表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/45

第十話 俺の友達

「沙織ってさ、日端くんと付き合ってんの?」

「え、どうして?」


 流石に急な質問に困惑する織原さん。

 噂が広まらないように動いていた自覚があったようだ。


「いや、この前私たち早く学校来ちゃって。

 近くの公園で話したら気持ちいいかもねって。

 そしたら、車から出てくる二人が見えたから」

「…………」


 これは言い逃れできないレベルだ。

 目撃者が複数人いるため、有耶無耶にすることも難しい。


「沙織、沙織ー!

 えっと、大丈夫?」

「…………」


 結局、俺はこうして織原さんを苦しめることになってしまった。

 陽子さんの言っていたことは結果的に的を得ていたということだ。

 胸がざわついて仕方ない。


「あの、織原さん」


 どうしてか分からない、というか策すらありはしない。

 俺は、気づけば教室に入ってしまっていた。

 織原さんは唖然として、こちらを見ている。

 俺の登場に、織原さんの友達も湧き立つ。


「あ、日端君じゃん!

 やっぱり二人って最近、仲良いんでしょ!?」


 さて、出てきたもののどうしよう。

 やっぱり怖い、もっと傷ついてしまうかもしれない。

 この友達がどんな人たちなのかを俺は知らない。

 だから、慎重に言葉を選ぶ……


 違う、陽子さんに言われたばかりだ。

 俺は人の気持ちを必要以上に考えすぎる。

 まるでメンタリストみたいに、相手がどんなことを考えていて、どんな風にされるのが良いのか。

 でも、勿論普通の高校生に分かるわけはない。

 だったらせめて、間違ってないと誇れる道を選ぼう。


「うん、友達なんだ」


 織原さんは、俺のことを驚いたように見る。

 教室に着く時間をずらそうと提案したのは俺だからだ。


「織原さんがやってる旅館でアルバイトしてて。

 そこから、まあアルバイト仲間だからよく話すようになって、女将さんとも知り合いだからおくってもらうこともあって……」


 勿論、一緒に住んでいることとか言えないこともあるけれど、俺は正直に全てを話してみる。

 顔を合わせる女子たち、何を言われるか分からなくて身体はガタガタ震えて仕方ない。


「……そっかー!

 ありがとね、日端君。

 私たちも沙織の家が大変だってこと知ってたから。

 手伝えなくて、悔しかった」

「日端くん、思ったより話しやすいかも!

 本当ありがとう!沙織のこと、これからもよろしく!」


 ……そりゃそっか、この人たちは織原さんの友達で。

 やっぱり俺はダメだ、何にも分かっていないのに自分の想像だけで変に気を遣ってしまう。

 俺のクラスメイトは、毎朝騒がしくて楽しそうで。

 きっと話したら良い人たちなんだって、ずっと思っていたのに。


「じゃあ、またね。

 今日もバイトあるってことでしょ?」

「そうじゃん香織!

 車来てるんじゃない!?」

「あ、行こっか日端君」


 織原さんはじゃあね、と一言だけ言うと足早にその場を去る。

 俺も追いかけるようにして、教室を出た。


 下駄箱の前、そこで織原さんは急に止まった。

 何かが変だと感じた俺は、振り返る彼女の顔が涙に染まっていることに気づく。


「え、どうして」

「私たち、友達でいいの?

 日端君、私とあの空き教室でしか会いたがらないから、皆に私と友達ってバレるの恥ずかしいのかもって」


 どうして、俺はこうも道を誤ってしまうんだろう。

 もっと織原さんと、沢山話したら良かったのに。

 自分一人で考えて、善人ぶって傷つけた。


「ごめん、本当にごめん」


 俺はただただ謝ることしかできなかった。

 後悔だけが、胸に残る。


 次の日、相変わらず公園に車が止まる。

 先に降りた織原さんの後を追うようにして、俺も車を降りた。


「今日って、小テストとかあったりする?」

「あるよ〜、結構範囲広いって言ってたけど……」

「え、マジで?

 絶対やばい、ちょっと範囲教えて」

「ふふっ、冗談だよ。

 昨日泣かされたから、意地悪したの」

「すいませんでした……」

「え!?

 ちょっと冗談だってば!本気で謝るのやめてよ?」


 いつも通りそんな会話を交わしながら、俺たちは並んで学校へと今日も足を運ぶ。

良ければブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ