第十一話 居場所
「それで、気づけばこうなってるわけか」
時刻はお昼、ようやくオンラインゲームの熱が落ち着き始めた大輝が久しぶりに顔を出したその空き教室は随分と賑やかになっていた。
今いるメンバーは俺に大輝、最近ここの常連になりつつある陽子さん。それから、
「まさか会長さんがいるなんて思わなかった〜」
「ああ、私もまさかこんなにこの場所が気にいるとは思っていなかったよ」
「じゃあ、食べよっか」
距離感を特に気にする必要が無くなったおかげで、ここに来ることが出来るようになった織原さんだ。
「ここまで集まると、部活みたいだな。
いっそどうだ、何か始めてみるというのは」
俺たち三人はその言葉に同時に首を振る。
「「旅館があるから」」
「俺も、そもそも部活入ってるからな」
「……ったく、誘いがいのない奴らだ」
拗ねてご飯を食べ進める陽子さん。
それをじーっと見た後、何かを思い出したのであろう大輝が、話を紡ぐ。
「それ言ったら一番忙しいの会長でしょ。
ほら、学校祭もあるし」
「会長はやめろ、そのことを忘れてゆっくりするためにここに来ているんだ。
ったく、お前らも陽子と呼んでくれ。
それこそ慎也はいつまで経ってもさん呼びが外れない」
「こいつそういうところ拗らせてるんで」
「確かに〜、なんか距離詰めるの大変だよね」
やばい、一応このメンバーは俺の交友関係から繋がったメンバーだ。……今思うと、変な話だが。
とにかく、始まってしまった俺の悪口大会を止めるためにさっきの話に引き戻す。
「学校祭って、俺たちのクラス全然決めてないけど」
「うん?
まあそれなら今日くらいには話が出るんじゃないか?」
「これって居残りとかあるのかな〜」
あ、居残り。
織原さんがそれを気にする理由も何となく分かる。
帰る時間が遅くなってしまえばそれこそ、織原旅館の皆に負担がかかってしまうのだ。
「そこは私に話を通してくれたら上手くスケジュールするから安心してくれ。
例えば、どっちかだけでも早く帰れるようにするとか」
「まあ、織原さん周りは理解ある人も多いし大丈夫だとは思うけどね」
「うん、そうだね!」
織原さんはやけに嬉しそう。
自分の友達が良く思われているのは、確かに悪い気はしないよな。
「まあ、その分。
暇そうなやつには頑張ってもらおうか」
俺はニヤニヤした表情で、大輝のこと見る。
「おい、やめろ。
俺だってちゃんと忙しいんだ。
それこそ会長権限で、何とかしてもらったり」
「まあ、私は優しいからな。
今まで、学校の備品でゲームをしているようなやつは見逃してきたつもりだが」
「頑張らせていただきます!」
うん、やっぱりオタクは趣味をチラつかせると簡単に言うことを聞く。
俺も家の小説を全て燃やされると聞けば、大抵のことはやらざるを得なくなるだろう。
「ふふっ」
と、突然織原さんが吹き出すように笑う。
俺たちも釣られるように、顔がニヤついてしまった。
「何だ、私たちの会話がそんなに面白かったのか?」
「うん、何だかとっても楽しい!
……私も、二人と友達になりたいな」
大輝は驚いたようにこっちを見る。
「え、俺たちってまだ友達じゃなかった?」
「ううん、友達!」
前に比べて、やけに騒がしくなった空き教室。
だけど、前よりもここに居心地の良さのようなものを感じてしまう。
俺は思っていたより、こういう時間が好きらしい。
「だってね聞いて!?
日端くん、前まで噂になるかもしれないって私と友達であることクラスメイトに隠そうとしてたんだよ?」
「こいつ、拗らせてるから」
「あ、それから私のこと沙織って呼んで欲しい!
……そういえば、日端くんにもそう言ったな」
「仕方ないさ、慎也はそういう男だ。
ある意味じゃブレないな」
軌道修正失敗、俺への苦情を解き放つように話す織原さんと、それを聞いてケラケラ笑う悪ガキ二人共。
あー、やっぱ今だけ一人になりたい。
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