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検査初日の段階から、能力への調査も並行して行われた。
能力で杖の先から生み出した光球は、前の施設と似たように細長い台座の上に置き去りになる。
実験室内には遠目にも研究者が集まっており、中にはミワさんの姿も見つける。
「これが例の光の球か」
そして何故か、近くにいる数人に今城博士が混ざっていた。
指導役と思わせ、実際は一段若い研究者に判断を任せて機材を扱っている。端末を持つ数人とは別に、手の空かない連中に向けて数値を読み上げていた。
さすがに年齢もあって力作業は行わないはずだが、嬉々として扱われている姿は、この研究所の特有の雰囲気なのだろう。
もちろん、研究者が二十人と集まるくらい、能力研究が重要視されているのも理解している。
仮とはいえ魔法少女を生み出す。
魔法少女自体の希少性をわずかでも解消できるなら、防衛上の利益は大きい。
危険地域に含まれる地域には基地を直接設置できず、今は簡易的な派出と巡回で対応している。一日のうちに移動時間が大きく占めれば、人員数、人間的な活動限界もあって、怪獣と交戦状態するまでにも地域差が大きい。
大規模な出現が予想されるならともかく、日常的な場合に対して後手にしか回れない実情がある。
少しでも被害を減らそうと思うなら、魔法少女の人員を増やしたいと考えてしまう。
自分の能力単体では届かないとしても、能力の調査が進めば、現在の運用手順の改善案を見つけられるかもしれない。
すべて専門家に任せるしかないことだが、それこそ、魔法少女を任意に作成できるようになれば、魔法少女に関するいくつもの問題も解消されるだろう。
「たしか、既に魔法少女になっている者にも効果があったそうだね?」
「はい。身体能力に欠ける部分があって、そこを補う形になったと聞いています」
自分に関する観察資料は事前に目を通しているだろう。その上で現場を知る本人から話を聞く。こちらとしても、実験という名目で命令に従わされるだけより達成感が得られる。
「存在は確認できた。次は能力の実証になる」
指導官の指示に博士の説明が付け加えられると、自分たちは今の場所から離れるように言われ、遠目に見ていた集まりに加わる。
後には、扉の一つから研究員に連れられて女性が入室してきた。
「あの人は?」
「実験の協力者だ」
外見からして十代後半ほど、魔法少女になるには少し遅れた年齢だ。
現役の候補生に割り当てるのが難しいなら、別の方法で探してくるしかない。
これでは研究のために通常ではない準備が必要なことも理解できてしまう。前の施設で研究を自前で行えないと語られたのも当然だろう。在籍する魔法少女の活用ではなく、魔法少女自体を新たに生み出そうとする。
現在の運用制度が作られる際にも、似たような議案が出されたかもしれない。
白い薄布で顔を隠された女性は、台座の元に向かうと浮かぶ光球に手を伸ばす。そしてまばゆい発光を見せた。
いや、一瞬の霧によって身体が隠され次には様相を転じた女性の姿がある。
白一色だった。
表ほど透明感が高い布を何枚にも重ね、下部に向かうほど広がる衣装は柔らかさも見られる。台座から手を引く動作だけで端々に波が伝わり、元々の形状に増して、そよ風にも揺れそうな外側の感触を示した。
変身したことで顔を隠していた布は消え、今は膜と呼べるほど透明感のある布が頭部にかかる。
その下にある表情が自分に向けられていたことにも気付いた。
眉まで白く、わずかな色差が虹彩を染める一人の魔法少女。
おそらく、本来得られたはずの姿ではなく、……能力も持たない。
「これは研究側の責任だ。不完全と知りながら被験者にも協力を求めた。そこに君の責任は無い」
今城博士がそう語ったのは、こちらの表情を見たためではないだろう。
能力の確認が済んだ時点で、自分は実験室から遠ざけられた。
あの場の調査対象は、魔法少女となった彼女に移る。特異な能力を持たないとしても、体力全般は人並みを外れる。自分みたく発現が遅れているだけという可能性を調べるためにも、検査は今後も継続され、生活調査まで含めた多大な作業が進むのだろう。
自分の案内を務める研究員は二人になり、簡易検査も終われば今日は自由時間になる。
「体は大丈夫?」
「はい。特に異常は感じません」
「何かあればすぐに言ってくれていいんだよ」
その道中で当たり前に手を繋いで、通路を歩いている。
「私は個人で外出許可も出るし、気晴らしに外に連れていくこともできるからね」
「心配してもらえて、うれしいです」
「……お昼に牧草牛のソテーとか、どう?」
「昨日食べたばかりですよ」
ミワさんが一緒にいる件については、この様だと日常になるのかもしれない。




