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第十六話 ガス欠

 皆で決意を高めたからと言って、きつい毎日が無くなるかといえばそんなことはなくて。

 学祭本番に向けて、更に仕事量が増えていくのを感じる。

 それこそ、土日作業が出来ない分金曜日の今日は物凄く忙しさを増していた。


「……おい、大丈夫か。

 日端、日端ー!」

「あ、ごめんなんだっけ」


 勿論、俺自身も例外なく仕事があってクラスでもそこそこに器用だった俺は、色々と小道具の制作が回ってくる。


「とりあえず、作ってみたんだけどどうかな」

「……うん、これなら大丈夫だよ」


 なんならこんな風に、俺に最終チェックを任せてくれるクラスメイトもいるくらいには信用を得た。


「じゃあ、今日は帰るね。

 また明日〜」


 織原さんは今日はもう帰るようだ。

 とりあえず俺がいなくても何とかなるらしいため、旅館のことは一旦忘れる。

 とにかく目の前の作業に没頭するだけだ。


「先輩、今日もお願いします」


 ふと、そんな声が聞こえてドアからひょっこり顔を出す藤垣さんの姿があった。

 皆に目配せをして、とりあえず問題なさそうなので彼女の手伝いに入ることにする。

 撮影も現状八割くらいは終わっているが、演技に関しては強いこだわりを持つのが藤垣さんだ。

 今日も気合いを入れて挑まなければ、どれだけ時間がかかってしまうか、わからない。


「それじゃ、行きますよ〜」


 それから、結局四時間くらいは経ったのだろうか。


「うん、うん。

 はい、今日撮りたいと思っていた部分は大丈夫です。

 また朝に撮りたいシーンもあるのでお願いします」

「了解、また呼んで」


 撮影を終えたら、勿論クラスでの作業に戻る。

 そんな感じで黙々と作業をしていたのだが、ようやく夜が訪れて、チャイムの音と共に終わりを知る。

 凄い疲労感だ、身体を全部預けてしまった椅子から中々離れられない。


「じゃあ、お疲れ様ー」


 皆が少しずつ帰っていってそれからしばらく、ようやく俺も立ち上がることができた。

 とりあえず今日は、帰ったらすぐ風呂でも入っちゃおうかな。

 明日は、旅館に団体客が来る日だ。

 当日の流れをある程度確認したらすぐに寝ることにしようと思う。


「お、慎也じゃないか。悪いけどもう一仕事頼めるか?」


 目の前には陽子さんが立っている、やっぱり会長は忙しいようで、今日もギリギリまで残っていたようだ。


「うん、大丈夫」

「いや、資料室の荷物を沢山移動させたんだが戻すにはどうしても力が必要でな」


 陽子さんについていくと、確かにダンボールが乱雑に置かれている。

 よいしょ、と一つずつ持ち上げて運んでいく。


「どうだ、クラスの準備は進んでるか?

 私は生徒会としての仕事で忙しくてな。

 自分のクラスにあまり貢献できていないんだ」

「………… 」


 箱はあと三個、もう少しで終わりそうだ。

 力を振り絞って、ゆっくりと持ち上げる。


「そういえば、学祭でフリーの時誰と回るんだ?

 良ければ、空き教室のメンバーでどうだろう。

 私も当日はそれなりに時間がありそうなんだ」

「…………」


 あと、あと一個。


「ん、どうした?

 当日時間あるか答えが欲しいんだが……っておい、大丈夫か!?

 何か心ここにあらずって感じだぞ!?」


 あと一個……あと一個だけ。


 俺は体制を崩して、その場に倒れ込んだ。

 身体はぐったりと動かなくて、ぶつけた箇所がジンジンと痛む。

 陽子さんがめちゃくちゃ俺に声をかけて、急いでスマホで何か連絡を取っているようだった。

 視界はだんだんと霞んできて、最終的に黒に染まる。

 ここに来て、俺の身体は限界に達してしまったようだ。

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