第十四話 作品の作り方
今日が何だか落ち着かないのは、普段考えないようなおしゃれについて考えて、久しぶりに私服に身を包んでいるからかもしれない。
とにかく、かなり置きにいったファッションのつもりだが、これでダメだと言われてしまったらもうそれは本当に詰みだ。
俺の家から、三駅かけて辿り着いた場所。
ここに来た理由というのは、最近何故か知り合った後輩女子の手伝いをするためだった。
「あ、いたー先輩!
こんな早くに集まったんですから、効率的に時間を使わないと損ですよ!」
そういって、雑談をする間もなく恐らく自宅に向かっているであろう藤垣さんに並び歩く。
鼻歌を奏でる彼女は、ようやく学校祭でやるべきことの道筋が見え始めたことが嬉しくて仕方ないらしい。
朝起きたら、沢山連絡が届いていて要約してみれば候補のシナリオを数本見つけておいたこと、カメラやその他周辺機器などもとりあえず準備しておいたことが記されていた。
最初、演劇部の現状を知った時は何故藤垣さんはこんなに一人で頑張っているのだろうと思っていたが、要は彼女が演劇を愛してやまないから、ということらしい。
普段クールともいえる彼女だが、演劇が関わってくるとこうして度々驚かされるくらいには熱が入る。
知識は全く有していないが、それでもこうして熱量のある人間を手伝えるというのは、こちらのモチベーションにも繋がってきていた。
「ただいまー!」
どうやら、親がいるようでそう声をあげる。
お邪魔しまーす、と俺もいることをアピールしておく。
そのまま手洗い等を済ませるとすぐに、二階に連れて行かれた。
やよい、と書かれた板が扉にかかっている。
何だか緊張してきた、旅館では織原さんがこっちの部屋に遊びにくることは度々あったが、逆はない。
扉を開け、俺のイメージ像とは大きくかけ離れた沢山の映画ポスターが貼られた、その部屋は演劇オタクである藤垣さんらしくて緊張が飽和された。
大きいペットボトルのジュースと二つのコップを持って再度上がってきた藤垣さんはローテーブルの周りに俺を座らせて、早速会議を始めるようだ。
「じゃあまずシナリオなんですけど。
これなんてどうですか?
突如目覚めたら皆の顔や声が自分と同じになっていたんですけど、実はこれは昔周りから酷い扱いを受けた主人公が、自分以外を信用できなくなって精神を安定させるために、視界を歪ませていたんです!
これをやるならやっぱり私の演技力重視にはなっちゃうんですけど、顔は同じなのに性格や行動は全く違うっていう奇妙な魅力が出たりとか、それに……」
物凄い分量を一気に聞かされている。
その話が終わる地点、そのタイミングで何とか割り込む。
「シナリオはさ、やっぱ藤垣さんが良いなと思うものを選べば良いよ。
俺は手伝いだし、演技のこともよく分からないからさ」
「嫌です、私は二人で作品を作りたいです。
勿論、先輩の顔も声も映画に乗ることはありませんけどそれでも、いないなんて風に言ってほしくない」
本当に、演劇に関しては真摯な子だ。
「そうだね、じゃあとりあえずおすすめだけ聞かせて。
ビビッと来たら、俺も止めるね」
その後、沢山のシナリオを読ませてもらったし色んな話を聞かせてもらった。
分からない話も多かったけれど、聞いてみれば非常に魅力的でやってみたいな、と思うものも多い。
結果、朝八時集合だったにも関わらず二時間が経った。
「じゃあこれで決定ですね!」
藤垣さんのその言葉を聞いて、大きく伸びをする。
俺はやっぱり素人だし、自分を特別センスが良いと思ったことはほとんどない。
それでも、今のシナリオを藤垣さんが演じたらきっと良いものができる、何となくそう確信していた。
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