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第十二話 後輩の相談

「それじゃ、学校祭について決めてくぞ」


 陽子さんの言うとおり、今日の最後の授業は学校祭についての内容だった。

 うちのクラスはこういうことには結構やる気で、去年も知らないうちに、色々進んでいってあんまり苦労した記憶がない。


 基本的に俺たちの高校ではステージ、衣装、装飾設営が主な部分で、その他に一名ずつ責任者、副責任者、会計がいるというシステムになっている。

 大体、ステージの出し物に関わる人か出店に関わる人がほとんどという感じだ。


 その中でも一番楽なのは、装飾設営である。

 だから俺は勿論、そのタイミングで手を挙げる。

 最近、旅館で色々なことを経験して器用さが増しているため、たまにバイトで帰らないといけないとしてもある程度は貢献できる自信があった。

 織原さんと大輝とも打ち合わせ済みだ。

 三人とも見事に、装飾設営のポジションにつくことが出来た。

 よし、装飾設営はどちらにせよステージの内容や何の出店を出すかまでは無いし、とりあえずここ数日は何もやらなくて済むだろう。


 ピロン―


 突如なった通知音に一瞬だけ、数人から視線を浴びた。

 俺もかなりビビった、大輝以外に俺と連絡をとる人間はほとんどいないからだ。

 自分で言っていて、かなり寂しい奴だなと自分を悲観する。っていうか、誰からのメッセージだ?


 助けてください


 ……こんな、あまりにも物騒な一文を送ってきたのは演劇部部長、藤垣弥生。

 この前知り合ったばかりの、後輩としては唯一の知り合いだ。

 そういえば、どうしてもやばい時は助けを求めるかもしれない、みたいなことを言っていたな。

 ……この後は装飾設営の仕事も始まり出す。

 手伝うなら今のうちかもしれない。


 今日ちょっとだけ顔出すわ

 とだけメッセージを送り、既読がついたのを確認してスマホをポケットに放り込んだ。


 車がついたら連絡して、とだけ織原さんに伝えておいて演劇部の教室の前に行く。

 こんなところ、普段ならば絶対に来ない。

 そもそも、先生に聞かないと場所すら分からなかった。


「おいっす、とりあえず話だけ聞きにきたよ」

「ぜんばーい!」


 大泣きの後輩が俺に向かって飛び込んでくる。

 教室の中はぐちゃぐちゃで、色々と悪戦苦闘した記録は見てとれた。


「どうした、演劇部のことで俺に出来ることあんの?」

「出来ることしかないです……」


 きょろきょろと周りを見渡してみて、その違和感にようやく気づいた。


「あれ、他の部員たちは?」

「いないです、全員幽霊になりました。

 でも、学祭の出し物やらないと廃部だそうです」


 なるほど、ピンチであるということはよく分かった。

 それに、この前俺を部活に誘った理由も。


「勿論、色々と考えてみたんですが。

 一人、まあ先輩込みで最高二人で出来ることが思いつかなくて」


 俺をメンバーとしてカウントするのは一体どうなんだ?

 まあ、それは一旦置いといてもやれることが限られるというのは実際そうだと思う。

 そもそも役者が一人しかいないというところも大きいが、照明だったり音響だったり。

 ある程度の人数がいなければ、演劇が出来ない。

 もし出来たとしても学祭の演目としては盛り上がらないというのも現実だろう。


 藤垣さんのスマホもその辺に乱雑に置いてあって、一人で劇をやるには、みたいな動画が延々と流れている。

 かなり困り果てているのだろう、何か助言してやりたいのだが。

 流れている映像以上のアドバイスは難し……ん?


「映像、映像作品なんてのはどう?」

「映像作品、ですか?」

「そう、映像作品なら裏方の俺が映る心配も無いし台本さえしっかりしていれば、後はテイク数で何とかなる」

「……それに、あえてステージでやらずに部室展示に出来るから、一人での演技にも違和感が出づらい。

 案外、ありかもしれないです」


 俺と藤垣さんは手を取り合って喜ぶ。

 まだ、第一歩ではあるものの彼女にとってはここまでが長かったのだろう。


「勿論、バイトもあるから俺も行ける時間は限られる。

 それこそ、シナリオ考えて一人で撮れるところは任せるかもしれない。

 とにかく、やるならクラス云々のことが決まっていない今すぐがいい」


 俺も彼女に当てられたのか、少し燃えてきた。

 映像作品を見ることは趣味のレベルで好きだ。

 こうして、自分で作る体験を出来ること自体も嬉しいのかもしれない。


「あの、だったら先輩。

 明日も会えませんか?」

「明日?」


 明日は土曜日だ、確かにバイトはないが。

 ……まさか。


「行けなくは、ないけど」

「だったら、その日私の家に来てください!

 休日返上でとんでもない作品、作りますよー!」


 確かに俺も燃えていた。

 でも、今では貴重となった丸一日の休暇が奪われてしまうことはどうしても大きくて、つい肩を落とす。

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