Lv.3
レベルが上がると身体能力が増加するだけではなく、上がった分だけの魔力量が増える。つまり、回復する。
さすがに40もレベルが上がるとその増加量はとてつもなく、魔力量はレベル40の頃の俺のマックス値まで回復しているのが身に染みて分かった。
「あああああっ! 最高だぁああああっ! ピンクラビット様マジ最高──ッッ!! 魔力回復助かるーーっ!! 『再生陣』!!」
幸運のウサギにこれ以上ないほどの感謝をしながら、増加した魔力を使って体力を回復させる。
「グオオオオオッ!!」
空中落下している俺に向かって、ドラゴンはトドメとばかりに口を大きく開ける。
恐らく火を噴くつもりだろう。
「今なら受けれるぞ、俺の体力は万全だからな。──『炎耐性障壁』」
炎耐性を持つ障壁をはって炎のブレスに備える。
そして俺は全部を受け切るつもりで、剣を大きく構えた。
「こいッ!」
「ガアアアア──ッッ!!」
口元に強力な火のエネルギーを集めきったドラゴンは、俺に狙いを定めて勢いよくブレスを吐いた。
俺はそれを真正面から喰らいつつ、ブレスの中で一閃の構えを取る。
「南雲流・切断之一閃──」
ドラゴンが放ったブレスが切れる。
刹那、俺の身体はドラゴンの首元にあった。
視界の端には驚愕に染まったドラゴンの顔が見える。
「──『楼閣斬』ッッ!!」
空中から一瞬、その場に浮くようにして剣を振り下ろす。
蜃気楼のような残像が宙に浮かび、俺の姿は陽炎へと消えて一筋の斬撃を残す。
直後、振り下ろされた剣はドラゴンの首を真っ二つに切断した。
「っしゃおらぁ!」
魔力と闘気を全て使い切った一撃。それはドラゴンの首を両断する威力で放たれていた。
首を失った胴体は血しぶきをあげながら地面に倒れ伏す。
そして、俺も地面へ墜落していった。
【フール・ワン=レクト】
Lv.85→Lv.91
「やった……やってしまった……ピンクラビットを狩れた上に、こんなでっかいドラゴンまで……。数十年分の経験値が身体中に染み渡るぅ……!」
空に拳を突き上げながら俺は大喜びする。
レベルはピンクラビットを倒した時点で85、そして今このドラゴンを倒したことで91まで上がった。
これは一介の冒険者が50年くらい魔物を狩り続けないとたどり着けないレベル帯である。
「ははははっ……! こんな奇跡に恵まれるなんて、今までの不運が全部帳消しになるくらいの豪運じゃないか。ピンクラビットには一生足向けて寝れないな、どこにいるか分からないけど」
ピンクラビットの出現率は本当に低い、一般人であれば生涯に数匹見られるかどうかだ。
俺のような冒険者を生業としている者でも年に1匹発見できれば幸運な方、しかも逃げ足の速いピンクラビットを狩るとなると更に数は減る。
俺が倒せたのは本当に偶然も偶然、奇跡が重なった結果だった。
しかもレベル80近いドラゴンの経験値を吸ったピンクラビットなんて、発見しただけでも手が震えて吐いてしまいそうなほどのものだ。
あの時の俺はよくやったと思う、あんな死にかけの状態から、ピンクラビットを発見して倒すまでよく冷静でいられたものだ。
今思い出すだけでも手が震え出して変な汗と涙が止まらない。
「よし、帰ろう。この金銀財宝もありがたくいただくぜ」
それから俺はラティス鉱山の中枢へと向かい、金銀財宝を袋に詰めて街までの往復を繰り返した。
ドラゴンは政府への一任で莫大な懸賞金と引き換えに。このドラゴンの正体は『強欲竜』と呼ばれるもので、金銀財宝のある場所によく生息しているらしい。
俺は死の淵だったところから一気にレベルを50近く上げ、金銀財宝とドラゴンの懸賞金約2000万近くの大金を手に入れたのだった。