目一杯楽しむだけだ〜!」
「「おー!!」」
「ふふっ、日端君前とイメージ全然違う。
勿論、いい意味でだよ?」
「まあ、そうかもしれない」
「これも、もしかしたら私のおかげかなぁ?」
「……そうかもしれない」
「へ、否定して欲しかったのに!」
そんな風に適当な会話をしながら俺たちが今向かっているのは放送室だ。
ここ自体に用事があるわけではないが、待ち合わせをしている人がここにいる。
ノイズのような音声が一瞬聞こえて、近くのスピーカーから距離を取った。
そろそろ始まるのだ、気分が不思議と高揚する。
「どうも!生徒会長の渕崎陽子です!
これから、三輪田祭が遂に開催されます!
注意事項は、先日配ったプリントを見ていただければ良いのですが一つだけ、二時になったらクラスステージがあるので必ず体育館に集合するようにしてください。
それでは!三輪田祭!スタート!!」
「「わあああああああああああ!!!!」」
あらゆるところから歓声が上がる。
外もあまりにも湧いているようで、窓がガタガタと音を立てながら揺れている。
少しして、放送室から出てきた陽子さんにお疲れ様と声をかけた。
隣には、気づけば三輪田祭の間会長補佐になっていた大輝の姿もある。
「よしよし、この後はとりあえずステージまで仕事なし……だよな?」
「うん、それで間違いない」
スマホでスケジュールを見ていた大輝の言葉に安心する陽子さん。
「それじゃ、まずは十時になる前に出店で色々買っておくことにするか」
「俺たちのクラス焼きそばやってるよ」
「買って〜、出店でも一位になりたいって皆燃えてるの」
「……うちのクラスは、チーズハットグな?」
そんなこんなで出店に向かう俺たち。
だけど、そんな中でも俺はドキドキが止まらない。
それは、俺たち全員が気にかけてる十時のイベントが原因だった。
出店を済ませたらまず向かう場所、俺がここまでやってきたことの集大成の一つ、演劇部の出し物だ。
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